いけばなじん

File No. 125

武田 静霞さん

武田 静霞さん

福井県/福井支部

表現することが元気の源
学びを通じたよき出会いに感謝

いけばなに携われる幸せと
師の教えを胸に進み続けて

幼い頃から何事にも一所懸命に取り組んでこられ、現在福井支部幹部を務めておられる武田さん。頑張りすぎから少し疲れてしまった時にいけばなに出合い、花から優しい生命のエネルギーをもらって元気を取り戻した経験がその後のいけばな人生を導いてくれました。福井支部では6年間青年部長として活動され、その傍ら研修課程に挑戦するなど、研鑚を重ねてこられたプロセスをお話しいただきました。

研修課程で出会った馬場雅代さん
緊張の日々をサポートしてくれたことに感謝

 馬場さんにお会いしたのは2013年6月の研修課程Ⅱ期でした。控室でたまたま隣の席になり、ご挨拶してお話しすると、なんと自分の出身地に近い北陸・金沢市の方とわかって親しみが湧き、一瞬で打ち解けました。 研修中は緊張して心細く、課題の様式集成のことなどが気になり不安が募る中、馬場さんが几帳面に整理されたノートを開いて丁寧に教えてくださったことが印象に残っています。

 馬場さんはとても面倒見がよく、後ろいけの練習では時間を計ってもらったり、アドバイスをもらったりしました。また、お食事をご一緒し、同じテーブルの方たちとノートを拝見して質問したり納得したり。情報交換しながら励まし合い、Ⅱ期、Ⅲ期を共に過ごしました。
 現在は年賀状のやりとりのほか、お互いの支部の花展を見るために行き来したり、メールで近況報告をし合うなど、親密な交流が続いています。

癒しの存在として出合ったいけばな
恩師に支えられ、花とともに人生を歩んで

 中学生の時は体操部で、平均台や床運動などの練習を重ねて日本中学校体育連盟(中体連)の大会などにも出場するスポーツ少女でした。2年生で部長を引き継ぎましたが、下級生への指導、練習や部員の統率に力を入れるあまり、生真面目で練習一本の私のやり方に不満を持つ後輩から反発されることがあり、プレッシャーに押しつぶされそうな日々でした。
 そんな折、いけばなクラブの先生に誘われ、お花を手にしました。先生が「お花はお日様に向かって咲いているよ」と教えてくださったので、そう思いながら剣山に挿すと、花が私にニコニコ笑いかけているようで元気をもらえた気がしました。何度か通って花をじっくり眺めて観察し、スケッチをするうちに、心が穏やかになってきたのです。心の充電をしたことで気持ちも明るくなり、体操部でも続けて中体連大会に出場することができ、無事に卒業することができました。

 高校では、教養カリキュラムに小原流いけばながあり、直立型や傾斜型を習いました。花を花包に入れ大切に持ち帰ると、祖父が「昔、使っていた器だよ」と花器を出してくれました。それをきっかけに玄関の衝立の前に花を飾るようになり、ある時、我が家を訪れた方から「きれいにいけたね」と声をかけていただいて、いけるのがいっそう楽しくなりました。
 カリキュラムとしては1年間だけの取り組みだったので、「いけばなを続けて習いたい」と母に伝えたところ、近くに小原流の先生がいらっしゃると知り、福井支部幹部の西畑竹雲先生のもとで本格的に習いだしました。先生のご自宅和室が教室で、小さな台に器が1つずつ並べられていました。社中の先輩方のお稽古された花を拝見したり、手直しを受けるといきいきしてくる花を見るのが楽しく、熱心に教室に通いました。
 やがて結婚して子どもができ、子ども連れでお稽古に伺うようになりましたが、先生は子どもにも優しく接してくださいました。花の残りを切るなどして子どもを遊ばせてくださったおかげでお稽古を続けることができ、とても感謝しています。また、準幹部に推薦していただき、支部研究会の準備などもお手伝いさせていただけたことも良い経験となりました。

「第50回地区別教授者研究会」優秀花作品(2013年3月)

