みんなのいけばな

File No.109

三浦 秀蘇さん 中田美根子さん 熊本県天草支部

誠実に心をこめて精励したいけばな
花とともに織りなした大切な「人の輪」

師の言葉と花の力を道しるべに
紡いできた半世紀

高校で授業の一環としていけばなに出合った中田さん。素晴らしい師の導きもあり、仕事をこなしながら天草支部支部長として7期14年に渡って尽力されました。花展やセミナー、研修など、その時々に残る思い出をしっかりと心に留め、折々に出会った人々とのご縁も大切にしながら、常に前向きに努力されています。健康第一がモットーの中田さんのいけばなへの誠実な思いをお話しいただきました。

アクティブで潔い井上豊彰先生
近隣支部長として交流を深めて

 井上先生と初めてお会いしたのは2005年11月、「小原豊雲生誕100年・創流111周年記念花展」説明会です。東京・小原流会館へ日帰りする折にご一緒したのですが、当時は研修部長をされており「石本康代支部長の代わりに来ました」とお話をした程度でした。その後、2014年に支部長になられ、2月の熊本県支部連合会支部長会で再会。ところが県内7支部のうち4支部長が交代された年で総勢13人の先生方がおられたこともあり、それぞれ自己紹介程度の挨拶で、井上先生とはゆっくりお話できませんでした。
 
 それ以降は支部長会や他支部の講習会・花展など一緒に行動する機会が多くなりました。井上先生は新人の支部長でありながら、会議でご自分の意見をはっきりと述べられ、心が強くぶれない方だと思いました。お花やお茶以外にもたくさんの趣味をお持ちで、何事にも積極的かつ行動派。研修課程では受講時期こそずれていますが、苦労話では気持ちが通じるものがあります。最近では、2018年5月の「未来への扉 ― Reborn」展の記念パーティーと盛花記念センター特別内覧会で、熊本北支部の先生方ともご一緒させていただきました。


日本いけばな芸術九州展(熊本・鶴屋百貨店)(2006年10月)

高校の授業で出合ったいけばな
恩師の言葉、花の持つ力に引き寄せられて、はや半世紀

 小原流いけばなとの出合いは高校の授業で、初代天草支部支部長 村上絹先生に教えていただいたことです。私たちの若い頃はお茶やお花は嫁入り前に誰もが習うことで、私も人並みに料理や洋裁、書道、お茶、お花のお稽古に通わされました。そんなきっかけでしたから、こんなにも長く(50年も!)お花と関わることになるとは思ってもみませんでした。

 社会人になってからは村上先生と、後に村上先生のご紹介で金子三伸先生に学び、1981年の支部発会時に幹部になったのも村上先生の薦めがあったからです。
 私が師事した先生方は、人としての魅力あふれる大変素晴らしい方々でした。お稽古の中でよくおっしゃっていたのは「いけばなは技術だけではダメだ。表現力、知性、情熱、気力、体力、遊び心もまた必要である」、そして「いけばなはそれぞれの身近な材料が主流でありたい。少ない、小さい、短い材料でも大きく見える豊かさが必要であり、ものの豊かさ、心の豊かさが大切。暮らしは低く心は高く」などと常々言われた言葉でした。私も先生の言葉にまったく同感です。

 1989年、地区別教授者研究会で初めて技術優秀賞をいただきました。そのころは仕事が忙しく、あまり勉強もせず参加していたので、自分自身が一番ビックリしたのを覚えています。 そのことがきっかけでいけばなをもっと深く学んでみたくなり、幹部研修や研修課程にも参加したのですが、工藤和彦先生が最初のご挨拶で「今までの成果を発揮する場」とお話しされ、伝承花や基本の勉強ができると思って参加した私は、「大変なところに来てしまった!」と後悔しきりでした。研修課程の期間中も、仕事を休めない時は何度も飛行機でトンボ帰りし、職場に迷惑をかけないよう努めながら、2005年に無事修了することができました。


「地区別教授者研究会」にて初めての準優秀花(1989年5月)

