いけばなじん

File No. 135

平田 佳子さん

平田 佳子さん

静岡県/静岡支部

五十路からのいけばなスタート
友人のお誘いがいつしか生きがいに

ただひたすらに花と向き合い
小原流いけばなを学ぶ喜びを感じる日々

いけばなじんにご登場された方の多くは、就職や結婚という節目にいけばなを始める方が多かったのですが、平田さんが小原流いけばなと出合われたのは50代の頃でした。それまで接点の無かったお花の世界に身を置くことは、ご家族だけでなく、ご自身も驚かれたとか。尊敬する先生に小原流の「型」を学ぶ姿勢は真摯そのものです。研修課程への挑戦も続け、仲間たちの個性に共感しつつもご自分の道を歩む平田さんにお話を伺いました。
「みんなの花展」出品作品(2018年5月)

「いけばなじん」のバトンを受けとりビックリ!
住む町は遠くても続いていく研修課程のご縁

大國さんとは2019年6月の研修課程Ⅱ期の前期で初めてお会いしました。控え室でたまたま同じテーブルになり、いろいろお話しするうちに島根県出雲市にお住いだと伺い、私の夫も島根県出身なのでとても親しみを覚えました。お仕事をなさっていて多忙な中、岡山まで出かけて地区別教授者研究会に出席されている熱心さにも敬服いたしました。

植物が大好きで、植物学入門の講義では田中修先生のお話に、「うん、うん」「ふうん」と声を出してうなずくなど、それはもう興味深げに聞き入っておられた様子を覚えています。とにかくお元気で、胆が据わっていて、頼もしい方です。私は苦手な研修科目だと不安でとても緊張しましたが、彼女はどの科目でも慌てず落ち着いていけておられました。

住んでいる場所が遠く、研修後は互いの花展を見に行ける機会がなかったのですが、久しぶりのお電話で“いけばなじん”のお話をいただいたときはビックリ!2020年10月の研修課程Ⅱ期後期を受けるつもりですので、「お互い元気で、また大阪で会おうね」と約束しました。

運動ひとすじの人生が一変
自分でも驚いたいけばなへの挑戦

辻節子先生と教室のお仲間(右端が辻節子先生、右から2番目が平田さん)

私がいけばなを始めたのは、実に50歳を過ぎてからのことでした。2002年12月、友人から「今度カルチャーセンターで新しく小原流の教室ができるから、一緒に行かない?」と誘われたのがきっかけでした。誠に失礼ながら、当時はさしていけばなに興味があるわけでもなく、なんとなくお付き合い…でといった感じでしょうか。学生時代は山登りに明け暮れ、その後はテニス、エアロビクス、水泳など、もっぱら体を動かすことを続けてきた私なので、夫に小原流を習うと言うと、「なんでまた?」と驚かれたほどです。また、そういうことをやるタイプではないことをよく知っていた母からも「へえ-、あなたがね~」と言われてしまいました。何よりも自分自身が「この私がいけばな?」と不思議に思ったぐらいです。

お教室では最初に「たてるかたち」を習い、少ない花材で形を決めなければならない難しさを感じました。習い始めてしばらくは、「お稽古でいけた花を家に飾れたらいいかな」くらいでおりましたが、お教室の辻節子先生に勧められて研究会にも参加するようになり、その頃から徐々にお花に対して積極的に向き合うようになりました。研究会では同じ花材でも枝ぶりは皆違うので、人それぞれに作品が異なり大変勉強になりました。また上級の方々の作品を見て、私も枝物を扱ってあんな風にいけられたらいいなあと思うようにもなりました。

当時、辻先生は小原流研究院の講師をなさっていて、全国の研究会を飛び回っていらっしゃいました。先生のご指導は率直で明確です。私のいけた花を「ここがこういう理由で良くない、こんな風に直して」とはっきりご指摘くださいます。そして先生が手直しをしてくださると、魔法のようにバシッと枝葉が決まります。どんな花材、どんないけ方にも精通しておられ、明快にご指導くださいます。私はこれからもずっと辻先生のご指導を仰ぎ、ついていきたいと思っています。

お稽古でいけた文人調いけばな

カルチャーセンターのお稽古は毎月2回のため、久しぶりの花型を「どうするのだったかしら?」と、忘れてしまうことがままありました。習い始めて何年も経っているのにこれではいけないと思い、自分の中に定着させ、しっかりいけられる力をつけたいと考えるようになり、研修を受けることを決めました。私は教室を主催しておりませんし、年齢も60を過ぎています。研修士の資格を取って何をしようという訳ではなく、ただひたすら小原流いけばなの力をつけたいという思いで研修課程Ⅰ期に臨みました。辻節子先生に研修科目をご指導していただき、無事Ⅰ期を修了出来たときはとてもうれしかったです。河骨にはてこずりましたが、最近は水ものにも慣れてきました。今は研修Ⅱ期に挑戦中ですが、「写景自然」と「文人調」をいけるのが好きになりました。

延期されていた「みんなの花展」を開催
未来に向けて心をひとつに

“みんなの花展”の迎え花 (2020年9月19日・20日)

