みんなのいけばな



 
File No.30

伊藤 聖子さん 伊藤 聖子さん 千葉県/千葉支部


『菊三種いけ』に感動し、いけばなの道へ。オランダの博覧会でヨーロッパの花文化やテクニックも学びました。

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

 妹さんの友人のお母様が小原流いけばなの教授者だったことからいけばなを習い始めた伊藤さん。今ではホテルのインショップに勤務し、いけばなの枠を超えた装花の世界で活躍しています。尊敬する恩師と良き仲間にも恵まれ、自分らしく花と向き合う日々やオランダの大規模な花の博覧会『フロリアード』での貴重な体験などをうかがいました。


お話しするたびに勉強になる良き先輩。後で知り合いの知り合いと知って驚きました。
 秋元さんとは、4年前、研修課程U期で初めて出会い、鹿児島支部の方と知って、お話しするようになりました。
 実は、2002年のフロリアードの時、指宿のお花屋さんの方と知り合って仲良くなったのですが、その方も小原流を学ばれたことがあり、現地で開催した「いけばな教室」の時も協力いただいたのです。ある時小原流の話になって、そこで偶然、秋元さんともお知り合いであることが判明し、大いに盛り上がり、秋元さんについていろいろと話を聞かせていただきました。
 小原流での活動をお聞きする限り、年齢は私とそれほど違わないのに、「ベテランな方」という印象でした。キャリアに裏付けられたお花への深い造詣には、今でもお話しするたび勉強になります。資料のまとめ方にも刺激を受けますし、幹部としての仕事ぶりや小原流とのかかわりなどを聞いて、いつも頭が下がる思いです。本当に良き先輩だと思っています。
 現在は年2回、研修課程V期の会場でお会いします。そのときには食事をしながら、また休憩時間にも、いけばなの話をはじめ、秋元さんが手掛けていらっしゃるビオトープ、また樹木医のお話などを聞かせていただいています。

友人の結婚式の時に制作したブーケ


支部創立50周年花展でまさかの大失敗!逆に人の温かさを知った思い出でもあります。

 たまたま妹の友人のお母様がいけばなを教えていらっしゃるという話を聞いて、中井豊千先生の門をたたきました。以前から花には興味があったのですが、初めて様式の菊三種がいけてあるのを見て、「菊といえば仏花のイメージが強いのに、こんな華やかに生まれ変わるか」と、いけばなの素晴らしさを実感したのです。1本だけで見る花のイメージが、いけ手の思いでどのようにも変身するものだとわかり、感動したのを憶えています。
 中井先生に師事して1、2年がたったころ、カルチャーセンターに新しく中井先生の教室がオープンし、そこの生徒としても通いだしたのですが、先生の「花の取り合せの勉強になるから」というご配慮から、使用する花材を考えさせていただくようになりました。季節感のある花をどう取り入れていくか、いけばなで使う花の向き不向き、扱いやすい花はどれかなど、あのころに勉強させていただいたことは今も役立っています。カルチャー教室の仲間でバーベキューをしたり食事会を開いたり、さまざまな交流ができたことも楽しい思い出です。
 こうしていけばなの奥深さに触れていくにつれ、逆に自分の無知や勉強不足を思い知りました。基本がいかに大切であるか、花の扱いや他人様に教えるということの難しさなども日々感じていますが、迷った時は先生の教えを活動のよきお手本として現在も頼りにさせていただいています。
 思い出といえば、三級家元教授のころ、研究会で100点をいただいたことが頭に浮かびます。自分には無縁の世界の出来事だと思っていたので、本当に嬉しくて興奮しました。
 また、千葉支部創立50周年花展という大きな花展に初めて参加させていただき、他の社中の方々とお話ししたり、花展の準備を一致団結してできたことなども懐かしい思い出です。実は、準備の最中、お花をいけているとき転んでしまって皆さんにご心配をおかけしました。私自身は他の方のお花は大丈夫だったか、花器は割れていないかなど、泣きたくなるほど動揺していたのですが、社中の先輩方や一緒にいけていた皆さんはまず私の体を心配し、温かい言葉をかけてくださいました。いろいろ失敗はしましたが大事にいたらず、大盛況のうちに花展が終了したことが一番印象に残っています。現在は週末に仕事を休めないため、みんなの花展や文化祭などに時々参加する程度で、大きな花展にはなかなか参加できず申し訳なく思っています。


