みんなのいけばな



File No.25

保田 カズミさん 保田 カズミさん 和歌山県/和歌山支部


花好きが集うアトリエ『Casa de Flor』(カサ デ フロール)は、習う立場の気持ちを忘れない“めだかの学校”がモットーです。

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

 今回は、前回の倉八 環さんから「発想や着眼点が斬新。豊かな想像力とエネルギッシュな行動力で多方面に活躍されています」とご紹介いただいた保田 カズミさんです。子どものころから花好きだった保田さんがいけばなと出合い、家庭との両立に悩みながらも教授者、造形作家として邁進するドラマチックないけばな人生について、たっぷりお話しいただきました。

倉八さんはまるで「様式集成」のような方。
笑いのセンスでも意気投合しました。

 倉八さんとは1995年8月の研修課程T期の会場で初めてお会いしました。第一印象は「色白の上品な方」。どちらからともなく声をかけ、久留米支部のお仲間と3人で夕食をご一緒しました。最初はお互い方言が言葉の壁になり、ところどころ違和感もありましたが、研修課程を終えるころには、お互い和歌山弁と久留米弁をマスターしていたのがおかしかったです。また、研修でくたくたになった夜にホテルの部屋で想像力を駆使したギャグに大爆笑したのもいい思い出。お笑いのセンスでも意気投合しました。
 そんな彼女をたとえるなら“様式集成のような方”。研修中、様式の授業がない日でもかばんの中には重い『様式集成』が丸ごと1冊入っていました。プライベートでも『様式集成』さながらに細かな決め事を作っていました。一方私はと言えば、授業に使いそうなところだけ、縮小コピーを取って持っていくのが関の山。何かにつけていい加減な私には倉八さんの一挙一動が規則正しい「様式」のように映ったのです。この違いが今に至っているのだとつくづく感じています。
 2010年7月、私は倉八さんと10年ぶりの再会を果たしました。彼女は講師になられ、和歌山支部に来訪されたのです。十数年前の研修で「倉八さんが講師になられたら環先生とお呼びするわね」と話していたことが現実となり、夢が叶ったように嬉しかったです。


生来の花好きからいけばなにも夢中に。
偶然出合った小原流は私には必然でした。

 子どものころからお花が大好きで、道ばたの花を摘んだり、お花屋さんの前で長い時間佇んだりしていました。年に一度レンゲ畑に連れていってもらい、1日中遊んでいたことも思い出します。
 高校2年生の時、母が花嫁修業として探してくれたお茶とお花の教室に通い始め、入門してから小原流であることを知りました。お稽古では初めて見るきれいなお花が季節ごとに用意されていて、図鑑を片手に花の名前を楽しく覚えていきました。先生は穏やかなお人柄で、温かく伸び伸びと私を育ててくださいました。 その後、自分のお月謝は自分で稼ごうと、実家でいけばな教室を始めたのが23歳の時です。当時の勤め先の先輩や同僚のほか、口コミで生徒さんが集まり、順調に教室を続けています。
 いけばなを習い始めてから、お花が私の大切なコミュニケーションツールであることに気づきました。「いけばな」を媒体として、流内はもちろん、さまざまなジャンルの方々と出会い、たくさんの経験をさせていただきました。

社中展や個展の開催をきっかけにお話をいただき手掛けた、店舗の室内ディスプレー(3点とも)
 研修課程に参加し、自己のスキルアップにかけることに迷いはありませんでしたが、当時小学生だった息子を置いて何日も家を空けることには不安があり、母親として悩んだこともありました。でも、その時に息子が「ここまでやってきたんやから辞めたらあかんやろ」と言ってくれたんです。いけばなのために家族が与えてくれた時間に私は本当に感謝しています。

趣味のアンティーク(オールドノリタケや花瓶など)の絵柄のついた花器に花をいけることをテーマとした個展『花がさね』にて(2005年 京都・南禅寺 ギャラリーかしく)


