いけばなじん

File No. 132

矢崎 豊秋さん

矢崎 豊秋さん

千葉県/千葉支部

基本に立ち、心を配りながら花と向き合う
花を学び人と繋がる時間は私にとって至福のひととき

よき先輩と仲間たち
母の時代から続く深いご縁は小原流あってこそ

矢崎さんのお花にまつわる原体験は、お母さまが通われていたお教室。そこで培われたお花への慈しみが、それからの矢崎さんの人生に大きな影響を与えたのかもしれません。小原流の良き先輩方や厳しくも温かいお母さまの存在、そして何よりお花を愛する心と共に、高い志で学び続けてこられた矢崎さん。そんな矢崎さんの「いけばなじん」としてのお話を伺います。
千葉支部青年部役員時の合作とともに (2012年6月)

研修課程Ⅰ期の出会いから15年
いけばなも花をいける姿も素敵な太田さん

太田さんとは2005年8月、研修課程Ⅰ期初日に控え室でお会いしたのが最初です。昼食時、私は同じ社中の4人と一緒でしたが、太田さんはその近くにお一人でいらっしゃったので、お節介かなと迷いつつも「ご一緒しませんか?」と声をおかけました。「よろしいですか?」と太田さんが応えられた場面は今もはっきり覚えています。そこから話が弾み、朝も夜も、最終日まで太田さんを含めた5人で楽しく過ごしました。

いけこみ会場でも太田さんと私は前後の席で、もたもたしている私を優しく助けてくれました。お花をいける太田さんの姿はとても素敵で、さらに作品も素晴らしく、二級家元教授になりたての私にとって憧れの存在でした。その後、太田さんは研修課程1期を1年で修了されました!

その後、太田さんは研修課程終了直後に開催された千葉支部創立50周年記念花展にお越しくださいました。他にも、日本いけばな芸術展ではお互い先生の助手としてお会いしたり、一緒に地区別教授者研究会にも参加、最近では2019年に開催された日本平のイベントでも再会しました。

いつかゆっくりお話したいと思いつつ、年賀状のやりとりやLINEなどで15年ほどお付き合いが続いています。

小原夏樹先生生誕70周年記念日本平イベントにて
(2019年 左から3番目が矢崎さん、お隣が妹さん、右から4番目がお母様)

小原流は母の手ほどきで
厳しくも愛情深く教えてくれた花の心

物心ついた頃から、小原流いけばなは身近にありました。幼稚園の頃は母の中井豊千(一般財団法人小原流理事・千葉県支部連合会会長)が師事していた松尾 チヨカ 先生のお稽古についていき、お教室でたくさんの方がお花をいける様子を見ながら母を待っていたことを覚えています。その頃の先生方とは今でも支部の行事や研究会でご一緒しています。何十年も親しくお付き合いさせていただけることが嬉しい限りです。

正式に入門したのは小学5年生の時。母の自宅教室で他の生徒さんたちと一緒にお稽古をし、20才頃からは研究会に出席して支部のお手伝いもするようになりました。子育てと仕事で数年休会して子育てが落ち着いた頃、きちんとお花に向き合おうと思い、「研究会は休まない」「お稽古にも真面目に取り組む」を心がけるようになりました。

その頃、社中の方々が研修課程Ⅰ期を受講することになったので、私も軽い気持ちで参加したのですが、準備をほとんどせずに参加したため、1年目は惨憺たる結果に…。落ち込む私に、「大した努力も稽古もしないで駄目だったからと落ち込んで愚痴を言うのはおかしい。これから一からやり直し!手が痛くなるまでやってみなさい!」と母の一喝。

それからの1年は、食卓の上にも下駄箱の上も、家の様々な場所に触り過ぎてボロボロになった私の作品が並びました。近くに母が住んでいましたので、「いけたから見にきて」と、すぐに指導してもらえたことがありがたかったです。

母の教室では、手伝いをしながらずっと他の生徒さんたちとご一緒しています。今も高校時代の同級生が来てくれていますし、30年近くのお付き合いが出来ている幸せは小原流のおかげです。お花が好きという共通の思いで一緒に楽しみながら、つねに教室の盛り上げに協力してくださっている皆さんに感謝しています。

現在のお稽古は、8年前から小原流・研美いけばなセンターで小原流研究院助教授の西 晃宏 先生にご指導いただいています。先生からは「丁寧にお花をいける」大切さを学んでおり、「そうだ!ここまで心を配らなくては!」と、お稽古のたびに“気づき”をいただいています。難しくて苦手だった花型も、わかりやすく繰り返し教えていただき、きれいに仕上がることで逆に好きな花型になったこともありました。教えていただいたことを忘れないうちにと、教室を出るとすぐに喫茶店に入りノートに書き込みをしてから帰途につくのが習慣です。西先生の優しいお人柄に感謝しながら、毎回楽しみにお稽古に通わせていただいています。

