みんなのいけばな



File No.20

木村 禮子 さん 木村 禮子 さん  兵庫県/兵庫県いけばな協会名誉相談役


神戸から世界にいけばなを伝えたいと国際文化交流を続けています。

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

 今回は、前回のイングリッド・リューダースさんから「とても誠実で途方もなく信じられないほどのエネルギーを持った方」とご紹介いただいた木村禮子さん。 三世家元豊雲先生の直門としていけばなを学んで以来、精力的に活動されてきました。小原流の地元、神戸というインターナショナルな土地柄もあり、海外にいけばなを伝える派遣講師としての活動も長く続けてこられ、平成16年には兵庫県文化賞も受賞。「いけばなは自分自身を投影するもの」と語る木村さんのいけばなに寄せる思いとこれからの夢を語っていただきました。

旧知のような親しみを持てたリューダースさん 阪神淡路大震災の朝には一番にお電話も

  リューダースさんとの出会いは約25年前の秋。京都で開催された国際神経学会で小原流から派遣され、私がいけばなデモンストレーションとワークショップを担当したときでした。彼女はご主人のリューダース博士と出席なさっていて、「小原流いけばなを九州で習っていた」と日本語で上手にお話しされたのが印象的でした。それでその場は一気に盛り上がり、大盛会となったのです。以来、友人としてお付き合いさせていただいています。

イングリッド・リューダースさんと
  神戸ビエンナーレ2007工藤和彦先生出品作品の前で(神戸メリケンパーク)
  出会った時からすぐに旧知のような温かさを感じましたが、熱い心と優しさ、率直さ、行動力、そして素晴らしい感性は今もずっと変わりません。お会いするごとに敬愛の心が一層深まります。2年ぐらいお会いできない時もありますが、日本に来られるとほとんど毎回神戸に立ち寄られ、旧交を温めています。昭和53年に海外派遣講師として初めてアメリカを訪れましたが、オハイオ州のノーザンオハイオ支部へも伺い、素敵なリューダース邸に泊めていただきました。地元の名士やお医者様のご夫妻方をお招きした大きなパーティーも開いていただいたのですが、広い書斎や庭園にはもちろんイングリッドさんのいけばなも飾られ、それはそれは華やかで、まるで映画のワンシーンのようでした。 平成7年1月17日に阪神淡路大震災が起こった朝一番に、我が家の安否を心配してクリーブランドのイングリッドさんから電話がかかってきた時の感激は、いまだに胸に残っています。


女性のたしなみとして出合った「いけばな」
神戸を襲った大震災でもくじけなかった小原流魂

 いけばなは18歳で始めました。私の年代では、女性のたしなみとして“茶道・華道を習う”ことは当たり前だったのです。神戸生まれ神戸育ちですから、母に連れられて自宅近くの「亀島豊鶴先生」をお訪ねし、入門させていただくことになりました。豊鶴先生は私の一生を見守っていただけるくらい素晴らしい師です。三世家元豊雲先生の直門で、神戸支部長や茶道淡交会役員もなさっておられ、実の娘のように指導していただきました。その後、三世家元から直接ご指導をいただくことになり、研究院、本部講師への道へとつながったのです。
 16年前、神戸ポートピアホテルからロビーを飾るお正月花の制作を要請されました。12月30日に飾り付けし、明けて1月17日の午後2時に撤花の予定でしたが、まさに撤花の日の早朝、5時46分に阪神淡路大震災が発生しました。神戸は甚大な被害を受け、市内道路とポートアイランドを結ぶ大橋も中央部分が陥没していました。撤花の約束を守ろうと、私は社中の者と二人で六甲山近くから海際のホテルまで徒歩で向かいました。もちろんホテルの大作も横倒しになっていましたが、何とか片づけ、大型扇面や柳などを背中に担いでまた歩いて帰ったことは今も記憶しています。そのことは後に“小原流魂”として高く評価いただき、引き続き、正月大作の制作を担当することとなりました。すでに16回目となり、2年前からは横東宏和先生にご指導いただいています。

