みんなのいけばな

File No.49

辻 由美子さん 辻 由美子さん 鹿児島県/鹿児島支部

奥深い文化としての「いけばな」に感動 今を一生懸命に生きながら学んでいきたい、私なりのいけばな道

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

 花を思う時、辻さんの頭に浮かぶ原風景は子どもの頃、おばあさまが丹精込めて庭に植えていた花たち。勉強を重ね、フラワーデザインで実績を積んでこられた辻さんが出合った小原流いけばなには、それまで持っていた花に対する認識とは違う奥深さがあったといいます。紆余曲折しつつ、今はいけばなにぞっこんだという辻さんの、これまでとこれからをお話しいただきました。

周囲への気配りを忘れない山本さん 心からいけばなを楽しむ姿に元気をもらいます

 山本さんに初めてお会いしたのは、2010年6月の研修課程T期の時。すらりとした長身で「クールな美人」というのが第一印象でした。研修中は緊張の連続でしたが、日を追うごとに周囲の皆さんとの会話も自然に増え、山本さんとも夕食をご一緒するようになりました。自分のこともきちんとやりつつ、花の保管場所を掃除したり、他の人の分までお茶を入れたりといった彼女の細やかな気配りにたびたび驚かされ、研修で頭がいっぱいだった私にはとても頼もしい存在でした。

 再会するたびに、山本さんから花に対する情熱や、いけばなを心から楽しんでいることが伝わり、私まで励まされて元気になります。名古屋と鹿児島と離れているので、おつきあいはもっぱらメールのやり取りですが、それだけにお会いする時は楽しみです。これからもお互いに切磋琢磨できる大切な友人でありたいと願っています。

祖母の影響で花への興味が生まれ、資格を取得 フラワーデザインの世界で経験を積みました


全国都市緑化かごしまフェア
花かごしま2011・青年部造形展タイトル「hope」
(2011年4月)

 子どもの頃は大好きな祖母が庭に育てていた花を見て育ちました。赤いカンナやキンセンカ、テッポウユリなどが咲いていたことを覚えています。そんな祖母の影響か、花が好きで、好きなことを仕事にしたくてフラワーデザインの勉強を始めました。事務員をしながら夜はフラワーデザインのスクールに通い、週末は資格試験の勉強に励みました。その甲斐あって日本フラワーデザイナー協会(NFD)1級資格を取得、関西で念願だった花の装飾ディスプレイの仕事に就くことができました。
 勤め先はイタリアのフラワーデザイナーを起用した造花の代理店で、デザインと花の営業が主な業務。初めて手掛けた大きな仕事が宝塚歌劇場だったのですが、緊張のあまり眠れない日々が続いたほどで、今でも思い出すたび、あの時の気持ちがよみがえってきます。百貨店やホテルなど華やかな空間に合わせてデザインを提案するのは本当に刺激的で貴重な体験でした。その頃、仕事のアイデアを見つけるため花展に足を運んだり、本を調べるうち「いけばな」に興味を持ち、同僚がいけばなをしていたこともあって、いつか習ってみたいと思ってはいましたが、仕事に追われてなかなか実現には至りませんでした。
 その後、父の闘病をきっかけに地元に帰り、看病を手伝う一方で、結婚。お花の教室と装飾の仕事をしながら、年に1回小学校でフラワーアレンジを指導する「花とのふれあい授業」のボランティアなどをしていました。

高校生に教えるうち、いけばなへ回帰 多様で奥深い文化や歴史に驚かされます


生徒達からの元気をもらえるメッセージ

 そんなある時、フラワーデザイナー協会から、農業高校でのフラワーデザインの非常勤講師のお話をいただきました。高校生に教えるのは初めてなうえに、限られた予算の中、週2時間を1コマとする履修課程を組み立てるという責任の重い仕事で、引き受けるかどうか悩みましたが、やりがいもあると思い、チャレンジすることにしました。日ごろから生産者や植物に関わっている生徒たちですが、生活に役立つ花の知識を身につけてほしかったので、生花だけでなく造花のコサージュや押し花なども授業に取り入れました。卒業式のコサージュを制作した時は授業を選択している生徒より卒業生の人数の方が多く、放課後遅くまで残って全員の分を作ったこともありました。フラワーデザインは生花店で花を購入してアレンジすることが多く、庭に咲いているような身の周りの植物を使って指導することは準備の面で難しい問題でした。

