みんなのいけばな

File No.82

矢井 豊功さん 矢井 豊功さん 岐阜県/岐阜支部

五感を振動させるような 青年部活動の素晴らしさを伝えていきたい

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」

幸せも辛い体験も、人生そのもの
それをどう受け止めるかで内面が磨かれていくと思います

流行に敏感で、常にアンテナを立てて創造や変化を楽しむことが好きだとおっしゃる矢井さん。20年ぶりの海外旅行先であるスペインで、前回の藤田智加子さんより「いけばなじん」のたすきを受け取り、これまでの人生を振り返る機会と、ご自身の半世紀を迎えた人生の節目が重なったことに感謝されたそうです。常に「感謝」と「責任」を忘れない、そんな凜とした矢井さんにお話を伺いました。

パワフルな藤田先生との出会いに感謝 彼女のおかげで緊張感が楽しさに変わりました

サグラダファミリアにて(2016年3月)

 バルセロナのホテルでひと息ついた夜、研修課程T期からご一緒させてもらっている静岡支部の藤田智加子先生より、いけばなじんのたすきLINEが届きました。藤田先生はメチャクチャに!可愛い方です。聡明で気遣いも抜群、何よりご家族が大好きでパワフル。彼女がいてくれたおかげで、研修T期の緊張した空気の中、毎日を楽しく過ごすことができました。昼間は苦しい研修を頑張り、夜はそれを労う宴(?)で盛り上がりましたが、あの研修が楽しかったのは、これからも同期として苦楽を共にしていく大切な仲間に出会えたからだと思います。
 その翌年、東京で開催された120周年記念花展の際には、花展もさることながら、都会を満喫しました。藤田さんとは、昨年末にもクリスマスイルミネーションと温泉と美味しい食事をご一緒させていただいた、そんな楽しい関係です!「今年はどこへ行く?」と気さくに話せる関係が嬉しく、彼女に出会えたおかげで研修が辛いだけではなくなったと感謝しています。

 アーモンドの花とマロニエ(とちの木)の実の街路樹を抜けると、ガウディの最高傑作サグラダファミリアが眼に飛び込んでくるこのスペインで、私の半世紀の節目に「いけばんじん」のお話をいただいて、感謝の気持ちを綴りながら娘と旅ができたことを大変光栄に思います。大聖堂の中は、赤や青のステンドグラスを通してヒカリがあたたかく差し込み、何百本もある柱をすり抜けるうちに薄桃色や水色に変化して、ガウディの思惑通り、多くの民衆が集う温かい空間となっていました。

私の原動力である、亡き師と母の言葉「乗り越えられるはず」 生徒たちには背中を見せながら、ともに歩んでいきたい

お稽古にて(2015年6月)

 幼少より茶道を習い、その延長で習い始めたいけばなが人生のほとんどを占めるようになるとは思いもしませんでした。一度始めたことを途中で投げることが許せない性分で、また生徒に恵まれて休めないということもありましたが、27歳より専門教授者になり、出産、育児と小さな岐路で悩めるときには亡き母が、準幹から幹部になり自分ひとりで物事を図ることができないときには亡き先生が、「乗り越えられるはず、一生懸命頑張りなさい」と背中を押してくださいました。2人に天国で見守っていてもらえることが、今の私に力を与えてくれています。

 岐阜でのお稽古に加えて、10年ほど前から名古屋のお教室へ通っています。そして、伝承するべき花,主に様式を月に一度ご教授いただきますが、その奥深さからますます様式が大好きになりました。「こうしなければならない」ではなく、自然の摂理に相対していけていくという、その必然性に惹かれます。まだまだ上手く表現できませんが、社中の専門教授者にひとつでも多く伝えていきたいと思っています。

お稽古にて(2016年2月)

 また、かつては研修に参加することはまったく考えていなかった私が、熱心な先生方に囲まれてお稽古を重ねるうちに「研修課程に参加してみようかな」という気持ちになっていきました。今はそれも良い経験だと思い、大変感謝しています。

