みんなのいけばな

File No.72

山下 照惇さん 山下 照惇さん 北海道/札幌支部

小原流いけばなと出合い、人生の師と出会い 人々に支えられたお蔭で、今の私があります

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」

楽しい気持ちでお稽古に取り組み
切磋琢磨することですべてが良い方向に向かう

おばあさま宅の向かいに小原流の先生がお住まいだったことがきっかけで、いけばなの道を歩み始められた山下さん。やがて、その出合いは、人生の師との巡り会いにもつながり、日々精進される中で、「いけばなとは花をいけるだけではなく、いけられた花を観る人の気持ちも大切にすること」を学ばれたそうです。雪深い北海道の地で、常に花と真摯に向き合ってこられた山下さんのお話をうかがいました。

研修課程での一言が鮮烈な思い出 病の辛さを感じさせない朝田さんに感銘

 朝田さんとは研修課程U期の時に出会いました。花材取り合わせの難しさに、お声を掛けさせていただいたところ、「今日の花材は、水を意識するのではなく…」と造形にも意欲的に取り組まれている彼女の一言は、今でも鮮明に脳裏に焼きついています。朝田さんを初めとして、自分よりも年の若い方々とご一緒させていただいた研修時代は、とても楽しく、いけ方についてなど話し合いながらたくさんのことを学ぶことができました。

 ご病気を理由に研修課程V期には進まれないということで、辛い日々をお過ごしのようでしたが、体調が少し落ち着かれた頃を見計らってお電話をさしあげた際には、辛くても元気に振る舞われている様子がうかがえ、なんて我慢強い方なんだろうとその姿勢に深く感銘しました。

 研修課程修了後も、幹部講習会や支部長セミナー等の折りに、朝田さんの体調を考慮しつつ再会の機会を何度もかさねることができました。
 北海道は歴史が浅く、本州の古都の美しさにいつも憧れの念を抱いている私ですが、かつて朝田さんにご案内していただいた姫路城では、その姿の美しさはもとより、そこから感じられる歴史の重さに大変感動しました。
 朝田さんとは、本部の行事や小原流の花について、電話やメールでお話しするなど、今も交流が続いています。

祖母と父の支えのおかげで いけばなを学び続けることができました

 祖母の家の向かいに、故・本間 如照 空知支部長(当時)のご自宅があり、「女性のたしなみとしていけばなを習うように」との父の助言もあり、中学生の時にいけばなを習い始めました。当時は、今のように交通が発達していませんでしたから、春〜秋のお稽古は父の車で送迎、冬は積雪のためにお稽古の日は祖母の家に泊まり、翌朝そこから登校していました。
 本間先生は、自然の美しさをとても大切にされ、季節感、花の出生地、環境についてもご指導くださいました。


本間 如照先生(1970年7月 本間先生のご自宅前にて)

 先生は年に一度、三世豊雲家元のご指導を受けるために神戸まで出向いていらっしゃいましたが、私も、地区別研修会や幹部特別指導研修会(昭和61年7月)で、豊雲先生に直接ご指導を賜ることができましたことは、貴重な思い出のひとつです。


三世豊雲家元のご指導を受ける(1961年7月)

 本間先生亡き後は、北川 豊翠先生に師事いたしましたが、大切な二人の師との出会い、睡蓮や河骨・蓮が栽培されている場所が近くにあるというめぐまれた環境の中で学べたこと、また書や茶道との出合いなど、すべてが今も私の中でしっかりと息づいていると思っています。

いけばなへの取り組み方を大きく変えた出来事 基本から学び直すために研修課程を受講することに

 私には、花に対する考え方や取り組み姿勢を大きく変えた、忘れられない出来事があります。今から37年前にさかのぼりますが、滝川を代表する会社の会長のお宅で、床の間に花をいけるという光栄な機会をいただいたのですが、会長から「この花はどのような意味でいけたのですか?」と尋ねられ、恥ずかしながら答えることができませんでした。
 このことがきっかけで、一念発起し、いけばなを基本から学び直そうと小原流の研修課程を受講することを決心。そこであらためて、いけばなの奥深さを知るとともに、いけばなは、花をいける人だけではなくいけられた花を観る人の気持ちも大切にするべきだということを先生方をはじめとするたくさんの人に教えていただき、会長の「我が人生、花を眺めて、石を愛でつつ、茶を喫す」との言葉の深さが理解できたように思いました。
 ありがたいことに、会長宅でのいけこみは今も続けさせていただいておりますが、私がいけばなを語るうえで、欠かすことのできないこの方との出会いにも感謝の念は絶えることがありません。

