みんなのいけばな



File No.24

倉八 環さん 倉八 環さん  福岡県/久留米支部


いけばなは心の支え。生きる力を与えてくれる「心の栄養」として、いけばなを多くの方に伝えていきたいです。

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

 今回は、前回の松浦友香さんから「何事にもひたむきに努力を積み重ね、とても信頼できる誠実な日本女性。物事を深く掘り下げて考える思慮深い方」とご紹介いただいた倉八 環さん。絵が好きだった高校時代を経て、ひょんなことからスタートしたいけばなが今や心の支えとおっしゃる倉八さんのいけばな人生をうかがいました。

研修ではタフな松浦さんにびっくり。
いつも元気と勇気をくださる方です。

 松浦さんと初めてお会いしたのは、大阪・小原流研修会館で行われた研修課程T期の時でした。帰りをご一緒したのがきっかけで、初めてお話ししたのですが、お腹に2人目のお子さんがいると伺ってとてもびっくりしたのを覚えています。というのも、研修はとてもハードで、私は身も心も疲れ果てていたのに、松浦さんは平然と涼しい顔をなさっていたから。華奢で優しい雰囲気からは想像つかないほどタフな人だと思いました。その第一印象の通り、冷静で芯の強い方だと今も思っています。
 その後も研修課程U期、V期、講師試験とずっとご一緒させていただき、悩んだり迷ったりの私をそばで励まし続けてくださいました。
 現在は研究院研修会で年4回ほどお会いする機会があります。そのたびに心おきなく会話ができ、いけばなについてわからないことや困ったことがあれば真っ先にメールや電話で連絡をとります。どんなことでも親身になって相談にのっていただける、私に元気と勇気を与えてくれる良き友人として本当に感謝しています。あの時、お腹の中で一緒に研修を受けていたお子さんにぜひ一度お会いしたいですね。

久留米連合文化会華道展出品作品(2009年5月)


軽い動機から始まったいけばなのお稽古。
たくさんの出会いがあり、今の自分があります。

 身近にいけばなをやっている人はいませんでしたので、女性の教養として“花嫁修行で習う”という発想はまったくなく、始めたのは偶然のことからでした。30歳の頃、海外に行く話があり、いけばなと着物の着付けを習うことになったのです。それこそ、必要に迫られた付け焼刃でした。
 結局、海外行きの話は実現せず、着付けはやめてしまったのですが、いけばなの方はやり始めたら楽しくすっかり夢中になってしまいました。30歳のスタートは今から考えると遅いスタートのように感じますが、その分のめり込んでしまったようです。できなかった事がだんだんとできるようになるお稽古の達成感がクセになってしまった感じでしょうか。親先生の勧めで参加した支部研究会では学生時代以来の「試験」に挑戦する緊張感も新鮮でした。
 三級家元教授に上がった年、夏休みを“勉強”で有意義に過ごせるという本当に軽い動機から研修課程を受けました。ところが、行ってみると朝から晩までカンヅメの合宿状態。しかも周りはお上手な方ばかりで、私は全然ついていけません。「とんでもないところに来てしまった!」と思いましたが、研究院の先生方の熱意あるご指導に感銘を受け、ここでいけばなに対する認識が大きく変わりました。各地から参加されている熱心な方々とも親しくなり、そのエネルギーにも刺激を受けました。その時、席が近かった皆さんとは今も親しいお付き合いが続いています。
 軽い動機でスタートした研修課程でしたが、師に恵まれ、友人にも巡り会えて、大切なものをたくさん得ることができました。この出会いや経験は人生の宝物としてこれからもずっと私を支えてくれると思います。

「みんなの花展」会場ディスプレイ用の菜の花を調達に(2007年2月)

研修士時代、熊本南支部周年行事のお手伝いに(2007年10月)


