みんなのいけばな

File No.59

村上 豊翠さん 村上 豊翠さん 愛媛県/新居浜支部

四代にわたり小原流に傾倒 脈々と続くご縁に感謝しつつ、次の世代へもつないでゆきたい

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

大正時代、大叔父様が小原流いけばなを教えていらっしゃったという筋金入りのいけばなじん。ご自身も12歳からお稽古を始められ、気がつけばお家の中に自然と「いけばなの心」があり、その伝統を守りつつも、生徒さんとフランクなおつきあいをされているそうです。懐かしい写真を交えながら、村上さんといけばなを結ぶルーツを語っていただきました。

姪のための先生探しがきっかけで出会った山田先生 にこやかでパワフルな人柄が魅力

 2007年9月、高校まで私が教えていた姪が嫁ぎ先の大阪でお稽古を再開するにあたり、以前、教室に通っていた生徒が大阪でお稽古していることを思い出し電話してみましたところ、姪の自宅近くで山田先生に習っているとのことで姪もお稽古に通わせていただくことになりました。以来、山田先生と電話や年賀状のやり取りが始まりましたが、ようやくお目にかかれたのは2010年、大阪支部100周年記念花展が開かれていた大阪・島屋でした。
 第一印象の山田先生はとてもかわいい方という雰囲気をお持ちですが、100周年花展の準備等で数日間寝ていらっしゃらなかったにもかかわらず、華やかで明るくにこやかで、とてもパワフルな方だなと思いました。
 現在も変わらず交流をさせていただいております。姪が研究会で95点をちょうだいした際はうれしくて思わずお礼のお電話をしてしまいますし、姪もお稽古の様子や作品の写真を時々メールで伝えてくれています。

お目当てはバスとお菓子 お姉様方の中でしっかりと基礎を学びました


これが私のいけばなのルーツ
大叔父の社中展。お弟子さんも皆さん美しく着物をお召しです

 この古い写真は昭和17年(1942)の社中展のものです。写真の真ん中にいる羽織袴姿の男性が大叔父で、その姪が私の伯母で、その伯母の教室へ、12歳の頃から通い始めました。伯母の家は洋裁店と駄菓子屋を営んでいたので、幼い私はお稽古の際にバスに乗れることとお菓子を食べられることがなにより楽しみでした。伯母は私を子ども扱いすることなく、お姉様方と同じように基礎から熱心に教えてくれ、中学2年生の時の研究会で、木蓮のお瓶花で95点をいただいた時の伯母のうれしそうな顔は50年近くたった今でも忘れられません。
 神戸の短大で寮生活を始めた時も、たまたま裏に小原流の先生がいらしたご縁でお稽古を続けることになりました。伯母の家では常に5〜6人のお姉様方と一緒のお稽古でしたので、幼い私は横眼で作品を見せていただきながらいけていましたが、神戸は個人指導で、先生が斜め後ろに座り、私の一挙手一投足をずっと見ていらっしゃるので先生の視線に緊張し、枝ひとつ切るのもハラハラドキドキしていたことが懐かしく思い出されます。
 ちなみに、写真の大叔父とその奥さんは、阪急六甲でささやかな花屋を営みつつ、大叔父は華道を、大叔母は茶道の教室を開いておりました。その二人の長女である母の従姉妹は、大阪支部に在籍し、故・横東豊瑛先生、現在は横東宏和先生に師事しています。
大叔父の遺品の中には、二世・光雲家元はもとより、池坊専啓家元(43世)のお免状も見受けられました。大叔父は私が生まれた年に亡くなっているので会ったことはありませんが、いけばなへの思いが姪からそのまた姪へ引き継がれ、大叔父の没後63年目にして、小原流ホームページに掲載していただくことを不思議に、お花がつないでくれたご縁と深く感じ入っています。
 お花をいとおしむ気持ちや人の心を打つような花をいけたいと思う気持ちが私だけのものではなく先代から脈々と引き継がれてきたものだとしたら、この思いを私の姪にもぜひ引き継いでほしいと願っています。

 

支部活動での貴重な経験や 弟子たちとの信頼関係も宝物

 新居浜支部創立15周年記念特別講習会で、四世・夏樹家元(当時、副家元)にお越しいただいた際、2日間デモンストレーションの助手をさせていただきました。当時、私はまだ30代、若く未熟な準幹部で至らぬ点も多々あったと思うのですが、夏樹先生は文句ひとつおっしゃらず、素晴らしいデモンストレーションをご披露くださいました。そして最終日、お食事の最中に私の席までお越しくださり、ご自身の花鋏を箸袋に丁寧に包んでプレゼントしてくださいました。思いがけない光栄で、この上ない感激でした。もちろんこの時頂戴したハサミは今でも私の宝物として大切に保管しています。


新居浜支部創立15周年特別講習会にて
(舞台中央が四世家元、左から2番目が村上さん)

