みんなのいけばな



File No.31

田邉 史優さん 田邉 史優さん 熊本県/熊本支部


いけばなと詩吟、一心に打ち込んで30年以上。教えることから学びながら、美しいものを見出す日々が続いています。

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

高校入学の記念にいけばなのお稽古を始められた田邉さん。「向いていないのでは」と悩む日々を経て、恩師や先輩に背中を押されるように頑張ってこられました。美意識として共通項の多い詩吟にも励まれ、いけばなと詩吟を、人生を彩る両輪としてひたむきに続けておられる田邉さんの、これまでとこれからをうかがいました。


謙虚だけど意見はストレート。花の知識経験も豊富で尊敬しています。
 2008年、研修課程U期の初日に伊藤さんと初めてお会いしました。ベテランの先生方が多い中、伊藤さんも私もまだ教えていない≠ニいう共通点がありました。「研修は勉強しに行くところだから、友達は作らないぞ」と妙な決意をして臨んだのですが、夕食をご一緒した時、あまりに話が弾んで楽しく、すぐ考えを撤回しました(笑)。
 伊藤さんは本当に謙虚な方で、私がずっと前からの知り合いのようにずけずけものを言っても、いつも受け流してくださいます。まさに彼女の人徳です。しかも私と同じ凡人かと思いきや、実はお嬢様で頭もよく、努力家でもありました。オランダでのお話は聞いていましたが、さらっと語っていらしたので、前回の「いけばなじん」を拝見し、すごい経験をされているんだなあと、改めて尊敬しました。
 昨年から研修課程V期がスタートしましたが、そこでも彼女とご一緒しています。研修期間中はお互いの花を見て批評したり褒め合ったりしています。 U期の時、まわるかたちをいけて見てもらったところ「ちっちゃ!!」と単刀直入に一言。このエピソードを他の方にしたら、皆さん大笑いしました。それほど彼女らしいストレートな表現だったのですね。よそおいをいけた時には「花をもう1本加えた方がいい」とアドバイスをくださいました。お花屋さんにお勤めなので、花の扱いはさすがだなといつも感心しています。

熊本市立現代美術館の常設いけばなコーナーに初めて出瓶(2011年5月)


落ち込んだり喜んだりした潜伏期間30年。今は準幹部としてさまざま挑戦しています。

 いけばなは高校に入ってから習い始めました。友達に「入学の記念に何か習おうよ」と誘われたのがきっかけです。松岡史先生が私の母の友人で、お花を教えていただくことになったのです。一時は友人4人組で通っていましたので、先生のご自宅の近くの神社でお菓子を食べたり、ひとしきりおしゃべりをしてからお稽古に行くのが楽しかったですね。
 豪快な先生でしたが、残念ながら私が結婚する頃にお亡くなりになり、同時期に今の師である吉田佳翠先生を紹介していただきました。実は松岡先生に師事していた頃、先生に言われて、一緒にお稽古していた方を帰りにお送りしたのですが、その方に主人を紹介していただきました。お花を習ったおかげで結婚できたというわけです!また、偶然にも松岡先生のご命日と私の誕生日、吉田先生の誕生日は同じ日。毎年吉田社中でお誕生会をしますが、在りし日の松岡先生を思い出す日でもあるのです。当時の友達はみんなお花をやめてしまいましたが、今も変わらず交流はあり、花展の時には見に来てくれます。

熊本の華人展に社中の方と二人で出瓶。実家の庭の苔を剥いで苔玉をつくりました(2009年3月)
 研究会で85点が何度か続いた時は、「自分にはお花は向いていないのではないか」と落ち込み、やめようと思ったこともありました。でも、長く続けていると嬉しいこともあるものですね。地区別に行き始めて10年目の頃、思いがけず優秀賞をいただきました。自分自身も先生も「信じられない!」といった感じで、神様のプレゼントだと思いました。しかも翌年も優秀賞をいただき、これはもう「お花を続けなさい」という神様のお達しだと! 本当に天使が一瞬舞い降りたような2年間でした。今はまた、天使はどこかに旅立ってしまったようです(笑)  
 とにかく私は綾小路きみまろさん並みに「潜伏期間30年」で、今までは花展にもあまり出品したことがありませんでしたが、ここ数年はいろいろなところに出させていただいています。今は研修に行っているので、自分で花型を決められる時は勉強を兼ね、研修で合格していない花を出品するようにしています。今まで出してこなかった分、何事も経験と思い、お話があればどこへでも出向き、恐れずに挑戦しようと思っています。
  支部のお手伝いも3年前までしたこともなかったのですが、準幹部になり実際やらせていただくと、先輩の先生方がいかに長い間支部を支えてこられたのかを実感し、感謝するばかりです。

研修課程U期3年目、文人花を合格していなかったので(というわけでもないのですが)出瓶 (2010年9月 熊本市藤崎八幡宮 秋の大祭に献花)


