いけばなじん

File No. 123

熊野 寿哉さん

熊野 寿哉さん

東京都/東京支部

伝統芸能、アート、音楽
多ジャンルを花の力で融合し、新しい扉を開く

閃きから始まったいけばな人生は
必然でした

最近、いけばなを一つのアートとしてとらえ、斬新に切り込んでゆく方々の活躍が光っています。熊野さんもそのお一人。海外での経験を生かして、ファッション、美術の世界から鮮やかに花の世界へ転身。他芸術とコラボしながら花が新しい“いのち”を演じられるよう空間を演出する、いまや熊野さんでなければ成し得ない作品を次々発表しています。型に縛られず発信していく熊野さんの「今」と「未来」を語っていただきました。

庭師ならではの斬新な枝さばきに感服
大胆かつ繊細、深みある松尾雫さんのいけばな

 松尾さんとは2015年6月、研修課程1年目の前期に初めてお会いし、松尾さんからお声かけいただきました。確か鋏か刃物の話題となり、研修会館のある大阪市に隣接する堺市には刃物センターがあって、凄い数の刃物が並んでいる…というような会話をした記憶があります。

 松尾さんの第一印象は「大きな身体の方」。私も大きい方なので、二人並んでいると相当な威圧感だったに違いありません。松尾さんのいけばな作品は繊細さと大胆さを兼ねそろえていて深みを感じます。庭師をなさっているからか、写景盛花などの枝の見せ方は独特で、いける様子を拝見できてとても勉強になりました。

 お互い住んでいる場所が離れているので、連絡はLINEをメインに、Facebookで近況を報告し合うといった具合ですが、いつかは下関に出向き、花展やいけばな活動を拝見できればと思っています。

表参道にある企業にて正月花挿花(2019年元旦)

ある日突然だったいけばなとの出合い
能楽の世界観から広がったいけばなの可能性

 「いけばなを始めたきっかけは?」の質問には、いつも答えに困っておりまして…、実ははっきりとしたきっかけはありません。ある週末、突然頭の中に「いけばな」と閃いたのです。アメリカで学び、帰国後はファッション関係の仕事に従事していた頃。なぜ「いけばな」だったのかは自分のことながら未だに謎ですが、そのままの勢いで東京・小原流会館のビギナーズスクールに問い合わせをし、体験レッスンを申し込み、その日のうちに入門しました。当時勤めていた企業から歩いて通えたというのも即決の理由でした。

新宿にあるホテルにて。知人の結婚式の為に(2017年夏)

 元々美術を勉強しており、時折空間演出もしておりましたが、ご縁があり、宝生流シテ能楽師・辰巳満次郎先生の能会にいけばなで携わる機会をいただきました。大きな場所のみならず、能楽堂で大変ご活躍なさっている方の能会でのアートディレクションとなるとなかなかできない仕事です。テーマをヒアリングし、企画を立て、前日にいけ込みや施工を行うなど、当日を迎えるまでの緊張感は未だに忘れられません。

能楽師・辰巳満次郎先生の能会装花(2017年10月)

東京支部ならではの刺激的な勉強環境
“造形”から、その先の“インスタレーション”へ

 東京という土地柄、東京支部は年齢、性別に関わらず、幅広い人々でいつも活気にあふれています。また、研究会に出席するとさまざまな先生方の作品を拝見できるので、勉強するには非常に恵まれた環境だと思っています。基本的には支部花展にも毎年出品していますし、社中展もいつかは試みたいところですが、まずはその前に自分自身、そして生徒たちの腕をもっと磨かなくては、と感じています。

こんな感じの教室です

 また、これからますます造形作品を追及したいと考えており、マイ・イケバナをベースに作品を発表していく予定です。空間演出の分野もさらに裾野を広げていきたいので、もしかしたらそのうち植物を使ったインスタレーション展なども開催するかもしれません。

2019年6月に開催したイベントでの空間演出。扉に花をいけていきました
photo by Yoshiaki Miura
前述のイベント時のスケッチ

多感な頃に受けた衝撃を今 かたちに
同世代の仲間と実験的パフォーマンスを創り上げる

 映画、音楽、美術への興味は幼少の頃から現在にいたるまで尽きることはありません。花をいける時も、音楽が聴こえるような…映画のワンシーンをイメージできるような…と一人で設定しながら楽しんでいます。これまでも多くのものに影響を受けてきましたが、特に衝撃を受けたのは、10代の頃に観たパフォーミングアート集団「Dumb Type」の作品。五感全てを奪い去られる感覚を覚えました。漠然とカッコいいな、いつかこんなふうに観る側の心に深く残る作品を残したいなと感じてはいたものの、10代そこそこでは大きな行動を起こせるわけもなく…。

 年月が経ち、今になってようやく当時のアートシーンを堪能していた同世代の仲間たちと作品を創りだすことができました。ミュージシャンの新留大介さん、君島敦夫さん、ダンサーのアオイヤマダさんとコラボした「音楽×ダンス×いけばな」という実験的なパフォーマンスです。今後も表現の幅を広げながら活動を続ける予定ですので、いけばなを面白い形で発展させていければと思っています。

クリスマス装花。新宿にある寿司屋にて(2018年)
堺市の羽衣国際大学にて。舞台の迎え花(2016年)

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hkumano

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いけばな小原流渋谷教室

【熊野 寿哉さんに一問一答】

好きな花

木蓮

好きな作家と好きな作品

マイケル・カニンガム(小説家)
『めぐりあう時間たち』

マイブーム

動物と戯れること(マイクロブタなど)

2019年8月に行った目黒のマイクロブタカフェ。予約してから入店までに1ケ月待ちました。

熊野寿哉さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、馬場雅代さん(金沢支部)です。研修課程Ⅱ期を受講時にご一緒されました。熊野さん曰く「馬場先生は頭脳明晰でいける花も理論的。何事も直感で行動する自分とは違い、解釈にも分析力が備わっているのでいつも感銘を受けています。そのうえ、文章もお綺麗ですので見習いたい方です」とのことです。どうぞご期待ください。