いけばなじん

File No. 60

飯田 真理さん

飯田 真理さん

熊本県/熊本支部

教える楽しさを気づかせ、育ててくださった師に感謝 ほめ上手な先生をめざし精進し続けたい

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

学生時代にふとしたきっかけで出合ったいけばなとの関係は、ご家族が縁で小原流へとつながり、40年以上経った今も、いけている間の“無の境地”に魅了され続けられているそうです。熊本支部の副支部長に就任され、更に活躍の場を拡げられた飯田さんに、あらためていけばなへの思いをうかがいました。

初対面なのに懐かしさを感じた村上先生
今でも電話でおしゃべりに夢中

 村上先生とは、2010年10月の大阪支部創立100周年記念花展会場で、前々回ご登場の山田豊峰先生(大阪支部)にご紹介いただき、おつきあいが始まりました。初対面なのに、なぜかとても懐かしいような気がして不思議に思ったことを憶えています。愛媛・熊本と離れているため、電話でのやりとりがほとんどですが、村上先生は話題が豊富で、お話上手に引き込まれ、気づくと1時間ぐらいはあっという間に過ぎてしまいますし、いつも、そのあとに幸せな余韻が残ります。

なんとなく始めたいけばな
自由にいけなさいと言われ、戸惑いの日々

熊本の華人展 vol.9 への出品作品
(熊本市現代美術館 2013年5月)

 いけばなとの出合いは学生時代にさかのぼります。寮に他流の先生がお花を教えに来られていたので、「クラブを終えた夜の時間なら・・・」と軽い気持ちで習い始めました。卒業後、実家に戻った時、たまたま友人が誘ってくれたのが、家族も習っていた小原流のいけばなでした。最初は、なんとなく始めたのですが、いけている間は、他のことを忘れ一つのことに没頭でき、私にとってはとても貴重な時間となりました。
 その後、転居をした際に、姉の友人より鳥井翠和先生をご紹介いただきました。基本花型のお稽古以外は、「花を見て花器を選んで、自由にいけなさい」と言われ、いけている時間よりもその前の考える時間の方が長いということがしばらくのあいだ続きました。

 

先生方の丁寧なご指導に感謝
上達に時間がかかった分、たくさん学べたと思っています

 それから数年後、「お花を教えられるようになりたい」と先生にお話ししたところ、研修課程への参加を勧められました。
 研修課程Ⅰ期の1年目は基本花型ですべて不合格になり、角度や長さについてどうしたら良いものか少し悩んでしまいましたが、2年目は、先生から「全体のバランスを考えなさい」とアドバイスを受け、合格通知をいただいた時は本当にうれしかったことを今でも覚えています。

 Ⅱ期に進んでからは、さらに高い技術が要求され、かなり時間をかけて卒業することになってしまいましたが、かえってそれがよい勉強になったと思っています。また、“Ⅱ期では手直しはない”と聞いていましたが、どの先生も本当に丁寧に教えてくださったことに感謝していますし、あの時、研修に行っていなかったら今の私はなかったと思っています。

第5回熊本いけばな芸術展で社中での合作(2011年10月)

いけばな・音楽・デザイン書道
ほめられることで、ほめて育てる大切さを実感

 いけばな以外で興味のあることといえば音楽。学生時代はフルートを、数年前からはオカリナを習い始めました。フルートは光を浴びた水玉がコロコロ動くイメージ、オカリナは大好きな中南米を思い起こす音で、どちらも気分を高揚させてくれますし、音からいけばなのイメージを膨らませることもあります。
 3年ほど前からはデザイン書道も習っています。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「書」の技術と「デザイン」の感性や思考をもち、依頼されたさまざまな条件や目的に合わせて書く「筆文字」のことで、商品や広告、店舗の看板などに使われます。
 オカリナとデザイン書道の両方に通ずるものとして思い浮かぶのは、上手にできた時の“先生のほめ方”が素晴らしいということです。私もいけばな教授者として、「生徒たちをこんなふうにほめなくては」といつも感心しています。

「いつかは自身の教室の看板も書きたい」との思いで書いた習作(上・左)
オリジナリティあふれる文字(上・右)
練習用に飯田さんが書かれた商品ラベル(下)
(いずれも2012年)

 花展や社中展などに作品を出品する時は、いける場所・花と器の関係・花材と出合った時のインスピレーションを大切にするようにしていますが、この感性は、花・音・書いずれにも通ずる点があり、互いに良い影響を与えているように思います。

第7回熊本いけばな芸術展
花・悠遊に出品した2人作(2013年9月)

 所属の熊本支部は歴史があり、地方都市ながらも会員数が比較的多く、活発に活動している支部のひとつだと思いますが、これもひとえに代々の先生方のご努力の賜物だと感謝しております。平成26年より副支部長を拝命しました。慣れないことも沢山あって大変ですが、周りの方々に助けていただきながら、永らく務めた研修部時代に培ったことをいかして一生懸命頑張っていきたいと思っています。

【飯田 真理さんに一問一答】

好きな花

繻子蘭、バラ


友人宅のバラ(上)、自宅のバラで作った作品(下)(ともに2014年5月)
好きな作家

三浦しをん、ディック・フランシス

好きな作品

三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』。海外ミステリーばかりを読み続けた時、ほっとする本です。
ディック・フランシスの作品は、2010年没後も心がざわついたときに精神安定の役目を果たしてくれています。

マイブーム

サッカー(毎年ワールドカップがあると良いのにと思います)
卓球の平野早矢香選手の試合中のガッツポーズを見ること。

飯田 真理さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、奥田 賀子さん(名古屋支部)です。和やかで常に笑顔をたやさない素敵な女性。イケバナ・インターナショナルに出展されるなどバイタリィティにあふれる一方、2012年家元個展の時には銀座を周るバス車中で大はしゃぎされるお茶目な一面もお持ちの楽しい方とのことです。どうぞご期待ください。