みんなのいけばな



File No.18

ウェルズ 朋世さん ウェルズ 朋世さん 大阪府/通訳


不思議な力が宿る「いけばな」と、人の思いを伝える通訳の仕事を融合して国際交流。
たくさんの先生方に支えられご指導いただいて、私のいけばな人生があります。

人と人のつながりで紹介していくリレー形式の「いけばなじん」。

 今回は、前回の篠田幸子さんから「飛び抜けた集中力とパワフルさで周りを引っ張り、通訳でも活躍されるなど人のために努力を惜しまない方」と、ご紹介いただいたウェルズ朋世さん。 外国人との交流の中で“日本の伝統文化”としてのいけばなに目覚めました。いけばなと英語をコラボレートさせたりと、外国人と日本人とのかけはしとして尽力されているウェルズさんに、篠田さんとの出会いや、いけばなを通じた国際交流への情熱などについて語っていただきました。

たゆまぬ努力に刺激を受けた篠田さん
講師試験合格に心からの「おめでとう」


2010年11月京都外国語大学校友会大阪支部主催「外国人と校友会親子の交流会」でのいけばな体験の様子
 篠田さんとは1998年7月、大阪の研修会館で開催された研修課程T期に参加したときに出会いました。たまたま席が隣りだったのですが、参考花を次々獲得されることにただただ感心。圧倒的な技術力と花に対する真剣なまなざしに刺激を受けました。初参加の私は緊張していたのですが、篠田さんとは同い年の幼児を持つ共通点があることがわかり、いけばなから子育てのことまで話題は尽きませんでした。研修課程T期、U期、V期の9年間を共にし、家元教場のお稽古でもご一緒させていただいています。先日、篠田さんの講師試験合格を知ったときは私も感慨ひとしおでした。今までの研鑚を知っていましたし、数日前に小原流デモンストレーションの通訳で東京に出張する直前「講師試験頑張れコール」をしたところでしたから。その朗報メールはちょうど教室に向かう電車の中で届き、まるで自分事のようにうれしくて早速おめでとうメールを送りました。
改めて、この場をお借りして「おめでとう!」を伝えることができ、私も本当にうれしいです。


日本人が日本文化を知らない恥ずかしさ
美しい先生に惹かれてお稽古に通いました
。

 子どもの頃からお花が好きで、庭の花を学校に持っていき、教室でよくいけたものです。両親がそれぞれ違った流派のいけばなを学んでおり、新年は両親が交代で迎え花をいけるのですが、普段は仲の良い二人が決まって互いの花が気に入らず険悪な雰囲気になるのです。私は「花嫁修業」という言葉が嫌いで正直習いたくありませんでした。
一方、20代の頃、ライシャワー婦人が主催するインターンシッププログラムに興味を持ったものの「外国で日本の何を紹介できますか?」との問いに答えられず、情けなく思っていました。その後、再び英語の勉強に通いだした頃も外国人講師に日本に関して尋ねられ、日本人でありながら答えられない自分をとても恥ずかしく感じました。
 結局、たまたま通った歯科医院にいけばなが飾られているのを見て、実家の待合室にもいけばながあれば患者さんも和まれるかしらと思ったのをきっかけに、またいとこ(再従姉妹)がいける小原流の花にひかれて教室に通い始めました。お稽古一日目、教室で緊張しつつ待っていると、宝塚歌劇のお姫様のようなきれいな方が入ってこられ「いつから通ってらっしゃるんですか?」と声をかけたのですが、実はその方が先生で初日から大失敗(笑)。でも、先生は本当に優しい方で、私もお稽古を続けることができました。

いけばなインターナショナル
大阪支部フェステイバル2006年の花展の出品作品


人の2倍練習して小原風から小原流へ
教場や野外展での経験が糧となりました

 いつだったか、私がいけた実家のお花を見た患者さんから「小原流ですか?」と尋ねられたのですが「小原風です」と答えてしまいました。うれしさ半分、早く胸を張って小原流と言えるようになりたいと思ったものです。
その後、家元教場にお世話になることになりました。当時は三世家元豊雲先生が指導にあたっておられ、大先輩、先生方がいらっしゃる教場でおそらく最年少の新参者。私の自由表現の作品を豊雲先生は首をかしげながら眺められ…穴があったら入りたいと、ただただ赤面したこともあります。
青年部への初参加は、兵庫・武庫川での野外展。直前に腕を怪我し包帯姿で制作したので無残な出来に泣きたい気分で、四世家元夏樹先生の講評を伺いましたが、「これが連続して並ぶといい作品になるのでまた頑張ってください」との励ましをいただき、ほっとしたことも覚えています。

2010年10月の大阪支部100周年記念花展での合作作品
 また、結婚式をアメリカで挙げ、日本で披露宴をした際、お客様が総領事はじめ外国人が多く、そこで「いけばなをお見せしたい」という私の要望を青年部委員の方々が快く引き受けてくださったこともありました。テーブルのお花をいけたり、高砂の席でいけばなデモンストレーションも披露。今や小原流研究院助教授や副支部長とすごい方ばかりです。よく厚かましく頼んだものだとあきれますが、とても和やかな忘れられない披露宴でした。
大阪支部100周年記念花展では、青年部花展以来久しぶりに前・中・後期3部作の合作に参加しました。個人作とはひと味違い、宏貴家元をはじめ諸先生方、支部長、役員、会員が大きな目標に一丸となって取り組む熱い想いに感動しました。
 以前、息子が幼い頃、彼を連れてお稽古に伺ったことがありました。隣でママが楽しく遊んでいる?お花が欲しくなり、まわりの皆さんにおこぼれを頂き満面の笑み。彼は今も自分のペースでいけばなを続けています。先日、留学生との国際交流の体験レッスンで私が後ろいけで見本花を制作中、同じように後ろいけを始められた参加者に気づき、剣山の向きを変えるように指摘してくれたのも息子でした。彼は今、オーケストラ部でほとんど毎日練習ですが、家族で音楽を楽しみ、2年ごとのコンサート出演が目下の目標です。
2009年12月の家族で出演したコンサート

