いけばなじん

File No. 131

太田 青美さん

太田 青美さん

静岡県/沼津支部

「花が好き」という気持ちを心の支えに
花の動きに風を感じ、葉や枝の声に耳を傾ける

「花好き」の仲間を一人でも多く増やしたい
子どもたちの笑顔が私の喜び

何かと家族でお家にいる時間が多くなっている昨今、気分を明るくしたいとお部屋に花を置く人も増えているようです。太田さんがいけばなのお稽古を始めたのも、「美しいお花を部屋に飾りたい」との思いがきっかけでした。お引っ越しの偶然から優しく経験豊かな先生方と出会い、その教えとともに「小原流いけばな」の奥深さに魅了され、12年前からは子どもたちに教える活動も続けておられます。今は亡きご主人と楽しまれた趣味のお話も伺いました。
第65回静岡県華道展での作品(2016年)

さまざまな共通点を感じる清さん
美術鑑賞でもお付き合いを深めています

清さんとは、15年前に現在は小原流研究院相談役でいらっしゃる関邦明先生のお教室で初めてお会いし、お話しするうちに親しくなりました。清さんも私も、関先生のお教室に通うようになった経緯がよく似ていたこともあって親しみを感じたことを覚えています。いける花に惹かれ合うものがあるのか、いつしか隣の席に座ることが多くなりました。いつの間にかお花以外の話も交わすようになり、より親しくなっていった事を思い出します。

出会った時の印象は、「秋風にそよぐコスモスのように、笑顔がすてきな優しいお嬢さま」でしたが、ただお優しいだけではなく、納得するまで何度もお稽古をする意志とともに、強い向上心などもお持ちで、その姿勢にいつも学ばせていただいています。

お稽古以外では二人とも美術に興味があり、一緒に美術展へ出かけるなどお付き合いを深めています。思い出深いのは、上野に『プラド美術館展』を観にいった時のことです。見終わってから「香香(子どもパンダ)ちゃんに会いにいきましょう!」と清さんに誘われ、当時話題だった上野動物園のパンダを見にいき、二人とも童心に返りました。昨年夏も横浜美術館の『原三渓の美術展』をご一緒しましたが、やはり鑑賞だけで終わるわけもなく、元町でおいしいランチを堪能して横浜を楽しみました。こんなにすてきな清さんとの出会いも小原流あってこそ、本当に感謝しています。

二市一町富士山花展での作品(2016年)

私を導いてくださった二人の恩師との出会い 
花を愛する心を未来ある子どもたちに伝えていきたい

大木社中の先生方と (2001年 後列左から2人目が太田さん)

結婚して間もなく、「家にお花があるといいなぁ」という軽い気持ちで会社のいけばなクラブに入部したのが小原流との出合いです。その後、転勤で沼津に引っ越しましたが、幸運にもそこで大木青々先生、その後、関邦明先生のご指導を受けることができました。

大木先生の教室に幼い娘を連れてお稽古に通ったことは懐かしい思い出です。大木先生は小原流の基本や様式について初心者の私にもその神髄に近づけるよう丁寧にご指導くださいました。しかし当時の私には、ただただ花の型を真似るのが精いっぱいで、今は大木先生の心を学び取れなかったことが悔やまれます。そんな私でも研究会で95点をいただけることもありました。が、思い出深いエピソードとして、審査後に私の席に95点の札が立っているように見え、慌てて大木先生の手を取り見にいくと、それは隣の席で私ではなかった時のこと。がっかりした私に大木先生が「来月頑張りましょう!」と優しく励ましてくださったことが強く印象に残っています。

大木先生がご高齢で引退される時、ご紹介いただいたのが関先生です。

関先生には、常々「丁寧さ」を大事にするようご指導いただいています。「これでよし」とする前に、花の動きに風が感じられるか、葉や枝の声に耳を傾けていけているかなど、いつも先生からの教えを思い返しながら見直しをしています。真摯に花と向き合い、美しさを追求される関先生の背中からは学ばせていただくものがたくさんあります。厳しくご指導くださる先生ですが、主人を亡くした時に花展の出瓶が重なって何も考えられない状態だった私に、先生は黙って花材、花器を用意してくださいました。おかげで花展に穴を開けることなく無事にいけ込みを終えることができました。生徒に何気ない心配りをしてくださるその優しさは、関先生の作品にも表れているように感じます。

「花が好き!」この気持ちが、時に厳しく感じる研修やお稽古の時も、私を支えてくれています。だから同じように花が好きな人を増やしたいと、12年前、子ども教室を開きました。習い始めた1年生が、覚束ない手つきで花鋏を扱う姿にヒヤヒヤするのも束の間、半年もすれば自分の作品をいけてうれしそうに笑っています。秋になれば自分なりの作品をいけるようにもなります。そんな子どもたちの笑顔が私の喜びになるのです。子ども教室から研究会に参加するほど成長した姿を見ると、花好きの仲間が増えたことが実感でき、それが私の励みにもなっています。