阪神淡路大震災で倒れてしまった作品(神戸ポートピアホテルのロビー)
神戸ポートピアホテルにて、超大作を制作中

いけばなの文化使節として海外各地へ
神戸や大阪では若い生徒さんと向き合っています

 神戸は旧居留地や北野の異人館街などがあり、昔から外国とご縁が深いハイカラな街です。そんな土地柄に育ったせいで、自然と国際感覚も身についていたのでしょうか。昭和53年3月には小原流芸術研究院研修員に任命されて、当時の西ドイツやルクセンブルグなど3カ国においていけばな講習会およびデモンストレーションを行う機会をいただきました。それ以来、外務省国際交流基金からの要請により文化使節として、また小原流芸術研究院本部指導員として西ドイツ、オランダ、ギリシャ、イタリア、スイス、南アフリカ、フランス、イギリス、タイ、ベトナム、ブルネイなど今まで数え切れないほどの国々で講習会やセミナーの講師を務めさせていただきました。阪神淡路大震災の復興事業として神戸商工会議所の要請によりシンガポールでデモンストレーションやテレビセミナー、いけばなインターナショナル花展や、バンコクでは王宮からプリンセスご臨席のデモンストレーションおよび花展を催したこともあります。そのような活動に対し、平成16年11月には兵庫県の文化に貢献した方に与えられるという「兵庫県文化賞」もいただきました。

いけばなインターナショナル神戸支部デモンストレーションにて(2010年5月 神戸外国人クラブ)
 国によって花の種類も花に対する感覚も違います。ヨーロッパ系の方はいけばなに精神性を求める方が多いですし、アメリカや日本の若い人はまず「きれい、可愛い」という感覚から入っていかれます。それぞれの状況を理解し、対応しなければいけませんが、教える側も大変勉強になります。
インド ハイデラバッド支部特別講習にて(会場はウエシマビル6階)

一期一会だからこそいとおしい
花と出合い、自然に触発されて作品に向かいます

 今はさまざまな役職をいただきながら、三宮カルチャーセンターと大阪の大阪産経学園でも生徒さんのお稽古をしています。人口の減少とともに、いけばなを取り巻く環境も厳しい時代を迎えていますが、これまでの活動や経験の中で少しでもお役に立つことがあればと、後進の皆さんを指導させていただいています。 きれいなだけのいけばなではすぐ飽きられますし、新しい生徒さんも集まりにくい時代になっています。「シンプルビューティー」の中にももう少し精神性を加味し、小原流ならではの魅力に気づいていただけるよう、一層の努力を重ねたいと思っています。

三宮カルチャーセンターの教室で生徒さんたちと
 私自身の創作活動としては、兵庫県いけばな協会展、地域展、兵庫県迎賓館、県内都市などで、多い年では1年に19作品、少ない年でも6〜7作品は出品しています。私の社中展は4〜5年ごとに神戸さんちかホールを借り切って行い、毎回100名前後は出品していただいています。平成18年11月には5回目となる「秋彩」展を行いました。
 作品をいける時は花からの発想や花器からの触発が多いのですが、直接それらに向き合っている時より、空や流れる雲、山並みなどの自然に何気なく見惚れている時にアイデアが浮かんでくるから不思議です。生の花材を使った作品は三日ほどの命で、まさに一期一会。だからこそ一層いとおしさが増すのです。そして、私にとって「いけばな」は私自身。花をいけて眺めるものではなく、その枝を手に取った時、その花に出合った時に感じた自分自身の表れ、投影のように思われます。 兵庫県いけばな協会は三世家元豊雲先生がつくられ日本中に広まったそうです。私ども小原流は他流のお家元方や会員の皆様からもそのように言っていただくことがあり、うれしく思っています。最近では五世宏貴家元がビエンナーレや大丸展などにもご出品くださり、大変喜んでいます。私も心からありがたく感謝し、これからもここ神戸でいけばなの文化振興に努めてまいります。

兵庫県いけばな協会展2010に出品した作品

兵庫県知事と宏貴家元とともに 第2回神戸ビエンナーレ宏貴家元作コンテナ前で


【木村 禮子さんに一問一答】

好きな花/山桜、ムシカリなど花木は全部好きです。花ものでは百合(貝母百合、グロリオーサからカサブランカまで。変化が多く、どんな作品にも対応できて丈夫だから)。枯ひまわりも大好きです。
好きな音楽/三大テノール(ドミンゴ、カレーラス、パバロッティ)
好きな作家/高樹のぶ子、池上彰 ほか
おすすめの本/『超訳ニーチェの言葉』白取春彦 編訳
マイブーム/日程さえあけば「ぶらり一人旅」(海外国内ともに)

兵庫県いけばな協会展2009出品作品

木村禮子さんからご紹介いただいた次回 の「いけばなじん」は、松井博士さんです。「小原流淡路支部幹部として、兵庫県いけばな協会事業部研修委員としても活躍され、物静かで優しいお人柄ながら責任感が強く、習得力が素晴らしい天才肌。子どもの頃からたしなむ書道、古典楽器の笙の腕前も本格的で、若き次世代のホープとして期待されている」とのことです。ご期待ください。



←File No.19 いけばなじんトップへ File No.21→


いけばなじん
いけばな教室訪問記
いけばなこども教室
いけばな特派員
いけばな小原流公式サイト




HOME

プライバシーと著作権について