流派を超えた「いけばなインターナショナル」、
いけばなは国や言葉も超える世界共通語


2010年1月、いけばなインターナショナル
大阪支部で小原流研究院教授・奥村秀水先生の デモンストレーションを通訳
 海外にもいけばな友達が大勢いますが、彼らのいけばなに対する情熱は、日本で当たり前のようにいけばなが学べる私とは比べ物にならないほどで、その熱意に私も打たれて何かできることがあればと活動を始めました。いけばなインターナショナルは『花を通じての友好を』をモットーに設立された国際親善団体で、流派を超えた世界のいけばな愛好家が活動しています。月例会には毎回いけばな各流派のお家元や著名な先生方、ときにはアレンジメントの先生方をお招きし、日英2カ国語でデモンストレーションや花展を行います。 
 事前に綿密な打ち合わせが必要で、他流にお邪魔して実際に作品の制作現場を拝見したり、お電話でご説明いただいたり、当日間際まで準備します。どの流派の先生方もお心配りが細やかで、わかりやすく教えてくださいますので、おかげさまで何とかつとめさせていただいています。東京や大阪では、大使館や領事館関係の方々もお越しいただきますし、留学生を招いてのワークショップでも英語による指導が必要です。
 いつも感じることですが、お花には不思議な力が宿っています。知らぬ同士が花を介すると打ち解けて友情が深まる…国や言葉が違ってもお花は世界共通語だと思います。
 人の想いを言葉に託して伝える通訳も思い出深く、小原流でも毎回、小原稚子最高顧問に助けていただき、魅力にあふれた先生方の舞台にご一緒できて本当に光栄に思います。中でも忘れられないのは、故泉谷豊宣・前小原流研究院院長のマスターズセミナーでのデモンストレーションにおける通訳。泉谷先生には教場のお稽古でもお世話になり、自分ではなかなかうまく出来たと思った作品でもお手直しをお願いすると決まって「そうじゃなくてね」「こういうふうに見られませんか?」とコメントをいただき、先生の意図が全くわかっていないことを痛感。出来の悪い生徒をよくぞ教えてくださったと思います。ところがデモンストレーション本番での先生は、ゆったり笑顔で通訳のタイミングを心得たお話をしてくださるんです。会場では「いつもご一緒だから『あうん』の呼吸ね」とほめていただきました。
2010年11月京都外国語大学校友会大阪支部主催「外国人と校友会親子の交流会」でみんなで記念撮影
 この「いけばな」と「通訳」の経験を生かし、日本人と外国人がともに英語でいけばなを楽しむ「英語でいけばな」の教室を開いています。日本の方にも英語といけばなを一緒に体験していただこうという発想で始めました。クラスでのレッスン以外にも国際交流行事への参加や英語で日本文化を体験するイベントの企画もしています。外国の方にいけばなを教えていると、日本人なら伝わるようなことも、「なぜその発想が出てくるのか」と思うことがよくあります。育った環境や文化、時代背景、その根源となる思想などの違いをわかりやすく説明し、意見交換をすることで、相互理解が深められると喜んでいただけます。一方的に意見を押し付けるのではなく、違いを認め合い、理解することが大事だと思います。
 最近、国際課に教授者のいない国から小原流を学びたいというメッセージが送られてくると伺いました。私もインターネットを使い、何かできることがないか模索し、今後は、いけばなのスタディグループすらない国の方にもいけばなを紹介していきたいと思っています。 元気で長生きして、ぜひ実現させたいです。
「英語でいけばな」教室のみなさんとアイリッシュフェスティバルのパレードに参加


【ウェルズ 朋世さんに一問一答】

好きな花/すみれ、にわぜきしょう
好きな小説家/H.G.Wells、山本周五郎、老子
おすすめの小説/“Time Machine”『柳橋物語』『老子』
マイブーム/裏庭でのティータイム。寒くなってきたら、お部屋でハーブティーやスパイスたっぷりのチャイを楽しむこと。

ウェルズさんからご紹介いただいた次回の「いけばなじん」は、ノーザンオハイオ支部のイングリッド・リューダースさんです。初代NAOTA(North American Ohara Teachers Association)会長で、小原流国際課からの派遣で海外へデモンストレーションに行かれる数少ない海外会員。 スペイン語、ドイツ語、英語そして日本語が堪能で日本人より日本人らしいと絶賛され、行動力・指導力なども素晴らしく、信望も厚い方です。ご期待ください。



←File No.17 いけばなじんトップへ File No.19→


いけばなじん
いけばな教室訪問記
いけばなこども教室
いけばな特派員
いけばな小原流公式サイト




HOME

プライバシーと著作権について