みんなのいけばな

File No.55

廣野 豊瞳さん 廣野 豊瞳さん 兵庫県/大阪支部

ワクワク・ドキドキを見つける目はいけばなから 続ける力は励ましてくださった方々から頂きました

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

子どもの頃からいつもお花が身近にあったという廣野さん。尊敬する先生や仲間と出会い、励まされながら、いけばなを続けてこられました。さまざまなことに好奇心旺盛に挑戦し、充実した毎日を送られているという躍動感にあふれるお話をおうかがいしました。

しっかり者なのにお茶目な那須さん 末永く仲良くさせていただきたいです


廣野さん(右)の作品の前で那須さんと
(1998年 いけばな新進作家展会場)

 那須さんと初めてお会いしたのは研修課程T期の会場。モタモタしている私を見かねて手助けしてくださったのが最初で、落ち着いていてよく気のつくしっかりした方というのが第一印象でした。
 あれから20年余り、お人柄はそのままですが、仲良くなるにつれお茶目でかわいらしい面も見せてくださいます。
 大変ご多忙で、休日にお寺などへご一緒しても、お庭の隅でお仕事の電話をされていることも少なくありません。加えて支部のご用からご自身のお稽古までスケジュールはびっしり。その合間を縫って、小原流はもちろん、他流やフラワーデザインの展覧会から美術展、シネマ歌舞伎、神社仏閣めぐりまでお付き合いいただいています。これからも大切なお友達として、末永く仲良くさせていただきたいと思っています。

マンツーマンからカルチャースクールへ 恩師に背中を押され、研修にも挑戦しました

 家族みんなお花が好きで、父は春蘭、えびね、風蘭などの東洋蘭を育てていましたので、植物はいつも身近な存在でした。
 大学進学後、お茶とお花の先生に入門したのですが、生徒はお茶を習う方が多く、お花をされている方はあまりいらっしゃいませんでした。お花は別のところで習おうかと思っていたのですが、先生がとてもかわいがってくださり、結局、お花も教えていただくことになりました。けれどもマンツーマンのお稽古は、他の方のいけ方を拝見する機会がないので心細く、その後、仕事で時間が合わないこともあり、一時中断。あらためて大勢のお稽古を拝見できる木村禮子先生の教室に入れていただきました。
 木村先生は、いけばなじん(File No.20)のとおり、何事にもポジティブ、しかもエレガントで本当に素敵な方です。何より感銘を受けたのは、何十年来のお弟子さんも入門したばかりの私のような者も、公平かつ丁寧に教えてくださったことです。
 いろいろな方のお花を拝見できるのでニコニコしてお稽古に励んでいたある日、先生から「研修に行きなさい。お勉強できて、お友達もできるわよ」とお薦めを受けました。なるほど受講してみると、朝から晩までいけばな漬けの日々は夢のようで楽しくもあり、しかし苦しくもあり。お勉強の方は力不足を感じつつも、お友達は本当にたくさんでき、良い経験となりました。
 また、その研修のため、家元教室で少しの間、故・泉谷豊宣先生に教えていただいたことも懐かしく大切な思い出です。夏の多種挿しで、枝どりをしようと夏はぜを両手に持って眺めていたら、ダダダッという足音と共に泉谷先生が飛んで来られ「こっちが主枝!」とおっしゃいました。私がぶっつり切ってしまい手遅れになる前にと思われたのでしょう。びっくりすると同時に「泉谷先生も走りはるんやわ〜」と吹き出しそうになりました。そしてお手直しいただいた、と言うよりいけていただいたのが下の写真です。あまりの美しさに「うわぁ綺麗!」と拍手をしてしまい、先生は苦笑いをなさっていました。


家元教室で泉谷豊宣先生に教授していただいた夏の多種挿し

木村禮子社中展出品作。覗き込むと花と
葉がゆらめく「桜万華鏡」(1999年)

