みんなのいけばな



File No.27

福士 春水さん 福士 春水さん 神奈川県/横浜支部


モノ作りとは毎日の生活に欠かせないエネルギーの源。いけばなや茶道の中に息づく「型」の美意識に魅力を感じます。

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

 今回は、前回の伊東豊遊さんから「何事にも熱心ですごい集中力をお持ちなのに、見かけは飄々とされている方。マイイケ友・研修友・ブログ友の間柄です」とご紹介いただいた福士春水さんです。溢れんばかりの好奇心でどんどん世界を広げておられる、まさにクリエイティブな生活をお話しいただきました。

個性的な作品に圧倒された出会い。近寄りがたい存在から近況報告をするまでの仲に。

 伊東先生との出会いは作品から始まります。研修課程T期で先生がいけられた『瓶花の自由』にはただただびっくりしました。とても個性的な作品で、「大阪には凄い方がいらっしゃるんだなあ」と思いました。私だけでなく、研修仲間の間でも共通の記憶として今でも必ず話題にのぼり、お酒の席で盛り上がるほどです。
 その時のインパクトが強くて、最初は近寄りがたい感じでした。その後お話する機会があり、そのうちに三世豊雲先生とのお稽古の中で『瓶花の自由』ができたことを伺い、納得しました。造形作品への取り組みやこだわりなど、私とも通じるものがありました。今では支部展を行き来するようになり、2008年の横浜支部展で、四世夏樹先生のシルエットに感激していただいたのはうれしかったです。専科の受講後は、時間があればお会いして近況報告などもしています。また、伊東先生のブログでは「横浜特派員」として横浜方面の花展や受講した専科での様子などを投稿しています。何かあればメールでもやりとり。インフルエンザが流行してマスクが不足した時には「送りましょうか」、地震があると「大丈夫ですか?」など、いつも気にかけていち早くメールをくださいます。そして趣味ではKinkiKidsの“おっかけ”として全国各地、遠くは香港までコンサートにかけつけるそのバイタリティに頭が下がります。

横浜華道協会 横浜名流華道展(2009年 横浜島屋)


さまざまな出会いから小原流いけばなへ。
新しいジャンル「造形作品」に夢中になりました。

 中学入学後、1年間は部活で華道部に所属しましたが、他流派でしたし、2年生の時に転校したので、その後はご縁がありませんでした。就職して仕事を教えてくださった先輩が職場の華道部の部長をされており、勧められて断りきれずに参加したのが小原流との出合いです。始めてみると中学時代とは違い、家でいけても喜ばれるし、とにかく楽しくて、半年後に職場が変わった後もその先輩が退職されて廃部になるまで通いました。その後は先生のお宅に通い始めたのですが、先生が教えておられた地区の青少年センターの講座から移ってくる後輩もでき、先輩に囲まれ窮屈だった職場のサークルとは違う楽しさも覚えました。現在、後輩たちはご家庭の都合でいけばなからは離れていますが、今でもお付き合いは続いています。
 先生のお宅に通い始めた頃、出合ったのが造形作品でした。先生がビニールの簾を切ったり曲げたり纏めたり、伺うたびに形の違うものができているのです。小学生の姪御さんの宿題か何か?と思っていましたが、先生からご案内いただいた展覧会に行くと、そのビニール簾の作品が展示されているではないですか。いけばなにこのようなジャンルがあると知り、昇級すればできるのではと密かに期待しました。
 ところが先生がご病気で亡くなり、どうやって続けていけばいいかと思っていたところ、職場の先輩に紹介していただいたのが横浜支部長の井上香瑛先生でした。すぐに支部展があり、私も造形作品のコーナーに出品させていただくことになりました。横浜研美会にも入れていただき、知人の穴窯で焼いた陶板を使って作品を出品させていただいたりもしましたし、井上香瑛先生と出会わなければ造形作品の制作にこれほど夢中にはならなかったでしょう。ご紹介いただいた先輩、私を入れてくださった先生に感謝しています。

横浜研美会出品作品 知人の穴窯で焼いた陶板を使って(1991年 横浜島屋)。
 造形作品の創作では、素材からイメージを膨らませ、まず形を考えます。組み合わせや見る方向(どちらを正面にするかは、往々にして本人の意思と異なることがありますが)などを考えている時が一番楽しいのかもしれません。日常生活でも、素材や組み合わせについては常に好奇心いっぱいです。駐車場のフェンス、落花生、陶芸の失敗作品、道端に転がっている木柵、夏にはがれ落ちる街路樹(ポプラ)の皮、畑でできたシシトウガラシなどもマイイケバナの素材になっています。
 廃棄物の集積場所や道端を目を皿のようにして歩いたこともあります。友人と「このごろないよねえ」と嘆きながら見つけた時の喜び!またどうやってもって帰るかの算段をしたことも懐かしく思い出されます。
 1999年のマイイケで受賞した作品は、借りていた駐車場にあった、ほどよく錆びたフェンスと土を組み合わせたもの。「鉄が土に戻っていく」との講評をいただき、思わずフェンスに感謝しました。

マイイケバナ フェンスの枠・土・石・木賊(1999年)