小原流を教える立場として準備は手抜きなく。教えることで感動することもしばしばです。


 研修に行き始めた翌年、吉田先生の市民センターでの自主講座を引き継ぐことになりました。先生が「教えればもっと上手くなる」と教室を任せてくださったのです。そもそも研修を受けることになった時も吉田先生のアドバイスで研究院講師の宮原尚美先生をご紹介いただきました。吉田先生のお計らいには本当に感謝しています。以前は「教えるなんてとんでもない」と思っていたのですが、このお話をいただいた時は変に自信があり、「大丈夫、できる」と思えたのです。
 自主講座の生徒さんは45歳から86歳までの16名。月2回、毎回2時間のお稽古です。私より年上の方が多く、お花のことも詳しいので、正直最初は少し不安でしたが、お稽古している年数は私の方が長いですし、小原流のお花は私が一番理解していると自信を持って指導するように心がけています。もちろんそのための下調べや準備も手抜きしないようにしています。教える者としては駆け出しで、ついお花に集中してしまって黙りがちになるので、黙って手直ししないよう注意し、良いところは大いに褒めるようにしています。生徒さんたちを見てすごいなあと感動することもしばしばです。
 つい先日、受講生の方が「この頃お花が楽しい。花が枯れて変化していく様子を見るのも楽しい」とおっしゃるのを聞き、花が嫌いになられないよう頑張ろうと改めて思いました。また市民センターの展示コーナーでは受講生の作品を1作名札を出して展示しているのですが、年配の生徒さんの作品を展示したところ後日県外から帰省中の娘さんを伴ってわざわざ見にこられたと伺い、私まで嬉しくなりました。
 自主講座は昼の部だけですが、以前はあったという夜の部も復活できればと思っています。

市民センターの発表会。「一人一作自分でいける」を目標にしています。皆さんの温かい眼差しに見守られながら手直ししています。(2011年3月)

精神はいけばなにも通じる「詩吟」若い人たちにどんどん伝えていきたいです。


 いけばなと並行して詩吟も続けています。短大の部活動で始めたのですが、詩吟というと年寄りくさいイメージがあるためか、入学式で「詩吟部」と知らされず勧誘され、半ば騙されて入ったようなものです。しかし、やってみるとすぐにはまり、鼻歌も詩吟になるほどでした(笑)。
 いけばなを習っているということで吟に合わせてお花をいけたこともあります。当時は全国的に詩吟が盛んで、熊本県内にも三大学に詩吟部がありました。九州、全国と学生詩吟連盟なるものがあり、交流も図っていましたが、現在は県内に詩吟部を持つ大学はありません。
 短大卒業後は週に1回、先生について勉強を続けています。自宅ではお花をいけた部屋で自主練習しています。とても贅沢な時間です。
 年5回ほどのコンクールの他、さまざまな大会がありますが、その際は、詩吟の技量に加え、所作や服装も審査の対象となります。うまくいくことはなかなかなく、コンクールに落ちるとがっくりしますが、「焦らずくさらず諦めず」をモットーに30年以上続けています。続けている理由の1つに人間関係の大きさもありますね。少しお休みしている時に先生から「そろそろ出ておいで」とお電話をいただきました。そのままお電話がなかったら今頃行かなくなっていたかもしれません。何かとよくしてくださる先生や先輩方とのご縁を大事にしています。
 詩吟にはお稽古始めにいつも唱和する「朗吟信条」というものがあります。
一 一心になりましょう。
一 詩歌を吟じて楽しく生きましょう。
一 詩歌を吟じて美しいものを見出しましょう。
 この精神は、このままいけばなにも置き換えられます。
 とっつきにくいのか、今は詩吟をされている若い人はあまりいませんが、やってみると楽しいですよ。
 いけばなも詩吟も、実際にやっている私たちが「楽しいよ」と周りに伝えることが大切だと思ってます。今まで先輩方にかわいがっていただいた分、これからは私たちが若い方々を支え、励ましていく番ですので、頑張っていきたいと思います。

前で手を組み、足を少し開く。詩吟のコンクールはいつもこのポーズで臨みます。 着物も自分で着ています。(2011年 吟初め会)

「枯なでしこジャパン」毎年体育の日は友達とレディースサッカー大会に出場。素人集団なので珍プレー続出、夜はそれを肴に反省会で大笑いの一日です。(後列右端が田邉さん)

【田邉 史優 さんに一問一答】

好きな花/フリージア
好きな作家/浅田次郎
あまりにもポピュラーで読んだことがなかったのですが、大阪の研修に行く時、熊本空港で文庫本を買って読み、これは売れているわけだと思いました
おすすめの本/『椿山課長の七日間』
とても面白くて周りに話したところ、映画化されていると教えられました
マイブーム/断捨離
捨てるのが一番片付きますが、後で後悔することもしばしばです
その他/ただ今仕込み中
私はいけばなを長く続けているだけが取り柄で、今頃「仕込み中」なんて遅いかもしれませんが、まだまだ使えます。これからの私に期待してください。

近所の食堂の看板ですが、今の私の説明のように思えるので撮影してきました。標準語に直すと「今、一生懸命仕込みをしています。少しお待ちください」という意味です。小原流のお役に立てるようがんばります。

田邉史優さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、高鍬恵都子さんです。背も高くカッコいいのに、気さくに話し相手になってくれる、若くして大活躍している方、12月にはご長男をご出産され、充電期間を経てますますパワーアップが期待されていますとのこと。どうぞご期待ください。

 


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