いけばなじん

File No. 127

惠良 聖子さん

惠良 聖子さん

熊本県/熊本支部

二人の師から受け継いだ道を次世代につなげていきたい

教える自信をつけたくて研修課程へチャレンジ  
小原流の技と心を広めていきたい

8歳でいけばなと出合い、途切れることなくお稽古を続けてこられた惠良さん。研修課程においても最後まで学びの姿勢を貫き、誠実にいけばなと向き合ってこられました。青年部活動にも精力的で、すべての経験を自分の糧にされています。2016年の熊本地震ではご自宅も師匠のお宅も被災し、避難生活を送られたつらい体験を経て、ますます募るいけばなへの熱い思いを語っていただきました。

研修課程で苦楽を共にした心強い仲間
気さくで優しいお人柄の上村裕子さん

上村さんに初めてお会いしたのは研修課程Ⅰ期の時です。控室でたまたま近くに座ったことから、どちらからともなく声をかけ、実技研修のいけ方や花材の扱い方などを情報交換するうちに親しくなりました。

研修修了後、仲良くなった10名ほどで中華料理店へ食事に行った際、雑談の中で上村さんと年齢が近いと知り、話し方や空気感が自分と似ている気がして、親しみを感じたのを覚えています。

その後、Ⅱ期、Ⅲ期の研修課程もずっと一緒でした。上村さんは特に投げ入れがお上手で、手際よくすっきりといけられた作品が、よく参考花に選ばれていました。

私が研修中に落ち込まず、楽しく乗り切れたのは気さくな上村さんのおかげでした。納得いくお花をいけられなかった時にお菓子をくださったり、面白いお話で励ましてくださったことや、本番に向け指導内容を一緒に確認したり、考査の花材を予想し合ったことなど、研修課程の間ずっと苦楽を共にできたのは私の貴重な財産になりました。

現在は、メールや電話で家元教場の旬な情報などを教えていただくのが楽しみになっています。研修課程Ⅲ期を終えてから私が大阪へ行く機会は減ってしまいましたが、これからも研修士研修会や花展など、さまざまな機会を通じて親しくお付き合いさせていただきたいと思っています。

鶴屋百貨店花展出品作品(2007年10月 )

小学校帰りの何気ない出来事が引き寄せた今も続くいけばなとの“赤い糸”

いけばなを始めたのは小学3年生(8歳)の頃です。当時、熊本大学附属小学校に通っていたので近所に同じ学校の生徒が少ない中、ときどき一緒に帰る同級生がいました。その子がある日、帰り道に在るおばあさまの家に寄って帰ると言うので、一緒に帰りたい私は同級生についていきました。そのおばあさまが小原流の後藤葉子先生で、お宅ではちょうどご近所の病院の看護師さんたちがお稽古中でした。いけばなを見たのはその時が初めてでしたが、花や木を切って剣山に挿すのが楽しそうで、「私もお花を……あのトゲトゲに挿してみたい……」と思い、はじめは遊びの延長でいけばなを教えていただくことになりました。

習い始めると、花包みを持ってお稽古から帰る途中にご近所の方から「いけばな習っているの?すごいね!」と声をかけられるようになり、急に自分がカッコよくなったように思えました。いつもルンルンしながらお稽古をし、ピンクの花包みを抱えて帰っていたのを懐かしく思い出します。

当時、お稽古は月に4~5回でしたが、学年が上がると運動系の部活動に熱中したり、受験勉強をしたり、4年間東京の大学に行ったりと、忙しい時期もありました。それでもいけばなを辞めようと思ったことは一度もなく、なんとか時間を見つけては先生にご連絡し、顔を出すように心がけていました。お稽古に伺うと、後藤先生はいつもお菓子やお食事をふるまってくださり、本当の孫が遊びに来たように歓迎してくださいました。私がいろいろなことに興味を広げて挑戦する一方でいけばなをマイペースに続けてこられたのは、先生が私の話に耳を傾け、しっかり教えてくださったおかげと感謝の想いは尽きません。

2008年1月 小原流熊本支部「新春のつどい」にて(向かって左が惠良さん)

新しい恩師に導かれたことが転機に
自分を見つめなおし研修士をめざす

後藤先生が80歳になられ、専門教授者をお辞めになる時、「あなたのことはすごく良い先生にお願いしたから、安心してお花を続けなさい」と、当時副支部長だった中尾日出子先生に私をご紹介くださいました。ちょうど一級家元教授になる直前のことでしたが、「これからいけばなとどう向き合うか」を改めて考えるうえで、中尾先生との出会いはよい機会になりました。

自分がいけばなを教える立場になることを意識しだした頃、「今の技術ではまだ自信を持って人に教えられない」と思い、全科目を集中的に勉強することで自分に足りないものがわかるのではないかと、研修課程へのチャレンジを決意しました。それからⅢ期修了まで徹底的に勉強する日々が続き、2018年にやっと研修士までたどり着くことができました。

ここに至るまで、根気強くご指導いただいた中尾先生、講師の先生方、ご心配やご協力をいただいた支部の皆様、研修で出会った多くの先生方、その全ての方に深く感謝しています。今後はこの技術を一人でも多くの人に伝えていくことでご恩返しできればと思います。