岐阜県華道連盟花展(2016年3月)

 自宅の教室には、毎週通ってくださる生徒があり、盛花、瓶花、花意匠、様式の基本サイクルで季節のお花でお稽古をしています。お稽古半分、おしゃべり半分の楽しい時間です。生徒には「研究会で良い点を取るためにお稽古をしないでほしい。それは頑張った後の結果であって、コツコツお稽古を積み重ねたその先にきっと…!と信じてお稽古しましょう」と伝えています。
 生徒が専門教授者になり、その次の生徒へつながっていくご縁はとても嬉しいことですが、それに伴う責任は計り知れません。組織の中で生徒を守るということ…。そのためには自分がどうあるべきかという自問自答の繰り返しで、言葉で伝えるだけではないのかもしれないと、私の試練はまだまだ続くように感じます。

社中専門教授者とその教え子たち

 また、NHKカルチャー教室は、私に小原流岐阜支部というものを懐深く教えてくださった先生から引き継いだ教室です。さまざまなプレッシャーがありましたが、「今のままのあなたで変わらずに、一生懸命頑張りなさい」と背中を押してくださいました。カルチャー教室とは新たな出会いでしたが、温かく受け入れてくださり、お稽古を通して自分もまた育てていただいていると、常々感謝の気持ちでいっぱいです。自分の言葉に責任を持つこと、背中を見せていくことの大変さに心が折れそうになりますが、誠実に精一杯努め、信頼してくれる皆さんと一緒に頑張りたいと思っています。

NHKカルチャセンターの皆さんと

五感が振動した青年部の創作 青年部で過ごした8年間は私の新たな原点

 小原流に対する考え方に大きく影響を与えたのは、長く在籍させていただいた青年部の存在です。青年部は、私にとってなぜ宝物なのか…。昨年、8年間部長を務め、卒業した青年部でしたが、15年ほど前に初めて青年部野外活動を知ったときは、先輩先生に誘われるがまま、モノを探して集積させて…と、何のために何をしているのかまったく理解できませんでした。でも、仲間と現地で光と風と水と音を感じながら、ともに生みの苦しみを共有していくうちに、いけばなとはまた別の五感が振動するような感覚を味わうことができました。

 宏貴家元や研究院教授の横東宏和先生に、お褒めの言葉をひとこといただくだけで、こんなにも達成感と創作意欲が湧いてくるものかと、私にはとても貴重な体験となりました。

近畿・中部地区青年部作品展「赤い龍」(加賀支部(当時)にて・2010年8月)

 2013年9月に開催された「近畿・中部地区青年部作品展」では、岐阜支部会員の協力を得て、花を接写で撮影し、現像した2000枚の写真を色相環図のように色分けして美しいグラデーションにしました。それを青年部展では大きな白い箱の内側にだけ表現し、支部創立45周年の「みんなの花展」会場において、大きな両面タペストリーにして青年部作品として展示させていただきました。

近畿・中部地区青年部作品展「花畑にとびこんで」(和歌山支部にて・2013年9月) 左から2番目が私・3番目横東先生・5番目金森先生
岐阜県華道連盟 高島屋花展 V期
(青年部ブース最後の作品)

 青年部では、真っ白いフラワースタンドを企画制作したり、花展時の荷物を運ぶワイヤーラックをカスタマイズしたりという体験も楽しみました。また、県の華道連盟島屋花展V期では、毎年青年部に2日間ブースが任されるので、作品に方寸花器やワインボトル、また生活雑貨などを利用したり、テーマを決めて取り組みました。これは今年参与になられた林豊月前支部長の寛大なご指導で、何もわからない部長の私の自由な発想をただ黙って見守り、辛抱強く育ててくださいました。青年部長を務めたこの8年間は、私にとって新たな原点となり、頑張る辛さと諦める勇気の大切さを教えていただいた時間だったと、心より感謝申しあげます。そして、作品制作など、苦楽をともにし、支えてくださったスタッフの皆様にも感謝いたします。

