みんなのいけばな

File No.104

三浦 秀蘇さん 渋江 泰子さん (山形県・山形支部)

恩師と出逢ったことから拓けた道
“素敵な人との出逢いが人生を変える”と信じて

小原流いけばなを通じて
人と人とをつないでいきたい

いけばなを始めたいと思う時、身近な人に相談したことがきっかけで小原流とご縁ができたという方は少なくありません。渋江さんもそのお一人。偶然だった師との出逢いは、まさに運命の出逢いでした。人との巡り合わせの意味を大切にとらえ、一つ一つのご縁をあたためていく。柔軟で聡明な渋江さんのいけばな人生をお伺いしました。

ふんわり受けとめてくれる奥主豊恵さん
優しいお姉さん的存在です

 奥主さんとは研修課程でお会いしました。当時私はまったく余裕がなく、奥主さんとの初めての会話の内容も覚えていないのですが、研修課程で席が近くになった方々と10名ほどでお食事に行った中にいらっしゃったと思います。明るく面倒見のいいお人柄で、以前から知り合いであるかのような雰囲気で接してくださいました。
 普段はラインでやりとりしていますが、相談などは電話でお話しています。お互いのいけばなに対する取り組み方などを話したり、また些細なことでも優しく受けとめてくださる姉御肌の奥主さんです。

バイタリティにあふれた湯村春奥先生
人生の幅が広がった運命の出逢い

 20代前半に「花嫁修業にいけばなをしたい」と思い、友人に相談したところ、彼女は自宅近くの先生宅で習っているとのことで、早速連れていってもらいました。それが、現在の親先生である湯村春奥先生との出逢いでした。先生にはいけばなのことはもちろん、人生の師匠としても日頃からご指導ご鞭撻をいただき、私にとっては母のような存在でもあります。きっかけは花嫁修業でしたので、当初はそれほど頑張るつもりもなく、むしろ、先生の手料理目当てにお稽古が続いたように思います。仕事帰りにお稽古に行くと、美味しい夕食が待っていて、疲れた日でも先生のお料理で元気になるものでした。お花のお稽古は30分ぐらいで、おしゃべりが2時間ということもありました。


親先生の湯村春奥先生と。
後方は故・古作厚子先生の作品
「新春いけばな講習会&新年会」
(2002年)

 その後、夫の転勤で東京に4年間住んだ時は、一度もハサミを持つ機会がなく、そのままやめることになるだろうと思っていました。山形に戻ってもいけばなをするつもりはなかったのですが、お花友達に先生のところに連れていかれ、そのまま再開。その直後には「あなたはしばらくお休みしていたのだから、研修に行って勉強してらっしゃい」とおっしゃる先生の言葉を真に受けて参加したのが、なんと!研修課程T期でした。言葉では言い表せないぐらい大変でしたし、何ひとつ満足にできませんでした。戻ってからは、週3日3杯お稽古をしていただくなど、特訓が始まりました。一昨年ようやくV期を卒業することができたのですが、くじけそうになるたび、私を叱咤激励してくださった先生や応援してくれたお花仲間のおかげだと心から感謝しています。


湯村先生のご自宅新築の際に行った社中花展(1994年)

 また、その間には、山形支部の幹部のお仕事をさせていただくことになりました。幹部になった当初は、親先生である湯村先生が支部長をなさっていて、会員目線での行事の企画や、時間のない会員のために研究会の早いけや遅いけの時間を設けるなど、臨機応変に対処することを教わりました。とにかく楽しいことが大好きな湯村先生は、東京で開催された花展見学のためにバスツアーを企画され、ミュージカルもセットにし、宿泊は帝国ホテル、という魅力的な企画もなさいました。また山形県華道文化協会の新年会では、幹部全員で寸劇をするなど、本当に貴重な体験をたくさんさせていただきました。


山形支部創立65周年記念花展(前から3列目右端が渋江さん 2013年7月)

 湯村先生が山形県支部連合会会長になられてからは、支部間のつながりを持ち情報交換を図るため、県内5支部の合同研修会や、支部運営についてのグループミーティングなどもおこなわれました。先生のおかげでさまざまな運営方法を知ることができ、とても参考になりました。その時の山菜採りやサクランボ狩りの貴重な体験も、楽しかった良い思い出です。


湯村先生が企画された山形県内5支部合同研修会「山菜採り体験」
(後列左から3番目が渋江さん 2015年)

 お花の経験で思い出深い出来事といえば、2010年に仕事の関係でイベントのステージに挿花させていただいたことでしょうか。イベントは、地球温暖化対策のための森林づくりのセレモニー。当時はまだのんびりと習っているだけでしたが、切り株で作られた花台に戸惑いながらも一人でいけ上げることができました。翌年の2011年には、セレモニー会場となった山形県の飯豊町にある“源流の森”で、インタープリター(※参照)引率の山歩きと記念植樹を青年部行事として行いました。この小さな苗木が大きく育ち、地球温暖化対策の一助となってほしいと願っています(※ 自然と人との“仲介”となって自然解説をおこなう人のこと)。



