瑞々しい生命の息吹を感じ
花をいける喜びを伝え続けて
いけばなと“赤い糸”で結ばれた人生
社中とともにいけばなを楽しめる幸せ
清々しく聡明な坂井久恵先生
新たな発見がある 北海道と九州の遠距離交流
坂井先生と初めてお会いしたのは蔓桔梗会の旅行で、宿泊先の金沢・加賀屋で同室になり寝食をともにしました。年長の私と若い坂井先生との出会いは、北海道と九州というお互いの地域的な違いもあり、とても新鮮でした。第一印象は「若くて、元気で、積極的。物事をはっきりと判断なさり、とても気持ちいい方」。その後、お電話でのやり取りを通じて私の直感は正しかったと確信し、このご縁をありがたく思っています。
坂井先生とは旅行後もLINEや電話を通じてお互いの近況や活動の様子を交換するようになり、いっそう仲良くなりました。ちょっと長話をしたい時は電話でおしゃべりします。佐賀から花満開の写真をお送りしたところ、十勝から送られてきた写真は雪景色であるなど、お互いの情報交換でびっくりすることが多くあります。今年の6月下旬に開催される十勝支部周年記念行事には私も参加させていただく予定で、いろいろと計画を立てながら楽しみにしています。
計らずも戻った佐賀で
逢うべき糸がつないでくれたいけばな
佐賀で過ごした幼少期、お彼岸にお寺の本堂に供えるいけばなをいける大人の中で走り回り、母に叱られた記憶があります。とはいうものの、裏庭の木の枝や花が組み合わさって作品に変わっていくプロセスにワクワクしてのことでした。これが私のいけばなの原体験であり、植物の造形との出合いでした。
自宅のお寺で、お茶とお花のお稽古があったのですが、同じような花材を同じような様式でいけるいけばなにはそれほど魅力を感じられませんでした。中学生の頃は、部活のソフトボールを理由にお稽古に出ないこともあり、高校・大学時代になるとますますいけばなから遠ざかっていきました。
結婚後、東京・杉並区に住んでいたある日のことです。夫の父が社長職途中で急逝し、急きょ佐賀に帰ることになりました。佐賀の仮住まいは倉庫跡。米倉に窓ガラスを入れただけの殺風景な住まいには床の間も何もなく、カーテンをかけたりいろんな飾り物を置いたりしましたが、何かが足りません。生命を感じさせてくれる瑞々しさがないのです。そんな時、小原流いけばなを教えていた夫の姉が我が家にいけばなを飾ってくれ、「これだ!」と思った私は、3カ月になったばかりの長女を連れて、いけばなのお稽古に通い始めました。これが本当の意味での私のいけばなの第一歩となりました。やはりどこかでいけばなと私は、赤い糸で結ばれていたような気がします。

思い出の「佐賀支部創立30周年記念式典」
多様な表現でいけばなに取り組んで
支部活動の中でひときわ印象深い出来事といえば、佐賀支部創立30周年記念式典のため、三世家元 豊雲先生ご夫妻が初めて佐賀支部へいらっしゃったときのことです。式典の司会やパーティーでのインタビューなどを担当させていただき、本当に身に余る光栄な体験で、当時のことは今でもはっきりと覚えています。


また、1995年に「挿花」の『創流100周年記念論文コンテスト』で、自分のいけばな人生をつづった文章が優秀作品に入賞したことも大きな喜びでした。
日々の支部活動では参与として後進の指導に携わっています。地域活動では「伝統文化いけばな親子教室」の代表を務めています。

近年では、喜寿記念に「はな源氏」というタイトルの社中展を開催し、私の好きな藤壺、若紫、明石の上、末摘花、六条御息所の五人の女性をイメージした作品を制作しました。
傘寿記念の花展では「Japonism」と題し、古典的な花から現代の花までを使い、自分なりの「Japonism」を作品に表現しました。


43歳の時から昨年までの40年間、心身障害者施設の「めぐみ園」にてクリスマスのいけばな(大作)をボランティアでいけてきました。40年継続してやってこれたのは、社中の協力のおかげだと思います。

また、これまでの活動が認められ、佐賀市文化連盟より「内山文化賞」をいただきました。権威あるこの賞の受賞は小原流佐賀支部史上3人目ということで、大変名誉に思っています。
書や俳句で心潤す日々
これからも大切な仲間たちと花の命を慈しんでいきたい
いけばな以外の趣味は、書道と俳句です。若い時に大阪の玄雲社という流派で約15年間「書」をたしなみました。なんとか師範の免状をいただけましたが、私には書は不向きだったと思います。 最近は、テレビで夏井いつき先生のお話に魅せられて、“にわか俳人”となりました。まったくの素人でテレビ相手ですので仲間も一人二人ですが、ただただ五七五のリズムと季語に魅せられ、自己流の駄作をせっせと創っています。
◎百合の芽の 鱗のごとき 日射しかな
◎著筏の花 一輪だけの 部屋広し
私の教室に来ている生徒たちは、年齢や環境を越え、同じ場所で同じ時を共有し、また楽しさも苦しさも共有した仲間です。花をいけるという、生命のはかなさと“いのち”をいただくことへの感謝の念を抱きつつ、大切な仲間たちとともに、これからも植物との交信を楽しみたいと思います。

溝田 至遙さんの教室はこちら
【溝田 至遙さんに一問一答】
●好きな花 | さくら |
●好きな芸術家 | 曽野綾子、与謝野晶子、フランツ・リスト、篠田桃紅、板東玉三郎 |
●マイブーム | 孫(男子2人)が小原流いけばなを稽古中で、嬉しく思っています。 |