先日(2020年9月19・20日)静岡支部の「みんなの花展」が開催されました。本来であれば5月開催の予定でしたが、コロナ禍のため、9月に延期されたものです。コロナ対策として、役員の方々が様々な工夫をされて、1回の入場者は15人までとし、受付には消毒液を置き、ビニールを張った柵を設け、来場者には氏名と電話番号を記入していただきました。和室と会議室の2箇所を使っての展示で、それぞれ見応えのある力作が並びました。私は同じ教室の仲間3人で共同作品を出展しました。中央に蓮の実をたくさんつけた塔を立て、周囲には模造したピンク色の蓮の花びらを置き、さらにその周囲に丸水盤6個を配置して蓮の葉をあしらいました。造形に近いような作品です。ずっと研修二期の科目を練習していたので、花展の作品を製作中はまた違った気持ちで楽しく取り組むことができました。今回は研究会と同日、同会場での花展でしたので来場者が多く、2カ所の会場の延べ人数で668名にもなり、素敵な花展となりました。

“みんなの花展”出展作品(平田さん、濱村さん、榊原さんの共同作品)

小原流への思いやアプローチは人それぞれ
海外でいけばなをしたいという夢は…

私は研修を受けることで小原流の花を体系的に身につけたいと考えていますが、一方、同じお教室の仲間の中には、積極的に花展に出品して花型にとらわれないダイナミックなお花を楽しんでいる方、また、ご自分の家に咲く花を取り入れて自分なりのいけばなを楽しんでいる方もいます。そんなふうにお教室の仲間は皆さん個性的で、今はコロナ禍でなかなか機会がありませんが、時には辻先生を交えてランチも楽しんでいます。皆さんと話していると「小原流のアプローチの仕方は人それぞれいろいろあるのだなぁ」と感じる今日この頃です。

以前にお住まいだったアメリカ・ワシントンD.C.ポトマック湖畔 桜の時期にて

30年以上も前のことになりますが、夫の仕事で米国のワシントンD.C.郊外に2年間、家族で住んだことがあります。ニューイングランド風の建物、森、秋の紅葉に魅了されました。その時の素晴らしさが忘れられず、夫が定年退職したら3~4年また米国で暮らしてみたいというのが私の夢でした。そのために、「いけばなやお花関係の仕事で長期滞在のビザを手に入れ、私の家族として夫をワシントンD.C.に連れていく」なんてことを考え、お花を頑張っていた時期もありました。ところが、夫は定年退職した翌日から次の職場に勤務し始めて多忙を極め、たった1日の休暇を取るのもままならない状態がずっと続いています。私の夢はどこへやら・・・。今ならお花を通して多少なりとも日本文化を紹介することができるのにと残念なのですが・・・。

スポーツといけばなから
元気と癒しをいただく彩り豊かな日々

平田さんご家族の愛猫 ”ペル“

ずっと続けているテニス、エアロビクス、水泳は私の健康維持とストレス解消に欠かせません。テニスでは1時間半フルに動き回り、エアロビクスは細かいステップや難しい振り付けをこなす上級クラスでやっています。スポーツでよく体が動くと、「ああ私は元気だ」と思えて、意欲がわいてきます。それとは対照的に、お花は緊張して集中して、いかに花材を生かして美しく表現するかを考えながらじっくりと取り組む、私にとっては大切なアートの時間です。ですから、お花をいけ終えたときは、スポーツとは違った意味で疲れ、ホッとします。そして出来あがったお花を見るとうれしくなるのです。

今は小原流いけばなとテニスなどのスポーツが、日々の生活を彩り、楽しく豊にしてくれています。それと、私がお花をいけていると、いつも私の足下でニャーニャーまとわりつく愛猫ペルが、巣立っていった息子たちの代わりとなって、私たち夫婦に癒やしをもたらしてくれています。


【平田 佳子さんに一問一答】

好きな花

桔梗、鳴子百合

好きな作家と好きな作品

・作家/恩田 陸 『蜜蜂と遠雷』
・映画/『アマデウス』(古い映画です。天才モーツアルトと秀才音楽家サリエリとの対比と悲哀を描いたお話)

平田さんにとってのマイブーム

・数独
・NHK、BS3で放送されている田中陽希の「グレートトラバース」を観ること(学生時代は山女だったので、私も同じコースを登ったなとか、そうそう、あのコースがすごく大変だったのよね、なんて思い出しながら見るのが気に入っています)
・手作りのイタリアン料理で夫と家飲みワインをすること(週に2回ぐらい)

平田佳子さんからご紹介いただいたから次回の「いけばなじん」は、水村恵順 さん(東京支部)です。2019年の研修課程Ⅱ期前期の控え室で同じテーブルになり、話をするようになりました。物静かな雰囲気で、ご自分でいけた研修科目のお花の写真を貼ったノートを見せてくださる優しい方ですが、20歳からお花を始められ支部の役員も経験されているだけに、意志のしっかりした方でもあるとのことです。どうぞご期待ください。