マイイケバナ ヒマワリの種・コーキング材(2011年)
 最近一番嬉しかったことは、6月に開催された「みんなの花展 マイ・オリジナル」で、30年ほど前に初めて支部展に出品した器をコラージュしたことです。当時の花材は忘れもしないヘゴゼンマイとエピデンドラムで、用意された茶色の陶器の器をどう組み合わせたらいいか本当に困ったことを思い出します。今回は“リベンジ”ではありませんが、金斗雲をコラージュし、カラタチを黒に着色して、井上先生のご指導でご用意していただいたピンクの大きな花を入れて完成。先生の素晴らしいご指導に感謝、感動いたしました。

マイイケバナの出品者仲間と理事長を囲んで(2001年)

みんなの花展 横浜支部「マイ・オリジナル」展 新しい試み うつわに創作 金斗雲をコラージュ・カラタチ・シャクヤク(2011年6月)


日本独自の文化「食品サンプル」から生まれた
新しいクラフト「フェイク・スイーツ」にもぞっこんです。


 2009年6月ごろ、マイイケバナの素材を探しに手芸用品売り場をうろうろしていた時に出合ったのが、氣仙えりか先生の考案された「フェイク・スイーツ」でした。日本の伝統文化である食品サンプルと現代女性の感性が組み合わされた日本発の最新クラフトです。樹脂粘土やシリコンなどいろいろな素材を組み合わせて作るのですが、売り場にコーナーができており、面白そうだったので早速体験講座を受講し、10月には正式に受講しました。
 材料にこだわらないところが今までのクラフトの概念を壊していますが、唯一食品サンプルとの違いとして、「基本的に実物から型を取らない」というルールがあります。お風呂のタイル目地のコーキング材が生クリームになったり、建築資材の断熱材であるウレタンがドーナツになってしまうといった具合に、実物とはかけ離れたものから作るという意味で面白さも倍増します。
 そもそも食べ歩きするほどスイーツ好きですが、最近は体型を気にして我慢していました。これなら作って眺めているだけでも「幸せ」な気分になれるところが魅力でしょうか。講座終了後には「クレイパティシエール(粘土でお菓子を作る女性という意味の造語で商標登録出願中)」という肩書きもいただけます。古い駄菓子用の木型をネットオークションで手に入れたので、眺めてうれしくなるような和菓子や干菓子なども作ってみたいなあと思っています。

フェイクスイーツ作品(後列右から2番目がご本人の作品)(2011年8月)
 

いけばなにも通じる茶の湯の美意識。
好奇心がどんどん次のステージを広げてくれます。


 いけばな以外には、お茶のお稽古もしています。就職した時、訪問先のお宅でお茶を出されても失礼なくいただけるようにと習いにいったのですが、始めると面白くなりました。茶の湯の中に日本人の民俗や信仰が生きていることが好きです。
 いけばなも信仰から始まったと認識しており、どちらも日本的な美意識を反映し、伝統と継承から「型」としてさまざまな形を伝えているところが魅力だと思います。

お茶のお稽古 東京日本橋「空門」にて(2011年8月)
 夫の退職後には出身地の青森・弘前に戻って暮らす計画を立て、自給自足できればと考えていた時、体験ファームにも挑戦しました。農家が先生となって経営・指導するいわば「教室方式の体験農園」で、春・夏野菜と秋・冬野菜の二期作で、毎週土曜日に畑に通います。収穫した野菜を知人に配って喜ばれたり、お返しに調理方法を教えていただいたり…。伊東先生にもマイイケバナの時にお届けしました。昨年のマイイケバナでは収穫したピーマンやシシトウガラシを作品に使い、搬出時には友人に差し上げて食べていただきました。そんな体験ファームも3年目。毎回自然の力に驚かされます。昨年は雨が多くて不作だったトマトが今年は豊作になる一方、シシトウガラシは猛暑で食べられないほどの辛さでした。暑さがストレスになり、辛くなるのだそうです。

「教室方式の体験農園」春・夏野菜 種まき指導風景(2010年)

トマト(上)、シシトウガラシ(下)

 私にとってモノ作りとは毎日の生活への刺激であり、エネルギーの源です。お茶のお稽古をすることで道具を包む「お仕覆教室」に、欠けた道具を繕うための「金継ぎ教室」へと広がり、フェイク・スイーツをお稽古するために「ケーキ作り教室」にと広がってしまいましたが、そこで出会った方達からも素晴らしいエネルギーをいただいています。いけばなでは、毎月の研究会で会場係としてお手伝いしていますが、一級Aクラスでいけられる先生方のパワーと出来上がった作品には毎回刺激をいただき、私も先生方の年齢になるまでいけばなを続けられますようにと、いつも念じているのです。

【福士 春水 さんに一問一答】

好きな花/野菜の花
好きな小説家/L.M.モンゴメリ
お気に入り作品/『赤毛のアン』
マイブーム/飼い猫(ポポ)の毛でストラップ作り。知り合いに配っています。知り合いの飼い犬の毛でも作っています。

福士 春水さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、光永 祐香里さんです。「研修課程U期やマイ・イケバナ出品でお会いするうちに親しくなりました。控えめながら、バレエ教室を主宰するなど体力もある芯のしっかりしたお嬢さん」とのことです。どうぞご期待ください。

 


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