教室は人と人とをつなぐ交流の場。
私自身も生徒さんから学んでいます。


いけばな教室の風景
 現在は、主婦の方を中心に、久留米市内のコミュニティーセンターと自宅教室でいけばなを教えています。お子さん連れのお母さんやご年配の方などもいらっしゃいます。日頃身軽に動けずご家庭にこもりがちな方たちにひととき楽しい時間を持っていただき、元気に日常生活を送るお手伝いができればと願っています。
 お稽古を通じて、情報交換や相談したりされたりする新しい交友関係が生まれます。教室はただお稽古をするだけでなく、人と人のつながりの場ともなっているのです。若い方は年長者の話に学ぶことも多いようですし、何より私自身が年配の生徒さんからいろいろなことを教えていただき、人生の勉強をさせていただいています。
 また、コミュニティーセンター教室では毎年地元の文化祭に参加し、生徒さんたちの発表の場としてミニ社中展を開催します。お母さんと小さいお子さん、おばあちゃんとお孫さんという合作に楽しくチャレンジしていただくなど、ご家族連れで見に来ていただけるような工夫をしています。
 「お正月のいけばな教室」では、行事の花を手軽に楽しんでいただくため、花器や剣山がない方でもそのまま持ち帰って飾れるよう青竹にオアシスを入れた若松の「たてるかたち」をいけていただいたり、床の間や玄関、和風・洋風など、ご希望に合わせた取り合わせを考えます。生活の節目節目に花を飾ってお祝いしてきた日本人の豊かな心、美しい生活文化を伝えられたら嬉しいですね。

2009年度ミニ社中展にて。おばあちゃんの「たてるかたち」とお孫さんの「ミニバ ラのバスケット」 年末恒例イベント「お正月のいけばなをいけよう」参加者作品(2010年12月)

文化や芸術は心の栄養。
人に生きる力を与えてくれます。


 久留米は昔から美術・文学・芸能方面の文化が盛んで、多くの文化人を輩出した土地柄。我が家も父は油絵や写真、能面、母は日本舞踊と趣味が多く、文化芸能に熱心な家庭に育ったので、そうしたものは子どもの頃から身近な存在でした。 父の影響から私も絵を描くことが好きで、中学の頃に油絵を始め、高校時代には美術方面への進学も考えて地元の画家さんのアトリエに通ったこともありました。結局、進路が変わり、絵は趣味として続けていましたが、いけばなの勉強に本腰を入れてからは休止しています。最近は気軽に描ける水彩やパステルでお稽古の花を描いて楽しんでいます。
 高校時代にご指導いただいた美術の先生とは現在、洋画と華道とジャンルは違いますが、地元文化団体での活動をご一緒しています。2009年には久留米連合文化会創立60周年記念講演会で、ステージでのデモンストレーションをさせていただきました。

久留米連合文化会創立60周年記念公演でのデモンストレーション(2009年5月)
 絵もいけばなも、人が生きていく上で生活必需品というわけではありません。けれども私自身、家族が病気だったり、身近な人が亡くなるなど、辛いことがあった時、いつも心を支えてくれたのはいけばなでした。絵も花も食べることはできませんが、人の心を豊かにし、生きる力を与えてくれる「心の栄養」になってくれているような気がします。
 私の親の世代は時代的に決して豊かな生活を送っていたわけではありません。それでも生活の中に上手に文化や芸術を取り入れて心豊かな生活を送っていたように思うのです。現代の社会は物質的には豊かになる一方で、こうした精神的な豊かさが失われているのではないでしょうか。
 いけばなを教え始めてから15年になりますが、伝統芸術を守り伝えていこうとする精神の素晴らしさと、これまで指導してくださった先生方の偉大さを改めて感じています。一人でも多くの方に小原流いけばなの技と精神を伝えていきたい。そのためには、いけばなの勉強は当然ですが、教える技術や幅広い知識、教養も身につけ、さらに精進したいと思います。

西日本華道連盟いけばな展 2名での合作(2010年5月)

【倉八 環 さんに一問一答】

好きな花/桜、蓮、水仙
オススメの本/生物学者・福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』『できそこないの男たち』。分子生物学の本ですが、ドキドキワクワクのおもしろさ!
畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズ
マイブームは/季節を感じるきれいでおいしい和菓子

倉八 環さんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、保田一美さんです。「研修課程T期の同期生で、研修中ずっと一緒に行動していました。それ以来ずーっと友達です。造形作品個展など、発想や着眼点が斬新で、豊かな想像力とエネルギッシュな行動力で多方面に活躍されている方」とのことです。どうぞご期待ください。

 


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