支部新年会にてお家元と社中の皆さんと (2017年 前列右が矢崎さん)

高校生への指導、次は妹へバトンタッチ
母子3人で紡いできた小原流のいけばな

2007年に母から高校の華道部講師の仕事を引継ぎました。その際、いけばなに馴染みが薄い高校生にお花や小原流の事を伝えるうえで、自分の技術や知識に不安を感じ、随分お稽古をしたことを覚えています。特に、研修課程Ⅰ期で基礎花型や小原流の歴史、色彩学を真剣に勉強したことは、「教える」うえで大いに役立ちました。

試行錯誤しながらも高校生との部活動はとても楽しかったのですが、卒業を迎えた生徒たちとの別れは毎年淋しいものでした。しかし、卒業後も私に習いたいとお稽古に来てくれたことが何よりも嬉しかったです。

高校では、部活の指導以外にも卒業式・入学式の作品挿花のお仕事もあり、ステージや玄関、来賓室に、生徒を助手に大作を5作以上いけました。最初の数年間は母から指導を受けていましたが、今では妹と二人で仕上げることができるようになり、母も喜んでくれております。この高校には母が30年、私が9年間講師として勤めましたが、私の仕事が忙しくなったため、現在は妹が引き継いで勤めています。三人でもよく話すのですが、長く母娘で小原流いけばなを続けていられることに、この上ない幸せを感じています。

みんなの花展での矢崎さんの作品 (2019年6月)

「みんなの花展」は仲間の総力
親孝行にもなった思い出の家族旅行

2019年6月、八千代・富里・習志野・佐倉地区の「みんなの花展」が開催された際、千葉支部参与・小原流研究院元講師の小柳 華信 先生と、小原流研究院講師の畔蒜 博葉 先生ご指導のもと、名誉幹部の先生方とともに実行委員として参加しました。花展の準備に最初から携わったのは初めてでとても勉強になりました。

中でも実行委員10人の合作として制作した写景盛花の大作は素晴らしい経験となりました。畔蒜先生ご所有の山から主材となる木を切り出し、花材も採取して、ご自宅で芯組みや下いけまで行わせていただきました。写景の大作がどのように出来上がるのか、細かい部分までご指導いただいたことに感謝しています。

「みんなの花展」写景大作 (実行委員合作 2019年6月)

この時は、トラックでの搬入・制作・搬出は、実行委員本人だけではなく家族総出での協力のもと、大忙しの中でも思い出に残る家族ぐるみのイベントとなり、みんなの喜びにもなりました。

毎日のようにグループLINEで打ち合わせを行い、大先輩の先生方にたくさんのことを教わりながら過ごした準備期間を経て、花展は大盛況のうちに終了。その後、まさに「みんなの花展ロス」状態となりました。

「みんなの花展」実行委員メンバー (2019年6月 後列右から2番目が矢崎さん)
ご友人との京都旅行 (2018年10月 右が矢崎さん)

趣味は旅行です。両親ともたくさん旅行しました。父は2020年初めに亡くなったのですが、最期の頃、「元気になってまた旅行に行こうね」と父に話しかけたところ、「ハワイもよかったなあ、また行きたかったなあ…ヒロ(私の息子)がかわいかった」と小さな声で答えてくれました。それを聞いて、行っておいてよかった、親孝行ができたかなと思いました。

ハワイでの家族旅行 (2006年6月 右から3番目が矢崎さん)

【矢崎 豊秋さんに一問一答】

好きな花

グロリオサ、サンダーソニア

好きな作家と好きな作品

林真理子さん、郷ひろみさん(ファンクラブに入っていました。ライブに行くと元気100倍に!)

矢崎さんにとってのマイブーム

源氏物語が好きで、「ゆかりの場所を訪ねる京都の旅」を自分で計画し、毎年京都に行っています。頼りになるタクシーの運転手さんと知り合い、毎回大満足です。

矢崎豊秋さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、西村真由美さん(神奈川県・東京支部)です。西村さんは今回のお話にも登場した矢崎さんの妹さん。矢崎さんから引き継いだ高校の華道部を、豊富なアイデアで盛り上げてくれています。お姉さんである矢崎さんは、「自身の教室で教えることも自分の勉強も頑張っているところも偉い!いつも楽しみながら自宅に花を飾っているのを見てきれいにいけるなぁと感心しています」とのことです。どうぞご期待ください。