みんなのいけばな

File No.108

井上豊彰さん 井上豊彰さん 熊本県/熊本北支部

仲間と同じ目標に向かって取り組む
青年部活動が私の原点

技術向上と交流を深め   
参加しやすい支部をめざして

現在、熊本北支部の支部長としてご活躍され、支部運営にも創意工夫を図られておられる井上さん。叔母様の影響で幼い頃からお花に慣れ親しまれたものの、お稽古を始められたのは意外なきっかけからだったそうです。茶道においても教授者であり、また表装デザインもされるなど、和文化に精通しておられる井上さんに、さまざまなエピソードをお話しいただきました。

 ハートは「隠れ肥後もっこす」
 二つの道でつながった中川静華さんとの絆

 1992年、茶道裏千家青年部改革として、当時一県一青年部であったのを全国に先駆けて6つの青年部が熊本に誕生。その6部長のお一人に中川静華さんがいました。「自分たちで新しい青年部を作る」という強い自負と信念のもと、目の回るような忙しさをむしろ楽しんでいた、そんな時間をともにした大切な友人です。
 たいていの方が2期(3年)で青年部長職を交代するところ、中川さんは青年部立ち上げを果たした後、年上の次期部長より先に拝命したからと1年ほどで退かれたので、当初は控えめで慎ましやかな印象を持っていました。やがて、会議後にお茶や食事をご一緒する機会が増えて、お互い小原流を学んでいることが判かり、すっかり意気投合。支部研究会やお花のいけ方などの話題で大いに盛り上がりました。小柄で実年齢より若く見える中川さんと一緒にいると、いつも私の方が先輩に見られていて、今思うとずいぶん損していたような気がします(笑)。…とはいえ、25年も付き合ってこられたのは、おとなしいだけでなく芯の強い「隠れ肥後もっこす」素質があったからに違いありません。

 支部長を拝命するまでは二人で花展などに出掛けていたものの、最近は熊本北支部での行動が多く、なかなかご一緒できないのが残念ですが、時間を見つけお茶会やプライベート旅行に二人で出かけています。5月の月釜の後には、お茶をしながら旅行の話などを楽しみました。
 平成15年冬の上海旅行での思い出は、特に記憶に残っています。真っ赤なコートを着用する予定が、彼女のお母様が「派手な服を着ていると目立って危険!」と心配されたので、二人とも地味な服装ですっかり現地の方に馴染んでしまったこと、私がインフルエンザ治りかけ状態にもかかわらず、中川さんには一切うつる気配もなく元気だったことなど…。過去の旅行は、おかしくも楽しいエピソード満載です。


上海にて中川さんと(左が井上さん 2003年11月)

愛情深かった叔母を「師」として華の道へ
いけばなへの思いを深めた青年部活動

 母の妹である叔母・中嶌妙子が小原流いけばなを習っており、叔母が子どもに恵まれなかったため、私たち姉妹を可愛がってくれました。毎月花包を抱えて遊びに来て、花をいけてはわが家に飾り、時には私にも挿させてくれました。父の転勤で熊本市を離れてからは、花包ではなく手土産を抱えて訪問してくれるようになり、それは当時、熊本市内でおこなわれていた研究会の帰りに寄ってくれていたのだと知ったのは、ずいぶん後のことです。


光悦寺にて(2010年10月)

 それからは母の茶花を見ることはあっても流儀花を目にすることはなく、数年後に姉が短大を卒業してから習ったお花が久しぶりに見たいけばなでしたが、姉のいけた花を目にして「何か違うなぁ」という印象を持ちました。姉も違和感があったのか1年ほどで小原流に変わり、叔母に師事していましたが、勤めの関係で辞めざるをえなくなり、その穴埋めとして(笑)私の「小原流」が始まりました。成人式の祝会の席で本人の意向なしに母と叔母で決めた習い事でした。とはいえ、子どものころの自由な挿し方は許されず、まだ学生だった私は青春を謳歌するのに忙しくて、あまり熱心な生徒ではなかったと思います。


稽古花・益田英二先生のお教室にて(2013年6月)

 1979(昭和54)年、熊本支部が3つの支部に分割されて山鹿支部(当時・現 熊本北支部)が産声を上げ、叔母が幹部となり、青年部発足のメンバーとして私にも白羽の矢が立ちました。
 青年部での活動は、年代や職業の異なる方々との交流が多く、同世代だけでは味わえないその楽しさにすっかり魅了されてしまいました。もちろん、そのころは花をいける腕も上がり、研究会を欠席することもなくなっていましたが、今でも私のいけばなの原点は、青年部発足に参加したことにあったと思っています。
 特に思い出として強く残っているのは、青年部発足から1年後、阿蘇一帯で野外展があり、工藤昌伸先生をはじめ錚々たる先生方のご指導のもと、2作品を制作し、そのうち「帆」をイメージした作品が優秀賞の第一席に選出され皆で歓喜したことです。
 また、四世お家元・夏樹先生が「花舞」を発表された頃、熊本県支部連合会主催講習会にご臨席され、“各支部から一名が夏樹先生とともに作品に一枝添える” コーナーに私が支部代表として登壇させていただいたとき、緊張している参加者全員に夏樹先生が優しくお声をかけてくださったことなど…、それまで抱いていたイメージとは違った夏樹先生の優しい口調やお気遣いは、今でも素晴らしい思い出として強く心に残っています。