花の世界をさらに幅広く知るため就職。お客様やホテルのご要望に応えています。


 いけばなを習い始めてもっと花のことを知りたくなり、日比谷花壇に就職しました。仕事では花の扱いがいけばなよりアレンジメントの世界に近いので、最初は戸惑いもありました。足し算で花をいけていく「アレンジメント」に対し「いけばな」は引き算の芸術と言われていますが、どちらも初心者だった私はその違いにも右往左往しました。今はテクニックに違いはあっても誰が見てもきれいな作品の善し悪しには差がないことがわかります。
 以前はホテルの中にあるフラワーショップで店頭業務のほか、花束やアレンジ、鉢物の販売を行っていましたが、現在は披露宴会場の装花やウェディングブーケなど結婚式に関わる装花部門を担当しています。制作、セッティングまで打ち合わせを重ねながらご注文に応じた装花を行います。また、ロビーを飾るお正月やクリスマスの装飾装花、宴会場の元卓装花、壺花を任されることもあります。
 花は生き物ですから、いけ始めてから完成してお客様に見ていただくまでは常に時間との闘いです。一見優雅に見える花の世界も、体力勝負だということを痛感します。
 先日、提携しているホテルからいけばな教室開催のお話をいただき、一般の方を対象にした教室を開きましたが、初心者対象として、花材や講義内容など、準備の大切さを改めて感じました。取り合わせや技術面では中井先生にお世話になり、準備に関しては社中の方々にも手伝っていただくなど、よき仲間に恵まれたからこそ、無事に乗り越えることができたと思っています。ホテルからもご好評をいただき、来年には春の花をテーマにしたいけばな教室の開催を企画することになりました。
 今は恒常的に生徒さんを持つことができないのですが、将来的には自分の教室を開きたいと思っています。

2011年夏、ANAクラウンプラザホテル成田で開催したいけばな教室

10年に一度の花の博覧会に参加。オランダで1カ月貴重な経験をしました。


  秋元さんとお話をするきっかけとなった「フロリアード」は10年に一度オランダで半年にわたって行われる花の博覧会です。各国のトップフローリストが自国のブースを個性豊かに彩ります。また各国の文化を伝えるブースもあり、何度足を運んでも楽しめる博覧会です。
 開催都市はオランダ国内で変わりますが、私が参加した2002年はアルスメールというオランダ中心部の町で行われました。8月の1カ月間現地に滞在し、日本のブースでいけばな教室と花の展示をさせていただきました。
 いけばな教室はフロリアードに遊びに来た方々を対象にしたもので、1回3名の公開レッスンです。英語もオランダ語も堪能ではなかったので、語学に詳しい友人に手伝ってもらいながらのレッスンでしたが、受講された方や見学に来られていた方々にも好評で、レッスン用として用意していた花がほぼ2時間でなくなってしまうほどでした。また、週末にはボランティアとして、日本ブースで大型展示品のお手伝いもさせていただきました。5uほどもある大きなスペースでの展示だったので、花をいけるというより土木作業のような力仕事で、筋肉痛が絶えなかったのを覚えています。地面に芝を張ったりチップを撒いたり、花も100本単位でどんどん挿していく…しかも作業は営業時間が終了してから次の営業時間までの深夜。思えば花展の準備と同じなのですが、当時は未経験だったので非常に驚きました。

フロリアードの日本ブース内にある和室にていけばなレッスン

大勢の方が見学する中でのいけばな教室
 開催国オランダは花が生活の一部で、花を家に飾ることは当たり前。現地で調達する花を探して歩きましたが、市場だけでなく町のいたるところに花屋さんがありました。ほとんどはオープンスペースに勝手に花を並べて売っているのかと思うほど簡単なお店ばかりでしたが、花の種類はさすがに豊富でした。

フロリアードの大物展示。お手伝いした日本ブース作品

一ヶ月のお手伝いを終えて帰国前にスタッフの皆さんと記念撮影。日本ブース大型展示品の前で
 ところが、日本のような枝ものはほとんどないのです。「たてるかたち」を教えるための適した素材を探すのに苦労しました。日本では当たり前に目にする“竹”もオランダにはありません。それだけに新鮮だったのか、竹が大変人気を集めました。
 また、フラワーアレンジメントの先進国であるフランスの作品には衝撃を受けたことを覚えています。モダンなデザインもさることながら、テクニックや異素材との組み合わせなど、造形的観点からも勉強になりました。
 次の開催はオランダ南部のフェンロー市で来年、2012年4月から7月まで。私が現地に行くのかどうか、まだわかりませんが、伝統文化を発信する場になってくれればと思っています。

フロリアードの日本ブースに飾られたいけばな作品

【伊藤 聖子 さんに一問一答】

好きな花/ミモザアカシア
好きな作家/堂場舜一、宮部みゆき 
おすすめの本/堂場舜一の『刑事・鳴沢了』シリーズ
一昨年、同氏の小説に出合い、シリーズをはじめ、同氏の作品を一気に読み進めました。
マイブーム/韓流ブームに乗っています。といっても、歴史シリーズが好きなので、ちょっと主流ではないかもしれませんが、韓国の魅力にどっぷりはまり、韓国古代史の本を読んだりしています(日本語ですが)


伊藤聖子さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、田邉史優さんです。「明るく活発でお話ししていて元気になる楽しい方、いけばなへの造詣も深く、研究熱心で独自の発想力を持った尊敬できる方」とのこと。どうぞご期待ください。

 


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