 

研究院講師への夢の途中で支部長の命をお受けすることに 滝川から花の輪、人の輪が広がっています

 こうして、いけばなの道を究めたいと小原流研究院の講師を目標に研鑽を積んでいたある日のこと、故・木村 耀翠 空知前支部長より「後任をお願いしたい」と打診をいただきました。思いもよらぬ急なことに最初はお断りしたのですが、悩みに悩んだ末、「支部のためにお役にたつのならば」と、お引き受けすることにしました。その際も、前述の会長から「山の一番高いところは険しく、風雪でいつも厳しいけれど、体を大切に頑張るように」と励ましていただいことが大きな支えとなりました。

 空知支部創立30周年、45周年の際は、諸先生ご指導のもと花展を開催。2009年60周年の際は、式典に小原 規容子理事長のご臨席を賜り、研究院助教授・岩田 佳川先生ご指導のもとで記念花展を開催。祝賀会には、たくさんのご来賓ならびに、各支部の皆様にご出席いただき、書と花と箏の共演という晴れがましい日を支部会員の皆さんと一緒に迎えらたことは、感激の極みの一言につきます。


空知支部創立60周年記念花展 出品作品(2009年5月)

 平成26年に空知支部は小原流札幌支部滝川支所となり、現在は、札幌支部の行事や新年会、研究会、みんなの花展、専門教授者研究会などに参加するなど新たなスタートを切り、たくさんの方との出会いにもめぐまれ、心機一転の心持ちでいけばなと向き合っています。

 平成15年文化庁の委託事業で始められた「伝統文化いけばなこども教室」は現在も継続中で、そこで学んだ生徒さんが支所の会員となり、お母さん、お祖母さんへもいけばなの輪が広がっていますし、学校連盟登録校や海外からホームステイ中の方にも、日本のいけばな文化を楽しんでいただく機会もたびたびもうけております。
また、社中を通じて、お寺の婦人部の方が自宅の庭から花を持ちよりいけるなど、花とふれあい、花の輪が広がり、さらには様々な行事の際に挿花を依頼されるなど、うれしいご縁が次々とつながっています。

 あらためてこれまでを振り返り、半世紀以上も小原流いけばなを続けて来られたことを大変うれしく思うと同時に、これもひとえに家族の協力と、お稽古を続けてくださっている支所の皆さんのおかげだと深く感謝しています。
 支部長をお引き受けした際に「楽しい気持ちでお稽古に取り組み、切磋琢磨することですべてが良い方向に向かう」と信じることこそ肝要と、自分自身に言い聞かせてやって参りましたが、これからもその気持ちを忘れずに日々歩んでいきたいと思っております。

 
全道生け花百人展 出品作品(1995年5月)

庭の花を慈しみ、野草との出合いを楽しむ 花々に囲まれた四季を過ごしています

 毎年2mもの雪が降り積もる雪深い滝川ですが、春になると芽吹きの木々の中にフキ・ゼンマイ・コゴミなどを見つけ山菜採りをするかたわら、雪解けの合間に水芭蕉・坐禅草などを初めとする野草を愛で、楽しんでいます。
 庭の花は、一八や燕子花などアヤメ科が中心ですが、一枝・一葉・一花が太陽を受け、自然の中で育っているさまをお稽古の中で伝えることに生かせているのではないかと思っています。6月になるとぎょりゅう・擬宝珠・つる梅もどき・夏櫨なども見頃を迎え、狭い庭ではありますが、雑草取りに追われながら「これも健康の為!」と奮起し、忙しく過ごしています。
 ちなみに、滝川は菜の花の作付け面積日本一といわれており、毎年5月末に“たきかわ菜の花まつり”が開催されるなど、地域文化活動も根強くおこなわれています。


一面の菜の花畑(滝川にて)
【山下 照惇さんに一問一答】
好きな花: 燕子花
趣味: 風景画鑑賞
マイブーム: 古都を訪ねること

山下 照惇さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、船橋 のぶ子さん(青森支部)です。同時期に研修課程を受講したことでお知り合いになられたそうで、当地言葉を大切にされる心優しさを持ちつつ、歴史ある支部の長としていつも凛と支部を支えておられる素晴らしい方とのことです。どうぞご期待ください。


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