上:「やまがた森の感謝祭2010」のステージ花を1人で挿花(2010年)
 下:「やまがた森の感謝祭2010」のご縁で、翌年青年部が植樹(前列右から3番目が渋江さん 2011年)

 夫の転勤で何度も転職しましたが、そのたびに職場の上司の部屋にいけばなを飾ったり、別の職場では理事室にお花を飾ったり、最近では課内の応接テーブルや入口の棚にお稽古で使わなかった花を飾っています。事務所は往々にして味気ない空間が多いですから、少しでも優しい雰囲気になればと考えてのことですが、「癒される」「お花の名前を教えて」などと言っていただけると嬉しく思います。

親先生の教えを取り入れた
楽しんでもらうお稽古

 教授者になったのは友だちに教え始めたのがきっかけです。その後仲間が増え、今では高校生から高齢の方まで楽しくお稽古しています。中でも研究会参加組は特に熱心で、逆に私が学ぶことも少なくありません。元々は連絡のために作った社中のグループラインも、お稽古の作品や研究会の作品などを載せ合うなどお互いの勉強になっているようです。
 数年前のことですが、ラインのエピソードがもう一つあります。秘書的なお仕事をしている生徒が数名いるのですが、そのうちの1人から写真が送られてきて「新年の訓示会場の檀上花をどのようにいければよいか」と指導を求められました。それも1月3日の午後のことです。何百人も集まる会場ですから、本人も私も必死でしたが、上手くいけられたことが彼女の自信になったようでうれしく思いました。また、役員付けの秘書をしている方が、役員室でお花を飾れるよう必要に迫られてお稽古に来ていた、ということを後々知ったということもありました。


お正月花のお稽古(2017年12月)

 山形県華道文化協会の花展に
出品(2016年)

 お稽古場が花屋さんのため、好きな花を1つ選んでもらい取り合わせを行います。そのため、全員が違う花材になることがほとんどです。同じ花材を使う方が教える側には手間がかかりませんが、好きな花を選んでもらうと生徒たちもテンションが上がって頑張れるのではないでしょうか。
 私の教え方は、親先生の楽しませ方を真似ていて、「最後までやってみなさい。いくらでも直せますから安心して」とよく言うのですが、実はそれも先生の受け売りです(笑)。その日教室で一緒になった方々がともにお稽古をし、出来上がった作品をみんなで見たり、最後にお菓子とコーヒーでおしゃべりをするのも楽しみの一つです。同じ志で集まった人たちは自然と親しくなっていくようで、これが社中なんだと考えています。

私を成長させてくれた“静”と“動”の趣味
それぞれの縁を成長への気づきに

 20代はさまざまな習い事をしました。エアロビクス、ヨガ、お料理、etc。珍しい趣味では、自動車でタイムを競い合うジムカーナという競技をしていました。国際レーシングコースを有するスポーツランドSUGO(宮城県)で国内A級ライセンスを取得し、毎週のようにJAF(一般財団法人日本自動車連盟)公式戦に参加しました。全日本戦では東北地区代表で鈴鹿サーキットに行った経験もあります。人と競う競技ではなく、ゴーカートコース等を普通自動車で1台ずつ走るタイムトライアルで、2分程度を全力で走ります。狭いコースでの急カーブ、アップダウンなど恐怖との戦いですが、この趣味のおかげで男性並の筋力と、度胸と集中力を養うことができたと思います。私にとって、いけばなは“静”(女性世界)、ジムカーナは“動”(男性世界)の趣味です。


ジムカーナ(1994年10月)

 30代後半からは茶道も嗜みました。茶道は私にとって、心を無にして自分を見つめる時間。ここ3年ほど遠ざかっていましたが、先日久しぶりに初釜に参加させていただき、仲間と再会できたことも嬉しく、とても楽しい時間を過ごすことができました。


茶道仲間と(前列左端が渋江さん)

 「素敵な人との出逢いが人生を変える」。大げさかもしれませんが、私はそう思っています。今、たくさんの生徒に恵まれ、楽しいいけばな生活を送ることができるのは、親先生との出逢いのおかげです。偶然の出逢いは、今では必然だったと思わずにはいられません。生徒たちから「いけばなをしてよかった」「小原流でよかった」と言われるたびにうれしくなります。この出逢いが後々必然だったと思ってもらえるよう、私自身も日々精進していきたいと思います。また、一人でも多くの方に小原流を伝え、人から人へとつなげていくことが私の使命だと思っています。

【渋江泰子さんに一問一答】
好きな花: バラ、ラナンキュラス、椿
マイブーム: 女子会ランチ
女子会ランチ。食べる!食べる!

渋江泰子さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、研修課程V期でご一緒した鈴木綾子さん(土浦支部)。研修中は席が近く、特に鈴木さんの写景盛花自然本位の作品に感激したこともあり、親しくなられたそう。ホテルで練習したり空き日に奈良を観光したりと、交流を深められました。現在講師として活躍されている鈴木さんはハキハキと教えてくださる点も講師に適任とのこと。どうぞご期待ください。
 

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