 花展を通じて小原流をアピール
 めざすは“会員が参加しやすい支部活動”

 個人の活動としては、熊本支部の青木敦子先生と犬飼記念美術館(益城町)で「二人展」を開催しました。異なる会期に他流の方も展示をされていたので、作品には小原流らしさを出したいと思ったことや、展示している美術品との調和を考えたいけ方など苦労はありましたが、楽しい花展となりました。


「小原流二人展」犬飼美術館にて(2010年11月)

 地区の文化祭には、社中展として出瓶しました。個人のいけたい花材や花器など社中皆で話し合い、重ならないように心がけ、本人の希望を第一優先に必ず自分で挿花するよう指導しています。


稽古場にて 入会したての生徒さんと(右から2人目が井上さん 2018年5月)

 小原流のアピールにもなる支部花展は、会員の居住エリアが広範囲にわたるため、山鹿市を中心に他地区でも2年に一度の間隔で開催しています。今年は鹿本地区で開催する予定です(10月27日(土)・28日(日)予定、於:山鹿市鹿本市民センターひだまり)。


「みんなの花展」さくら湯にて(2014年10月)

 若い人が少なく、高齢者が多い熊本北支部。中堅層が少ないため幹部候補生も不足がちで、専門教授者の先生方も高齢化しています。研究会に出席してくれている学生が数名いますが、出席数が減少傾向にあるため、会員に研究会出席を少しでもプラスに感じてもらえるよう、1年間のうち数回は定例研究会の後に希望者のみの勉強会を開催し、会員の技術向上を図るイベントを始めました。「会員の顔が見える・わかる」熊本北支部の良さを生かし、幹部による声掛けや参加しやすい雰囲気づくりを心がけたいと思っています。


支部の専門教授者の先生方と交流旅行。
「人吉支部創立50周年記念講習会」見学とくま川下りも満喫
(後列右から5番目が井上さん 2007年6月)

 30年以上にもなる高校での茶道指導
 生徒たちの成長を見守ることが幸せ

 県下有数の進学校である県立熊本北高校の茶道部創立当初より助手として、そして現在は師の後を継いで教授者として20数年間指導を続け、今年33回目の卒業生を送り出しました。いけばなのことも知ってもらいたいと、毎週2回(月・金)の稽古日には必ず茶花を持参するのですが、最初はお花に興味のなかった学生が「今日の花は何ですか?」と次第に尋ねてくれるようになり、毎回どんな取合せの花材を持参しようかなと考えるのも楽しみの一つです。
 授業に出席できず保健室で自習しながらも、茶道の稽古には休まず出てくれた生徒が、二浪後志望校に進学したことを報告に来てくれたこと、卒業後に教育実習で母校に戻り、部活に顔を出して元気な姿を見せてくれたことなど、心に残る思い出はたくさんあります。


熊本県立熊本北高校 茶道部の「曲水の宴」茶席(2012年5月)

 趣味は、掛軸の表装のデザインを考えることです。揮毛された言葉のイメージを考えて裂地を組み合わせる楽しみがあります。また、懐石料理を作るのも趣味の一つです。料理屋さんで懐石料理を食べたとき、美味しいと思ったものは帰ってから必ず自分で作ってみますが、たいていのものは再現できると自負しています。


表装をデザインする会にて (前列左から3番目が井上さん・右隣が中川さん 2009年10月)

「百人一首表装を楽しむ会」(左から3番目が井上さんの作品 2003年10月)
【井上 豊彰さんに一問一答】
好きな花: 百合・桜鏡・武蔵鐙
好きな作家: 遠藤周作・杉浦日向子・葉室麟
上記の作家で
好きな作品:
『狐狸庵閑話(遠藤周作)』
マイブーム: 香道…三条西家でお稽古されている方の主催の会で、香を聞いてからすっかり魅了されています(茶道にも香付のものはありますが…優雅さが格別かも)。

井上豊彰さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、中田美根子さん (天草支部)です。「小原豊雲生誕100年・創流111周年記念花展」説明会参加のため熊本空港でお会いしたことをきっかけに交流が始まり、何事にも全力投球する中田さんのお姿にいつも頭が下がるそうです。会員の少ない支部を率いてこられた思いや専門教授者数を維持する工夫など、同じ課題をもつ皆様の励みになれば、とのことでご紹介くださいました。どうぞご期待ください。

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