先生方の「魔法の一手」に魅了された家元教場
研修課程にも参加し研鑚をかさねて

 一級家元教授に進級すると、花材の取り合わせが難しくなり、併せて生徒への指導力も高めたいと思うようになりました。そんな時に「家元教場では研究院の先生方のご指導が受けられるから一緒に勉強しましょう」とお誘いいただき、大阪の家元教場に通うことになりました。先生方の魔法の一手を目の当たりにした私は「すてき!」と、心をギュッと握られてしまったのです。自分の未熟さを思い知り、研鑽を積む日々。教場は希望の取り合わせに対応していただけるシステムですので、色彩盛花や写景盛花など、自分に不足しているところを重点的に学ぶことができました。
 教場には研修課程を受けるためにレッスンを重ねている方も多く、皆さん熱心に勉強されていました。私も基本からみっちり勉強したいと思い、研修課程Ⅰ期を受講することにしました。大阪の教場に通いながら、地元では大円暁和先生に師事し、作品を写真に撮って振りや角度を何度も練習するなど、レッスン漬けの日々を送りました。自分ではできていると思っていた花意匠「ひらくかたち」のみが受からず、Ⅰ期修了までに3年かかってしまいましたが、気を引き締めてⅡ期、Ⅲ期と受講し、研究院の先生方、大円先生のご指導や教場の先生方が応援してくださったおかげで無事に研修士になることができました。

 また、恩師から勧められて参加した「地区別教授者研究会」では「10年皆勤賞」や優秀花をいただき、「継続は力なり」を実践できたと思っています。

「第50回地区別教授者研究会」優秀花作品。瓶花・盛花ともにいただくことができました(2013年3月)

 現在は、自宅教室、カルチャー教室、伝統文化いけばなこども教室(福井県坂井市兵庫地区、大石地区、中地区)で教えています。こども教室は立ち上げて10年になりました。子どもたちは受付が済むとイスに座り、ノートを広げて花の名前などを書き写します。1年生が覚えたてのカタカナやひらがなで転写するのに少し時間がかかるのを、ゆっくり見守れる優しさや思いやりが高学年に育ってきており、1年生から6年生までの学年差がありますが、とても和やかな教室です。皆に「花をいけるのは好き?」とたずねると、「いけばなは楽しい」「花はきれいだから好き」との答えが返るなど、見ていても楽しそうな様子が伝わってきます。また「何のお花が好き?」と聞くと「ガーベラ、スィートピーが好き」などと答えてくれます。これからもたくさんの子どもたちがいけばなを楽しんでくれることを願っています。

公民館いけばなこども教室の生徒たちと一緒に(2019年)

作品制作を通じて、社中や青年部の仲間と
感動をともにした思い出は一生の宝物

 1992年、福井県春江町主催で、町の花「ゆり」を題材にした「ゆり創作展」の募集があり、社中の仲間と制作に取り組みました。何の素材を使い、どう構成しようかと試行錯誤していた折、支部の造形講習会で釘に出合い、「これだ!」とワクワクしました。ステンレス釘と真鍮釘を打ち込んで鉄砲ゆりの気高く凛とした表情を凹凸で表現した作品は、さまざまなジャンルの参加作品102点の中から最高である「優秀賞」を受賞しました。それ以来、12年間素材を変えては挑戦し続け、さまざまな賞をいただきました。表現の楽しみを社中の皆で味わえたことが何より良い経験になったと思います。

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「ゆり創作展」優秀賞受賞作品展示(3部作)(1992年4月)
釘の凸凹で百合の花を表現しました
「ゆり創作展」にて社中の方たちと(前列右から2番目が武田さん 1992年4月)

 1998年に福井支部青年部部長を預かり、青年部のメンバーと他支部青年部の造形作品を見学したり、制作の苦労話などを伺う機会に恵まれました。作品に使えそうな素材を見つけたときはアイデアを温めて自分たちの制作につなげたりと、青年部で社中を超えた絆を深めました。

 2002年4月には青年部花展「LET’Sエンジョイ」を武生パレスホテルで開催。「会員同士をつなぐ作品を創りたい」とアイデアを出し合い、綿棒をテグスでつないで、季節に合わせた「桜」を表現することになりました。研究会の待ち時間に会員の方にもパーツを作っていただき、仕上がりに胸を膨らませながらコツコツとつなぎあわせて制作しました。支部の皆さんに温かく応援していただき、花展当日、大広間の壁いっぱいに咲いた桜は皆の花そのものと感じ、言い表せないほどの感謝が湧き上がりました。ご協力いただいた先生方と、心を合わせて制作した仲間とともにこの達成感を味わえたことは、私にとって皆さんとのかげがえのない思い出であり一生の宝物です。

研究会の待ち時間に会員の方たちと綿棒をつなげて。少しずつ気持ちもつながってきます(2002年4月)
青年部花展「LET’S エンジョイ」にて青年部のメンバーと(2002年4月)