 卒業して今思うことは、より多くの方に青年部活動を知っていただきたい、そしていけばなとは違う感性に触れてもらいたいということです。私にしか見えない視点があるのなら、それをいろいろな形で表現していきたいと思っています。今年の1月には、現在の青年部が何を考え、そして若い世代にどう旋風を起こそうとしているのかを伝えるために、岐阜支部青年部は、通信『華・花(はな*はな)』記念すべき第1号を発行いたしました。次世代を担う青年部が、2019年に創立50周年を迎える岐阜支部をますます楽しく盛り上げていってほしいと心から願っています。

常にアンテナを立てて創造し変化を楽しみたい 人生でどんな花を咲かせるか、内面磨きは自分次第

 作品で自己表現がしたいと、成人して再び花の世界に戻ってきましたが、毎日の生活はファッショナブルに過ごして生きていくのが理想です。若い頃からさまざまな流行に敏感で、常にアンテナを立てて創造や変化を楽しんできました。ファッションは自分のテンションを上げるためにはとても必要だと思います。エステに通い、ジムで鍛えて、お食事は何でも美味しく食べ、お酒を少しいただくことも、内面を豊かにするためには必要だと考えています。花という一瞬の美しさに振り回される日々のなかで、さまざまな出会いをさせていただく幸せも、辛く苦しい体験も人生そのもの。大事なのは、それをどう受け止めるかで、内面磨きは自分次第だと言い聞かせる毎日です。
 ベストセラーの『フランス人は10着しか服をもたない(ジェニファー・L・スコット著,大和書房,2014)』には、「シックでミステリアスに人生を過ごしてどんな花を咲かせるのか」「10着しか持っていないかどうかよりも、人生において本当に必要なモノは何か?を見極めることが大切なんだ」など、大きくうなずくことがいっぱいで、おすすめの1冊です。全身を鏡に映したとき、一番気になるのは、人となりが正直に表れてしまう、自分には見えない後ろ姿!ですから、人生にも花にも一期一会で、正面から向き合いたいと思っています。

 19歳の夏、コロラドにステイしたことが、私の人生においてのすべての「原点」となっています。これまでにも度々、渡航する機会に恵まれましたが、今回のスペイン旅行は、「いけばなじん」とのご縁で花と自分を見つめる特別な時間になりました。歴史的背景が詰まった異なる文化は刺激的で、英語ではなくスペイン語であったことが、逆に度胸と愛嬌で乗り切るしかなかった遠い19歳の夏と同じ匂いがして、懐かしい記憶を思い起こし、再び異国の地へ行ってみたいという衝動に掻き立てられました。
 フリルがいっぱいの、フラメンコドレスの装飾を生むモチーフとなった「カーネーション」がスペインの国花だと知り、カーネーションをいけるたびに、あの街並みを、また「いけばなじん」を想い出すことがとても幸せです。カルメンが口にくわえていた花は、ずっと真っ赤なバラだと思っていましたが、そうではなくカーネーション!であったと…気づかなかったのは私だけでしょうか?

【矢井 豊功さんに一問一答】
好きな花: 桜(女の化身だから)
好きな作家: ガウディ
好きな作品: サグラダファミリア
マイブーム: 海外旅行計画(せっかく10年のパスポートを再申請したので、これからの10年計画を立てることが楽しみです)

矢井 豊功さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、戸田三知代さん(浜松支部)です。お二人は名古屋の教室でご一緒されていて、矢井さんが研修課程に参加しようと思ったのは、戸田さんのいけられたお花に刺激を受けたことがきっかけだったそうです。今年から講師としてご活躍されている戸田さんの現在の心境をぜひお聞きしたいとのこと。どうぞご期待ください。


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