挑戦も失敗も今へと続く道しるべ
感慨深い「記念花展」と「地区別教授者研究会」

沼津支部創立55周年記念花展での作品(2007年)

これまでのいけばな人生で特に思い出深い花展は、幹部になって初めて迎えた沼津支部創立55周年記念花展です。古作厚子先生ご指導のもと、初の造形作品に取り組んだのですが、当時は「造形」と言われてもどうすればいいのか皆目見当がつかず、先生に与えられたテーマ『コーヒー豆』にも戸惑うばかり…。最終的には、私の想像力と創造力を超える古作先生のアドバイスで、なんとか作品を仕上げることができました。

沼津支部創立55周年記念花展  古作先生を囲んで(2007年)

初めての地区別教授者研究会は、三級になったばかりの頃で、右も左もわからぬままの参加でした。筆記試験ではひたすら時間が過ぎるのを待っていたのを覚えています。「あなたのように三級の人も参加するのだから、花菖蒲みたいに難しい課題は出題されないわよ」と大木先生に励まされての参加でしたが、なんと瓶花の課題は〝花菖蒲″。…もう時効だと思いますので明かしますが、目の前の花菖蒲に呆然とする私がよほど困った顔をしていたのでしょう。前の席に座っておられたベテランの先生が、見かねたようにそっと小声で「あなた初めて?」「私が教えてあげますから、真似していけるのよ…」と、あの緊張感の中で助け舟を出してくださったのです。おかげで何とかいけることができましたが、結果は皆様ご想像通り。自分が何もできないことをあらためて痛感した苦い思い出です。

地区別は今年で連続20回目の参加となりますが、初参加からは通算35回目です。実は16回目の研究会直前に交通事故に遭って骨折してしまい、その年はケガが治らなかったため連続出席記録が途切れてしまったのです。ゼロからカウントし直して今年20回目となる予定ですが、新型コロナウイルス感染予防のため静岡での研究会は中止になってしまい、秋の東京での研究会に持ち越されました。それだけに、20回目はより一層感慨深いものになりそうです。

地区別教授者研究会での写真花 (2007年)
三島市ほたる祭りにて青年部のみなさんと (2018年 二列目左から3番目が太田さん)

夫と重ねた大切な思い出と
アメリカン3D(シャドーボックス)作り

今は亡きご主人との思い出 マッターホルンとともに(2015年 スイス・ツェルマット)

私の趣味であるスキーもテニスも、もともとは主人の趣味でした。結婚と同時に主人から教えてもらい始めたのですが、半ば引っ張られるように始めたスキーは、途中から私の方が夢中になりました。冬は家族で志賀高原や白馬に、さらにはスイスやカナダなどの海外スキーにも出かけました。4年前に主人は亡くなりましたが、二人で行ったスイスのスキーツアーは今も忘れられない大事な思い出です。

もう一つの趣味は、アメリカン3D(シャドーボックスともいいます)です。20年ほど前、近所に住むアメリカ帰りの友人から手ほどきを受けて作り始め、友人が引越してからは独学で作っています。今では頼まれて作品を作ったり、友人たちに教えたりしています。シャドーボックスの材料に選ぶのはやはりお花のカード。主人がかわいいカードが好きでしたので、今でも好んで作るのはかわいらしい作品。数え切れないほどシャドーボックスを作ってきましたが、最近は家の片づけがマイブームなこともあり、作っては差し上げているので家にはあまり残っておりません。

太田さんのアメリカン3D(シャドーボックス)作品

【太田 青美さんに一問一答】

好きな花

燕子花、椿

好きな作家と好きな作品

池波正太郎 (剣客商売、鬼平犯科帳etc)、池井戸潤、長谷川等伯 

太田さんにとってのマイブーム

家の片付け(片付けなくてはと思いつつも、ついつい心の中だけで終わっていました。最近ようやく亡くなった主人と語らいながら少しずつ片付けができるようになってきました。思い出に浸りすぎてなかなか進まないのでこのブームはしばらく続きそうです)

太田青美さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、矢崎朗子さん(千葉支部)です。出会いは2005年の研修課程Ⅰ期。初参加で心細く思っていたところ、控室で話しかけてくださった矢崎さんのアドバイスや心配りのおかげで楽しく研修を過ごせました。日本いけばな芸術展ではお母様である中井豊千先生を一生懸命お手伝いされるなど、明るく前向きで何事にもひたむきに頑張る姿がすてきな方、とのことです。どうぞご期待ください。