伝統文化いけばなこども教室にて(2010年10月)
伝統文化いけばなこども教室にて(2016年1月)(後列向かって左から3人目が惠良さん)
2019年自宅教室にて

熊本地震で自宅も教室も大きな被害
教室再開を待ちわびていてくれた子どもたち

2009年から熊本市動植物園の講習室で開催している伝統文化いけばなこども教室は、地域の幼児・小学生・中学生らが参加し、年を追うごとに人数が増えていきました。ところが2016年4月の熊本地震で動植物園が甚大な被害を受けたため、こども教室もしばらく中止せざるを得なくなりました。代替施設を探しても、どこも避難所などになっていて使用できる状況になく、その年は文化庁委託事業もやむを得ず辞退することになってしまいました。

お稽古に伺っている中尾先生のお宅も、我が家も共に半壊の被害で、しばらくの間、先生は避難所生活、私は家族と愛犬とで自宅駐車場での避難生活を余儀なくされ、お稽古もできない日々が続きました。

その後、2018年12月にようやく動植物園が全面開園し、こども教室も再開することができました。参加を申し込まれたものの震災で叶わず、再開を待ちわびていた子どもたちも習いに来てくれて、現在は皆で楽しく学んでいます。

熊本支部創立90周年記念花展 準幹部作品 (2018年4月) 
第5回九州地区青年部野外展 宮崎県・綾町自然休養村公園にて、熊本支部青年部の皆様と(向かって右から2人目が惠良さん 2013年4月) 

支部行事の舞台裏を手探りでお手伝い
日々の中でますます高まる『いけばな愛』

2008年の熊本支部創立80周年記念式典で、古作厚子先生のデモンストレーションのお手伝いをしたのが青年部員として最初のお仕事でした。講演会前は舞台上のお花の手入れや設置、講演会当日は大変光栄なことに舞台に上げていただき、大観衆の前で緊張しながらお花のお運びなどを務めました。それまで大舞台でのデモンストレーションなど見たこともなく、すべてが初めての経験だった私は何をどうすればよいのか右往左往。一方、古作先生は綿密な計画のもと、人を動かし、大観衆の前で大きな作品を次々と作り上げられ、そのお姿を目の当たりにした私は、ただただ「すごい」と震えるほど感動しました。

その後は一年おきに開催される九州地区青年部野外展へ熊本支部青年部として参加し、皆で家元賞を目指していくつものアイディアを出し合いながら創作活動に打ち込んできました。

準幹部に就任したのは4年前で、それ以来微力ながら支部の研究会や行事のお手伝いをしています。2018年に熊本支部創立90周年の記念花展を開催した際は、準幹部が協力し作り上げる合作に参加しました。

現在は食品会社の品質管理室の長として働いているため、支部行事などでの活動は会社がお休みの日や空き時間に限られ、いけばなを教えるのもボランティアで行えるもののみになっていますが、自分の果たすべき役割を探しながら、これからも常に小原流を広める活動に取り組んで参りたいと思っております。

テニスを練習中の惠良さん

「ルールは世界共通」のテニスが好き
季節感がいけばなに通じる茶道にも心ひかれ

趣味は中学生の頃から続けている硬式テニス。いけばなの次に長く続いており、週に一度は自宅近くのテニスクラブで練習しています。若い頃はよく試合に出ており、賞品をいただいたことも幾度かありました。今は健康のために和気あいあいとした雰囲気の中で体を動かしています。

スポーツの良さはルールが世界共通であることです。旅先で現地の言葉が全くわからなくても、地元の方たちとジェスチャーや共通のテニス用語だけで話し、一緒にテニスをして触れ合えた経験もあります。最近は五十肩で左腕が上がらなくなったり、太って動きが鈍くなったり…ですが、体が動く限り、続けていきたいと思います。

 また、裏千家茶道を22歳から20年ほど習っていました。師事していた先生が逝去されてからは遠ざかっていますが、茶道には季節感を大切にする精神、礼儀、心遣いなどいけばなに通ずるところがあり、とても勉強になるのでまたお稽古を再開できればと思います。

愛犬『瑠璃丸』(2019年11月)

【惠良 聖子さんに一問一答】

好きな花

白梅、薔薇、プルメリア

好きな作家と好きな作品

稲嶺盛吉(琉球ガラス):個性的な器を製作する作家さんで、光に透かして見る色がとても深く綺麗です。いつの日か作品の壷を花展で使ってみたいと思います。 

マイブーム

2019年9月生まれのポメラニアンを最近飼い始めました。この犬種特有の猿期(大人の毛への生え変わりの時期)を迎え、変顔で家の中を元気いっぱい走り回っています。まだお座りしかできないので、何かいけばなにちなんだ技を覚えさせたいと考えているところです。

惠良聖子さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、榎三規子さん(北海道・小樽支部)です。支部幹部として精力的に活動しながら研修課程にも参加されるほどの勉強熱心さ。北海道では手に入りにくい花材をお知り合いから送ってもらうなど、広い交友関係と持ち前の行動力でお稽古やご指導をされているそう。熊本地震の際は惠良さんを心配してすぐに連絡を入れ、心強く支えてくださったとのことです。どうぞご期待ください。