造園家、樹木医、華道家。一つ一つの点が線としてつながっていくことで1つの大きな花を咲かせると信じているのです。
人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。
前回の光永祐香里さんからご紹介いただいた秋元智雄さん。一般的には女性の多いいけばなの世界で男性はまだまだ少数派ですが、自然の美をダイナミックに表現する感性は、小原流の精神とも見事に同調しています。幅広い活動を通じて「いけばな」を見つめる秋元さんの熱い思いをうかがいました。
1994年の研修課程Ⅰ期、偶然座ったお隣にいらしたのが光永さんでした。聞けば同じ九州地区からの参加。たちまち会話に花が咲きました。物事を的確に表現し、明るくて活発な印象が一番深く残っています。その後も研修や青年部行事、マイ・イケバナでお会いする機会が増え、仲間の一人として食事や懇談を楽しむなど、さらに親しくなっていきました。のちにバレリーナとしても活躍されていることを知った時は大変びっくりしました。 バレエの世界でお忙しくなった現在でも、地区別教授者研究会や青年部野外展でたびたびお会いします。小原流100周年記念青年部の作品制作では、宮前平制作場と日本橋髙島屋で数日間ご一緒に制作しました。作品設置が完了し、会場から出てきた時、夜明けをともに清々しい気持ちで見たことを今でも思い出します。 |
![]() ●鈴木社中 社中展にて(2006年2月) |
有限会社秋元庭園を経営しています。当初は和風庭園を中心に作庭してきましたが、イングリッシュガーデンの割合も増えてきました。庭園設計者である鈴木茜さんとコンビを組んだ庭づくりも多くなっています。今年は都市緑化フェアにも2人でモデル庭園を出品しました。 |
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![]() ●都市緑化フェアに二人で出品したモデル庭園(2011年) |
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造園を勉強するため6年間京都に住んでいたのですが、その時にいけばなと出合い、稽古を始めるようになりました。京都支部の研究会に参加しだしたころはまだまだ男性が少なく、会場では落ち着かない気持ちでしたね。すぐに慣れましたが。 仕事柄、花展や講習会などでは特殊な花材の調達や設営のお手伝いをしています。鹿児島支部50周年講習会の時には、今は亡き泉谷先生(当時小原流研究院院長)がうちの圃場までおいでくださり、ブーゲンビレアを取り合わせていただきました。その後、泉谷先生が「大変美しいブーゲンビレアだった」とおっしゃったという話をうかがい、非常に嬉しかったことを今でも覚えています。 |
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![]() ●花展ではもっぱら大道具班(長崎で行われた九州地区青年部野外展 2007年5月) |
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![]() ●参加者と記念撮影(長崎で行われた九州地区青年部野外展 2007年5月) |
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花展ではもっぱら大道具班の役割。1996年には青年部長としてベルグアート野外展も行いました。翌年9月の鹿児島支部青年部10周年野外展は、九州最大の植物園「フラワーパークかごしま」で開催したのですが、台風接近というアクシデントに見舞われ、開催を延期するというハプニングもありました。ほとんど寝ずの作業が続き大変でしたが、翌日は台風一過、見事な晴天で素晴らしい野外展となりました。10年以上たっても鮮やかに思い出す楽しい苦労話です。 若い頃から植物が好きでしたし、造園業はじめ樹木医としても植物に携わる中で、「いけばな」は私のライフワークともいうべき存在になりました。 |
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![]() ●九州で最大の植物園「フラワーパークかごしま」で行った 鹿児島支部青年部10周年野外展にて(1997年9月) |
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![]() ●継続的に行っている鹿児島県内の巨樹の診断と治療 |
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もう一つ力を入れているのが、樹木医として携わるビオトープづくりと自然再生事業です。昨年、鹿児島県の委託により、薩摩半島南部地域で57本の巨樹・巨木の調査を行いました。いずれも樹齢800年から150年の木で、うち傷みがあった14本を治療しました。また、その結果をまとめたマップを作成し、県内に1000部配布しました。鹿児島の巨樹の診断と治療は、今も継続的に行なっています。個人的にも巨樹調査を続けて、将来は本にまとめたいと考えています。 | |
![]() ●全国ビオトープ管理士会の全国大会にて(福井県越前市 2010年) |
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![]() ●設計施工したビオトープ「てんちの杜」 |
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鹿児島県森林インストラクター、鹿児島県グリーンマスターとしては、環境学習プロジェクトや今年9月に南さつま市亀ケ丘で実施された植物観察会にも参加しました。鹿児島のみならず、昨年は福井県越前市で開催された全国ビオトープ管理士会の全国大会にも参加。事例発表と地元のビオトープ管理のお手伝いを行いました。 | |
![]() ●鹿児島県森林インストラクター、鹿児島県グリーンマスターとしての活動も(南さつま市亀ヶ丘 2011年9月) |
![]() ●休日は子供たちにツリークライミングを指導 |
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今年5月、巨樹調査の結果を活かして巨樹を巡るバスツアーを計画したところ大変好評で、県内から80名もの参加がありました。今後もバスツアーは継続的に実施したいと思っています。仕事の合間の休日には、ツリークライミングやネイチャーゲームなどのNPO活動を、また、自宅の庭を開放するなど、地域のオープンガーデンも主催しています。こういった活動を通じて、子どもたちに森や自然の美しさを気づいてもらいたいと願っています。 | |
![]() ●オープンガーデンを主催し、地域の皆さんと交流を |
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他人様から見れば、私はとても多くの活動をしていると思われるかもしれません。しかし、私の中の思いは1つです。アップルコンピュータの創設者で、先日亡くなったスティーブ・ジョブス氏はスピーチの名手でもありましたが、ある講演の中で彼はこう語っています。 「点と点とは、信念を持って頑張れば、線としてつながっていく」 私はこの言葉が好きです。「いけばな」とその他の活動は一見バラバラのように見えますが、やがてつながり、一つの大きな花を咲かせると信じています。そして、「いけばな」を通じて育んだ人と人とのつながりをこれからも大切にし、生活していきたいと思っています。 |
【秋元 智雄さんに一問一答】
●好きな花 | 野草(唐糸草) |
●好きなアーティスト | レイチェル・カーソン、植物に関する本 |
●おすすめの本 | 沈黙の春』(環境問題のバイブル)、植物に関する本は200冊以上所有 |
●マイブーム | 野草観察、山歩き、英会話レッスン、ケーナ演奏、三線の演奏 |
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