自宅の隣にアトリエが完成し、
今ではガーデニングにもはまっています。


 自宅の教室が年々手狭になっていたところ、5年前に自宅に隣接する土地が売りに出され、夢のアトリエを手に入れることができました。アトリエはスペイン語で「お花の家」を意味する“Casa de Flor”(カサ デ フロール)と名づけました。
 教室では生徒さんの声を大切にするよう心がけています。一代でお店を成長させた社長さんの談話で「お客様の声に応えていくうちに会社が繁盛し大きくなった」という言葉がありましたが、私も習う立場の気持ちを忘れず持ち続け、花好きが集まる「お花の家」は「めだかの学校」でありたいと思っています。また、ストレスフリーをスローガンに、教室で音楽を流したり、アロマオイルを焚いたり、心を解放できる空間の提供にも工夫しています。
 アトリエの施工とともに設けたガーデンスペースでは『小原流の庭』をめざしています。ガーデニングに目覚めたきっかけは、ある日園芸店で見つけたヒペリカムとの出合いからでした。自分が知っていた赤やピンクの実物ではなく真っ黄色でおしべがふわふわした花を見て、そこそこお花に詳しいと思っていた自分の浅学さに愕然としたのです。
 それからお稽古に使う花材の苗を庭に植えるようになりました。2008年にはガーデニングコーディネーターの資格も取得し、今では小さい花を含めて約200種類を植えていますが、発見と感激が尽きることはありません。先生方から分けていただいた花苗も多く、この庭は皆さんに支えられていると感謝しています。
 2007年より「伝統文化いけばなこども教室」を4年間行ってきました。子どもたちの観察力は想像以上に優れていて、工作に一輪挿しを作ったり公園でお花をいけたりと、その能力を引き出せるようさまざまな体験を盛り込みました。限られた時間の中ではなかなかコミュニケーションがとれないので、質問シートを作り交換日記形式でひとり、ひとりと交流を図りました。文化庁の事業終了後も父兄や関係者の依頼により、小学校や公共施設などで「こどもいけばな教室」を継続しています。

アトリエ“Casa de Flor”(カサ デ フロール) 『小原流の庭』をめざしているガーデン
ヒペリカムの黄色い花
こども教室の生徒たちと

お花の俳句を考えて「花カルタ」を作って遊んでいます

公園にでかけてお花をいけてみることも

「自由」と「自然」をキーワードに
造形=いけばなを追い求めていきます。


 小原流のカリキュラムには「自由」と「自然」が盛り込まれています。三十数年飽きることなく小原流を続けることができたキーワードがここにあります。そして「自由創作」を学ぶうちに「造形いけばな」と出合いました。 1つの花材を多角的に見つめることでいつもと違った表情や形態を見つけることができ、新しい発見に心が動いて、作品として構築する……そんな作業を繰り返していくうちに花材以外の素材にも眼を向けられるようになったのです。むしろ私の中では造形=いけばな。広い世界から自由に材料(花材)を求め、取り合わせを考えますが、普段いけばなのお稽古で習っている延長として造形があると思っています。 自然が作り出す「造形」はとてつもなく雄大で、浸食や風化を繰り返して違和感のない形が表われます。そんな自然の造形を目にした驚き、感動、恐怖、嫉妬などさまざまな感情が心を動かすんでしょうね。自分の造形作品がそんな力を宿し、人の心を動かせたら、そんな思いで制作に取り組んでいます。 マイイケには、今年で13回目の参加、7月23〜31日の新進作家展(大阪・心斎橋大丸)にも出品予定です。和歌山城で開催される「野外いけばな展」への参加も検討しています。

 いけばなを通じて出会ったこと、体験したことはたくさんありました。これからも、いけばなは私のライフワークに欠かせないアイテムです。『花を見て 花となり やがて 華となる』そんな人生を歩んでいきたいと思っています。

『呪縛』(2000年 いけばな新進作家展出品作品)

『下心』(2004年 野外現代いけばな展出品作品)

『胎』(2010年 いけばな新進作家展出品作品)

『再生』(2001年「挿花」のフォトコンテストにて優秀賞を受賞)

【保田 カズミ さんに一問一答】

好きな花/マーガレット
好きな作家/シェークスピア
お気に入り作品/マクベス
好きな音楽/ジャズ
好きなアーティスト/嵐、ビル・エバンス、チェット・ベイカー
好きな俳優/ジョニー・デップ、瑛太、向井理、佐々木蔵之助
好きな女優/吉高由里子
最近観た映画/パイレーツ・オブ・カリビアン、星守る犬、GANTZ
面白かった映画/ソーシャルネットワーク、彼には言えない私の計画
好きな画家/ルノワール
尊敬する画家/レンブラント、ムリーリョ(現在ムリーリョを模写中)

▲趣味の油彩(左:ムリーリョ模写途中、右:さくら)
趣味/ガーデニング、油彩、釣り、メロンパン作り(外カリッと中フワッとをめざして修行中)

保田 カズミさんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、伊東豊遊さんです。「研修課程の先輩です。新人の私にとても親切にたくさんのことを教えてくださった方で知識豊富、ユーモアがあり、お話もお上手。周囲がぱっと明るくなる方」とのことです。どうぞご期待ください。

 


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