 花展への初出品は1996年大阪支部青年部公募花展。花材だけが決まっていて取り合わせや器は自由というものでしたので、大好きな木瓜の枝で制作し、パイプ部分に花を一輪いけました。1995年近畿・中部地区青年部作品展では、神戸淡路大震災で割れてしまった鏡を使い、作品に祈りを込めました。2001年芦屋大丸でのみんなの花展では、皆でアイデアを出し、力を合わせて、作品に仕上げる楽しさと大変さを経験しました。
 出品するだけでなく、花展開催を裏方で支える大変さも身を以て体験したことで先生や先輩方のご苦労がわかり、以降はどの展覧会に伺っても手を合わせる気持ちで拝見しています。
 5年ごとに開催されている木村先生の社中展では、「好きなようにしなさい。楽しみにしているから」と、毎回自由に制作させていただきました。また、先生には野外展・マイイケなど、いつも遠くまで応援に来ていただき、「先生のおかげで今日がある」と、どんなに感謝してもしきれません。
 見に来ていただくのは大変なのですが、とりわけ私が好きなのは野外展です。自然の中に作品を置くことで、それまで気にも留めていなかった風や光の存在に気づき、景色が一変する瞬間にワクワクします。
 マイイケは見るのが大好きでしたが、見るのと出すのとでは大違い。何事も参加してみないとわからないことを実感しました。今では東京の友人たちが見に来てくれるので、アイデアが浮かばなくともパスは許されません。

美術館や水族館でエネルギー補給 モノづくりにワクワクする日々を過ごしています


各地でイルカと触れ合っています

挿花「第12回写真コンテスト」優秀賞受賞作

毎年のライフワーク 花遊び年賀状

 宗達や若冲に会いに美術館に出向くこと、カルダーや戸谷茂雄作品などの抽象彫刻を観に箱根、名古屋、広島まで出かけること、イルカやクジラ、クラゲに会いに水族館に行くことが私のエネルギーの補給法です。
 宗達の「舞楽図屏風」を実際に見た時に、屏風として立てた状態でのバランスが計算されていて、本などの平面とは別物だと痛感し、それからは、できるだけ実物に会いに行きたいと思うようになりました。
 子どもの頃から生き物が大好きで、毎週のように動物園に連れていってもらっていましたが、大人になってからは水族館に行くようになりました。イルカはじっと見ていると寄ってきて声を聴かせてくれることもあります。夢は、いつか野生のイルカやクジラに会うことです。

 時間に追われる毎日ですが、挿花で行われている「写真コンテスト」にも手近な材料を使い、身近な場所で撮影して参加しています。これからも都会生活の面白さを探して続けていきたいと思っています。その他お稽古の残り花材と干支カード、ぬいぐるみなどを使い、毎年、年賀状を作るのも花遊びのひとつ。未年からつくり始め、今年の午年で干支を一巡しました。手元の材料だけで何ができるかを考えているとワクワクします。お仕事などで忙しい方も、手間や時間をかけないこんなやり方は、いかがでしょうか。

お花の神様はいる、と信じて… つらい時には、いつもいけばなが支えてくれました

 研修や展覧会、提出締切と家族の病気やケガが重なり、「どうしてこんな時に」と泣きそうになりながらも、逃げることのできないつらい時もありました。今になって振り返ると、頑張らざるを得ない「お花」があったからこそ、つらい時期を乗り越えられたのだと思えますし、そうでなかったら心配や不安で押しつぶされていたかもしれません。あらためて「私には、お花があって本当に良かった」とつくづく思います。
 お花の神様は意地悪で、なかなか上手にはいけさせてくれませんし、おもしろい作品づくりの手助けもしてくれません。でも、ここぞという時にはそっと手を差し伸べてくれる…そう信じて、これからもマイペースでお花を楽しんでいきたいと思っています。

【廣野 豊瞳さんに一問一答】
好きな花: 蓮、桜
花はもちろん、散っても枯れても四季それぞれの風情が好きです。
好きな作家: 幸田 文
好きな作品: 『木』『きもの』
『木』を読んで縄文杉に会いたくなり、屋久島まで行きました。
マイブーム: 佐野藤右衛門さん
お話が奥深くて面白く、思わず本を買いに走りました。
今年の桜を見る目が変わりそうです。

廣野 豊瞳さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、佐々木 泉凰さん(福井支部)です。うっとりするような美しいお花をいけられる、穏やかで優しい素敵な先輩とのことです。どうぞご期待ください。


←File No.54 いけばなじんトップへ
いけばなじん
いけばな教室訪問記
いけばなこども教室
いけばな特派員
いけばな小原流公式サイト



HOME

プライバシーと著作権について