 2004年、「近畿・中部青年部作品展」を福井県金津創作の森で開催し、各支部からの参加者や福井支部の先生方の作品を展示しました。会場準備やプラカード持ち、パーティーの準備、宿泊所の手配など、皆の力を合わせて大成功のうちに終えることができました。
 どれを取っても、皆様の温かいご協力があればこそ。花の輪、人の輪、みんなの輪、小原流のつながりのありがたさは何ものにも代えがたいものです。

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 2019年9月、西武福井店にて大円暁和先生の喜寿をお祝いする社中展を開催。社中45名が、大円先生への日々の感謝とお礼の気持ちを込め、花をいけました。
 時に先生は「これを美しいと感じますか?」と問われます。そして先生が手を加えられると、花はもちろん、一本の枝、一枚の葉まで気を配ったいきいきとした作品に生まれ変わっていき、花に寄り添うことを教えてくださるのです。

  振り返ると、いけばなを通じて出会った方々が私を創り、育ててくださったのだと感じます。学びの中ですばらしい先生方と巡り合い、私を支えてくださっていることに感謝の念は尽きません。いけばなに携われることに幸せを感じながら、これからも出会いを大切にし、精進していきたいと思います。

大円暁和社中展「時季の彩にて」。
写景コーナーで大円先生作、水墨画の掛軸の前に挿花(2019年9月)

日本の美しい自然を描く日本画が好き
スケッチや先生との会話も楽しんでいます

 趣味は日本画です。福井県は本州の中央にあり、石川・滋賀・京都の3府県に隣接し、海や山まで車で30分で行ける自然豊かなところです。私の主人は自然が好きで、休日は家族で泰澄大師が開山したとされる山々を訪ねてきました。頂上をめざして一歩一歩と歩み、尾根道からのすばらしい景色や残雪をいただく白山を眺めました。取立山の水芭蕉、カタクリの花の群落、火燈山のしゃくなげ、平家平のブナ林の新緑、山肌に裏白や日陰を発見しては、喜んだり季節の楽しみを味わったり。自然の中に咲く花の美しさに心を奪われ、充実感に満ちた日々を過ごしてきました。
 この美しく愛おしい花を自分らしく形に残してみたいと思うようになり、日本画への憧れもあったので、近くにアトリエを構えておられる塩出周子先生に師事することにしました。花をスケッチし色を塗っていると、いけばなをしている時と同じ気分になり、とても落ち着きました。スケッチ旅行をしたことも楽しい思い出です。

 日本画は他の絵画とは違い、画材の取り扱いが難しく、胡粉を乳鉢で丹念に磨ったり、膠(にかわ)を溶かし絵の具に混ぜたりするのに熱すぎず冷たすぎないよう加減せねばならず、とても神経を使います。一本一本の線に込める思いに熱くなり、あっという間に時間が過ぎていくように感じます。また、私が絵を描く傍らで調合を見てくださる先生とのコミュニケーションも楽しみのひとつ。先生の師・堀文子先生のお話を伺い、顕微鏡を買ってミジンコの絵を描いていると聞くと「ミジンコが画題になるの? どんな絵だろう」と思いながらも、高齢になっても意欲的な姿勢に興味をそそられます。堀先生の作品集を拝見した時は、夢中で命を表現する先生の志が見えた気がしました。

 東京で「小原流創流111年記念花展」が開催された時、花展を見た後に満開の千鳥ヶ淵の桜や、山種美術館の美しい日本画の桜に酔いしれました。今は父親の介護に追われ趣味から少々遠のいていますが、いつかまた再開したいと思っています。  

青年部花展 「LET’S エンジョイ」 満開の桜のもとで。
左が武田さん、中央が6代目支部長・大円暁和先生(2002年4月)

【武田 静霞さんに一問一答】

好きな花

秋明菊、水仙(和花)

好きな画家・作品

日本絵鑑賞が好きです。特に、奥村 土牛『吉野』、上村 松篁『白孔雀』。

マイブーム

とんぼ玉創り(棒ガラスを熱し、溶かし、巻き付けるタイミングがおもしろい)

武田静霞さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、上村 裕子さん(神戸支部)です。研修課程Ⅱ・Ⅲ期でご一緒され、ともに励まし合って研修を乗り越えられた仲間とのこと。穏やかでほんわかとした印象の上村先生ですが、海外で生活なさっていたことがあり、英語もお話し出来るのだとか。神戸支部の幹部としてもご活躍中で、家元教場にも休まず熱心に通われているそうです。どうぞご期待ください。