支部長として経験させていただいた幾多の思い出
人の力、花の力に支えられた感謝の日々

 2004年に支部長を拝命し、当初は「才も能力もない私が、仕事をしながら務まるだろうか」と大いに悩みましたが、役員や会員の皆が支えてくれたおかげで、7期14年間にわたって続けることができました。もちろん大変なことも多々ありましたが、花と向い合う時間は植物が持つ不思議な力に引き寄せられ、心和みホッとするときでもありました。また、いけばなを通じてたくさんの友人と知り合えたことは、お金では決して買うことのできない大切な財産だと今では深く感謝しております。

 支部長時代は、伝統文化いけばなこども教室、支部創立30周年記念事業、熊本県支部連合会講習会、みんなの花展、支部長セミナー、幹部研修会、他支部へのお祝いなどの事業が次々と、また仕事でも県外や海外に出向くことが度々あり、忙しくはありましたがとても充実した時間を過ごせたと思っています。


伝統文化いけばなこども教室

国際観光都市シンガポール視察研修(2010年4月)

 その中で強く心に残っている思い出といえば、2005年3月、有機農業栽培に取り組む団体のこだわりの学習会で、初めて「いけばなについて」講演をさせていただいたことです。 当時、有機農業栽培についての知識はあまりなかった私が、大胆にも「はな」の意味について講演しました。「さまざまな植物のプロセス(変化)を(葉、茎、幹、皮、根、実、そして繊維、汁、灰さえも)私は『はな』として見る」「いけばなに必要なものはまず選ぶ目(感性、即断力)、生かすやさしい心、立ち向かう気力、高める表現力、そして遊び心」「いける人が爽やかでなければ、いきいきした花をいけることができない。人に見せる花は、訴える花でなければいけない。いけばなを通して心を磨く」など…、今振り返るととてもお恥ずかしい話をしていたように思いますが、よい経験をさせていただきました。

 もうひとつは、2011年1月、上天草市の男女共同参画事業・初「女性議会」で、行政に質問・提案をさせていただいたことです。半年近く学習会やワークショップを重ね、女性ならではの視点から「いつまでも心に残る観光地になってほしい」との願いを込めて提案しました。昔から路地花の栽培が盛んな町でしたので、「花でおもてなしを」と「国道沿線の花いっぱい運動」についてスライドを交えプレゼンをおこない、その後も同市男女共同参画フォーラムで「女性議会」について報告するなど、ワクワクドキドキのチャンスをいただき、本当に心に残る思い出となりました。


「上天草市女性議会」にて。市長に「花いっぱいでおもてなし」質疑・提案(2011年1月

 支部長として初めて開催した「天草支部創立30周年記念特別講習会」も思い出深い出来事です。支部発会時から司会や助手は何度も経験していましたが、いざ自分が支部長となると、大変さはまったく別ものでした。会員の士気を高め臨んだ小さな支部の記念事業に、はたしてどれだけの方が来てくださるのかと心配しましたが、終わってみれば会場は立ち見が出るほどの盛況ぶり。小原流の組織力と花の力に感動するとともに、関係者の方々にも感謝感謝でした。


天草支部創立30周年記念式典(2011年11月)

 支部発会当時から一番お世話になり助けていただいたのが、栂尾花店の栂尾啓吾会長です。ご自宅の広い庭に数多くの植物(いけばな花材)を育てておられる会長は、植物についての知識も豊富で、いろいろと教えていただくことばかりです。周年事業でもたくさんの花材をご準備いただきましたし、ショッピングセンターの教室や支部研究会々場についてもお世話になっております。
 会長は高校時代テニス部の先輩というご縁があり、いけばなの授業で村上先生とともに小原流いけばなを教えてくださったのも栂尾先輩でした。現在、会長の奥さんは副支部長として支部を支えてくれる仲間であり、現社長の芳幸さん(息子さん)も小学生の頃から私の元で小原流を学んでいます。福島県から来たお嫁さんも同じく小原流会員です。このようなご縁が重なり「花の輪・人の輪」でつながっているおかげで、花展や講習会などの作品・出品に際して、あまり苦労を感じることなく進めてくることができました。本当にありがたいことだと感謝しています。
 