 また、花意匠普及のため、工藤和彦先生が松山にお越しになった際には、即興で作品をいけるという大役を仰せつかりました。1,000名を収容するホールのステージで、各支部1名ずつ計3名が選出されたのですが、ステージの皆様に向かっていける稽古を事前に何度も鏡の前でいたしましたが、不安と緊張でいっぱいで、夢中でいけた20分間のことはほとんど覚えていないほどでしたが、仕上がった作品に工藤先生がなんと97点をつけてくださり、私自身が感激したのは言うまでもありませんが、当時の井上和子支部長や伯母、母らが誇らしげな顔をしてくれていたことを覚えています。
 2005年5月には本部より副教務の授与式のご案内をいただきましたが、元来、役職や階級等にはあまり興味のない性分ですので、授与式に出ることを躊躇しておりましたら、50名の生徒たちから「もっちゃん(普段から生徒さんにはそう呼んでもらうようにしています)、授与式にいってきてぇ(愛媛の方言)」と、思いもよらぬ過分なお祝金をもらい、今思い出しても涙が出るほどで、本当に感激しました。
 生徒にはいつも「お稽古を続けられないような結婚相手なら、貴女たちの親が許しても、もっちゃんが許さん(笑)!」と冗談交じりで言っていますが、出産後も子どもを連れて通ってくれている人がたくさん居ますし、小さな子どもが教室にいても、それを理解し受け入れてくれる周囲の思いやりにも感謝しています。


お稽古風景。出産後も子どもを連れてお稽古を続ける人も…

 近年は、生徒が勤務している「愛媛トヨタ」の新車発表イベントで、ショールームに作品を展示したり、ショッピングモールでのホール装飾や、学校の入学・卒業式のステージ挿花、生徒の結婚式でのウェルカムボードやリングピロー作成など、いろいろな形で挿花をさせていただく機会があり、うれしく思っています。


「愛媛トヨタ」ショールーム展示
(左)いつも自由にさせていただき、楽しく取り組んでいます(2010年2月)
(右)主人が散歩途中に見つけてくれた花材を使用しています(2010年2月)

 伝統文化いけばなこども教室の発表会では、小学生の子どもたちに好きな器を持参してもらい、全員違う花材を取り合わせて作品を作りますが、子どもたちの純粋な感性や、迷わず花をいける姿には、たびたび驚かされます。


2007年から続けている伝統文化いけばなこども教室

 市民ホールで開催されたこどもフェスタでは、トピアリーボールに雑誌を貼った造形作品を展示しました。お弟子さんたちの若いセンスと活躍のおかげですばらしい作品ができました。

 
トピアリーボールを使用した造形作品(2008年4月)
裏打ち作業など力仕事では主人が活躍してくれます

 四国中央市には「カイナン」という素敵な花店があるのも自慢です。新居浜支部指導のためお越しくださる先生方を取り合わせ等の打ち合わせのためにお連れすると、皆さん規模の大きさや花材の豊富さに驚かれます。私の作品づくりに欠かすことのできないお店です。


花店カイナン
21歳から教え始めて今日まで週に何度も行くので店員に間違えられるほど

 新居浜は、美しい法皇山脈や穏やかな瀬戸内海に臨む風光明媚で豊かな土地柄ながら、住友金属の祖となる別子銅山、四国中央市には大王製紙やユニ・チャームもあり、意外に工業都市でもあります。支部では準幹部、幹部、副支部長をそれぞれ8年間ずつ務めさせていただきました。現在は家庭の事情で支部のお手伝いは休ませていただいていますが、小原流研究院講師の廣田聡先生、佐伯豊恵支部長のリーダーシップのもと、精力的な活動をしています。

一色を刺すことで変わる世界 戸塚刺繍の学びはいけばなにも生きる

 いけばな以外の趣味では「戸塚刺繍」を15〜16年習いました。いけばなでは蕾から花へと移り変わる美しさ、刺繍では変わらぬ美しさや作品として残せる喜び、生活に取り入れ使用できる楽しさを味わえます。また1本印象的な糸を加えることで、驚くほど作品の印象が変わることがあります。先生がセンスの良い素敵な方で「え〜この色の糸を刺すの?」と驚いても、作品が出来上がった時に、その1本の糸が作品全体を引き締めていることに感動します。それは、自然本位などの作品に鮮やかな撫子の花を一輪加えることで、全体をひきしめることと似ているように思います。

【村上 豊翠さんに一問一答】
好きな花: 撫子
好きな作品: 星野富弘さんの詩集
『暴れん坊将軍』…携帯電話の着信音もこの主題歌。何度も観て、セリフも言えるほどです(笑)
マイブーム: 桜の古木や縄文杉があるような美しい自然を訪ねること

屋久島の縄文杉の前で(1992年)
この頃はまだ木の側まで行けました。4時間半歩いてこの木を見た時、温かいお顔があるように感じました。「今まで長い年月の間にいろいろなものを見てこられたのだろうなぁ」

村上 豊翠さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、飯田 真理さん(熊本支部)。黒のモード感あふれるファッションがお似合いのおしゃれな方で、今年から熊本支部の副支部長としてもご活躍されています。「ルミナリエ」を見るためだけにわざわざ神戸まで出かけられるというアクティブさも魅力とのこと。どうぞご期待ください。


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