 身近な植物で花を飾れる方法を伝えたくて、少ない花材でも作品をつくれるいけばなを取り入れたいと思っていた矢先に江川叶先生の琳派のデモンストレーションを拝見する機会がありました。江川先生は私が所属するフラワーデザイナー協会の講師なのですが、いけばなをされていることはその時まで知らず、さっそく江川先生にいけばなの指導をお願いしました。
 残念なことに先生は2012年他界されましたが、博識で常に新しいものを積極的に取り入れる姿勢など本当に多くのことを学ばせていただきました。

 その後は、専門教授者をめざし、坂元由紀美先生のご紹介で鈴木査智子先生にご指導を受けることになりました。鈴木先生のお教室には遠方から通われるベテランの先生方も多く、小原流のさまざまな花を拝見できるので大変勉強になります。
 最初は花の向きや空間の取り方などがアレンジメントと違い戸惑うことばかりでしたが、先生の「魔法の手」が入ると自分の作品がたちまち洗練され、今でもお稽古のたびにその表現の多様さや素晴らしさに驚かされています。また鈴木先生は、お花だけでなく、その背景にある文化や歴史についても教えてくださいます。
 フラワーデザインでは花を材料として仕事をしてきた私ですが、いけばなの奥深い花の世界を学ぶことに終わりはないのだと日々実感しています。技術的にはまだまだですが、自分なりに花をいけることを楽しめるようになりたいと思っています。


みんなの花展 初参加(2008年2月)鈴木先生の作られた素敵な器にいけさせていただきました

花を学んだからこそ出会えた魅力的な人たち 家族に支えられて、今を精一杯頑張っていきます


九州地区青年部野外展にて個人で初参加。
タイトル「開」(2009年5月鹿児島桜島)

九州地区青年部野外展。タイトル「こもれび」
(2013年4月宮崎県綾町)

 鹿児島支部は北部・中部・南部に分かれており、毎年春と秋に連合花展とみんなの花展を交代で開催しています。私の所属は中部で、2013年は秋の花展を担当する予定です。4月に宮崎で九州地区青年部野外展が開催された際も鹿児島支部からは個人作6点を含む8チームが参加し、作品制作や懇親で他県の皆さんと交流しました。

 2012年夏には山形屋百貨店の玄関花で写景をいけさせていただきましたが、先生方のご指導のもと、日々変化する花をどう見せるか考えながら過ごした1週間はとてもよい経験になりました。
 鹿児島支部創立60周年記念花展から準幹部として活動していますが、仲間たちとチームワークを発揮し、研究会準備から青年部野外展まで楽しく参加しています。

 家庭では、美術館と本屋さんを巡るのが夫婦共通の趣味です。短い休みでも関東・関西方面に旅行して美術館や神社、庭園などを観に行きます。どこでどんな展覧会があるかを前もって入念にチェックし、1日で3〜4ヶ所のはしごは当たり前。朝から行列に並ぶ時間を短縮するために前夜はホテルで作戦会議をしたり、夢中になりすぎて朝食後から夕方近くまで食事抜きでお腹がすいて困ることもしばしば。最近では、琳派などの日本美術やフェルメール、ゴッホ展などが強く印象に残っています。

 非常勤講師をしていた頃、生徒に「花を勉強して将来何の役に立つのか」と質問されたことがありました。やりたいことがあっても家族の事情でそれができない時期もあります。だからこそ、今を精一杯充実させたいと思うようになりました。質問の答えはひとつではありませんが、「ただ技術を高めるだけではなく、花を通じてたくさんの魅力的な方々と出会えることも大切なのよ」と伝えていきたいです。支えてくれる家族に感謝しながら、これからももっと花の奥深さを学び続けたいと思います。


山形屋の玄関花(2012年7月)

毎年1回花供養に行きます。鹿児島支部有志一同(前列左端から辻さん、2番目・鈴木査智子先生)

力仕事も頑張ります!準幹部の仲間達と(辻さんは右端)
【辻 由美子さんに一問一答】
  • 好きな花/白梅、秋明菊
  • 好きな画家/ジャクソン・ポロック
  • 好きな作品/インディアンレッドの地の壁画
  • マイブーム/図書館で小原豊雲著『花の心』を読んでから小原流の古い書籍を集めたり、リラックスするための簡単ストレッチをいろいろ試すことです。

辻 由美子さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、杉本 豊祥さん(東京支部)です。2011年の研修課程U期が最初の出会いで、同じ花材でお花をいけても堂々としていて豪華、ですがご本人は気取りがなく会話が上手な素敵な方ということです。どうぞご期待ください。


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