 昨年、地区別教授者研究会で40年皆勤賞をいただきました。40年間で印象深いのは、熊本地震で九州地区の研究会が中止になった年には、大阪の研修会館まで出向き近畿・中部地区研究会を受講したことでしょうか。その際、待ち時間に隣席し、初めてお会いした会員の方々にいろいろなお話を聞かせていただき、ここでも小原流の「つながり」をありがたく感じました。


「みんなの花展」(大矢野町総合体育館ロビー)(2013年11月)

 天草支部は小さな支部ですから、花展や研究会などにも幹部をはじめ名誉幹部・参与の先生方と全員一丸となって取り組み、会員の皆様が長く続けていけるよう工夫してきました。
15年以上据え置きだった研究会費は見直し(微増)し、2006年からは人数が少ないからこそのメリットを生かして研究会を午前中に終了。午後は専門教授者の先生方や三級以上の一般会員に呼びかけ、講師とマンツーマンに近い勉強会を実施しました。その結果、会員の技術の向上に繋がり、支部・花店も含めた三者にとってプラスになったと自負しております。講師の支部要請はなかなか難しいため、現在は本部派遣のみで開催しております。追試も年に一回ですので、前日いけ、当日早いけ、遅いけなども実施し、研究会に出ていただきやすくしています。


支部新年総会/お弟子さん達と(小松屋渚館)(2015年1月)

「ときめき健康ブック」に登場!
いつまでも素敵な“いけばなじん”をめざし邁進中

 2012年、小原流教授会会報誌『ふうせん』の「ときめき健康ブック」コーナーに、健康に気をつけていることや大好きないけばなへの思いなどを紹介していただきました。今でも「健康」が一番、次が好きな「いけばな」という思いは変わりません。若い頃に真っ黒になってテニスやマラソンを楽しんだことが現在の健康につながっているのだと思います。それでも、歳を重ねると誰でも必ずどこかが不具合になるものです。私も古稀を迎え、行動がスローにはなりましたが、残り少ない人生を少しでも健康に暮らし、いつまでも素敵な「いけばなじん」でありたいと、現在も週3〜4日は40〜50分程度の水泳とウォーキングを楽しんでいます。


第23回天草パールラインマラソン大会にて(1995年 左から2人目が中田さん)

 これまで「継続は力なり」で、いけばなを続けてきました。現在は「ものをつくり育てる喜び」を味わい、彩り豊かな人生を過ごすために、自然を相手に自由で楽しい家庭菜園にはまっています。採り忘れた春菊や大根の花の何ともみずみずしく美しいことに気づき、食卓に飾って楽しんでいる日々です。

【中田 美根子さんに一問一答】
好きな花: 水仙(神戸長田区の焼け跡に見舞われた皇后陛下の花束)、桜(春を待って舞い、潔く散っていく)、燕子花(尾形光琳の燕子花図屏風)
好きな作家: 深沢 潮
上記の作家で
お好きな作品:
『海を抱いて月に眠る』(最初、タイトルがロマンチックだなあと思っていたら、東アジアの戦後の激動に翻弄されたお父さんがモデルの小説でした)
マイブーム: 韓流ドラマの時代劇・歴史ドラマ・ドキュメンタリードラマなど。旅行・ドライブ・温泉。
「花の会」元支部長の先生方(左から2人目が木野先生、右端が中田さん)

中田美根子さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、木野豊淨さん(人吉支部)です。2004年1月、四世家元・夏樹先生を偲ぶ会で初めてお会いになったそうです。笑顔が素敵で、翌月の地区運営委員会・支部長会でニコニコと話しかけられて以来、いつも一緒に支部長会に参加するなど一生のお付き合いをする仲になりました。お花以外に子どもたちに書道も指導され、お料理上手、気配り上手のムードメーカーとのことです。どうぞご期待ください。
 

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